ジュリエット・ビノシュ以降のフランス現代女優を取り上げています。
今日は、ジャンヌ・バリバールです。


ジャンヌ・バリバール / Jeanne Balibar
1968年4月18日 フランス、パリ生まれ

  • 哲学者のエティエンヌ・バリバールと物理学者のフランソワーズ・バリバールの子としてパリで生まれる。
  • パリ第一大学で歴史学の修士号を取得。
  • フランス国立高等演劇学校で学ぶ。
  • 1993年にコメディー・フランセーズに入る。
  • アルノー・デプレシャン監督の『魂を救え』(1992年)で映画デビュー。
  • 『そして僕は恋をする』(1996)、『恋ごころ』(2001)、『サガン -悲しみよ こんにちは-』(2008)でセザール賞助演女優賞にノミネート。
  • 2017年に『バルバラ』でセザール賞最優秀主演女優賞を受賞。
  • 2003年までパートナーであった俳優マチュー・アマルリックとの間に男の子を2人もうけている。

『ランジェ公爵夫人』(2007)
監督 ジャック・リヴェット 
共演 ギョーム・ドパルデュー、ビュル・オジェ、ミシェル・ピッコリ
撮影 ウィリアム・ルプシャンスキー

【あらすじ】
19世紀初頭のパリ。社交界の華、ランジェ公爵夫人は、舞踏会でナポレオン軍の英雄モンリヴォー将軍と出会う。
いまや時の人となったモンリヴォー将軍に興味を抱いたランジェ公爵夫人は、彼を自宅に招き冒険譚を語らせる。
あっという間にランジェ公爵夫人の魅力に心奪われてしまったモンリヴォー将軍だったが、ランジェ公爵夫人の思わせぶりな振る舞いに翻弄され続けることに。
業を煮やしたモンリヴォー将軍は、彼女を誘拐するという強引な手段に打って出る。
思いがけずこれがランジェ公爵夫人の心に火をつける。
一転して立場は入れ替わり、モンリヴォー将軍を熱烈に求め始めるランジェ公爵夫人だったが…。


豪華キャスト・スタッフによる、正統派フランス映画です。

ジャック・リヴェットについては言うまでもありません。
撮影監督のウィリアム・ルプシャンスキーは、ゴダール、リヴェットとの協働で知られるフランス映画最高峰の撮影監督です。
更に、名優中の名優ミシェル・ピッコリ、リヴェット映画の常連ビュル・オジェ・・・

そして、原作がバルザック。

フランス映画の魂のようなメンツによる作品です。
いわゆる「おフランス」映画の、アンニュイで、お上品で、微温的な世界はここにはありません。


ジャンヌ・バリバールは、その深い演劇的な素養により、そうしたスタッフに引けを取っていません。

とりわけ、クライマックスには、息を呑みます。

午後5時にギヨーム・ドパルデューに届けた手紙の返事としてが、3時間後にギヨーム・ドパルデューが出向いてこないと、それは拒絶を意味するという運命の場面です。

8時前に、夜風の吹くギヨーム・ドパルデューの邸宅の前に、ジャンヌ・バリバールはミシェル・ピッコリとたどり着きます。
ミシェル・ピッコリが、ギヨーム・ドパルデューの在宅を確認したあと、ジャンヌ・バリバールはミシェル・ピッコリに、自分を一人にしてくれるように頼み、両頬に別れのキスをします。

ジャンヌ・バリバールの全身を捉えたショットに変わり、ミシェル・ピッコリの馬車が去るとき、鐘が8回鳴るのです。

友人たちに囲まれながらも、考え込んでいるギヨーム・ドパルデューは、時計が止まっていることに気づきません。

表に出てくる気配が無いの見て取ったジャンヌ・バリバールは、「神様…」と声を発し、小走りに夜闇へと消えていきます。

その大粒の涙を流すジャンヌ・バリバールの、存在の寄る辺無さ、絶望の表情。






彼女の絶望の涙の後に次のようなテロップが入ります。
「彼女が最後にアンフェール通りから見たパリは、赤い光を放ち、霧に煙っていた」

しかしながら、その光景をキャメラは映すことはなく、帰宅し、馬車に乗り込み去っていくショットで終わります。


ジュリエット・ビノシュが得意としていたような若さのほとばしりとは異なる、上流階級の夫人の狂気がここにあります。
傑作という程の作品ではありませんが、イザベル・ユペール以来の正統派フランス女優の圧倒的な存在感を見て取れます。



























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