本日6月14日は、ドロシー・マクガイアの生誕108周年となります。
(1916年6月14日 - 2001年9月13日)

それを記念して、彼女の作品を紹介します。

 

ドロシー主演のイタリアロケのアメリカ映画を紹介いたします。

 

『愛の泉』(1954) 20th Fox
監督 ジーン・ネグレスコ
主演 ドロシー・マクガイア、ジーン・ピータース、ロッサノ・ブラッツィ、マギー・マクナマラ、クリフトン・ウェッブ、ルイ・ジュールダン
撮影 ミルトン・クラスナー ※アカデミー賞撮影賞
        
ローマで働くことになった三人の米国娘が共同生活を始め、それぞれの職場で芽生えたロマンスの道のりを軽いタッチで綴る。



『ローマの休日』(1953)が最も有名ですが、ハリウッドのスタッフや俳優たちが、一斉にイタリアへ行き、撮影した映画があります:

  • ジョーン・フォンテイン主演『旅愁』(1950)
  • デボラ・カー主演『クォ・ヴァディス』(1951)
  • オードリー・ヘップバーン主演『ローマの休日』(1953)
  • ジェニファー・ジョーンズ主演『終着駅』(1953)
  • ジーナ・ロロブリジーダ主演『悪魔をやっつけろ』(1953)
  • ドロシー・マクガイア主演『愛の泉』(1954)
  • エヴァ・ガードナー主演『裸足の伯爵夫人』(1954)
  • キャサリン・ヘップバーン主演『旅情』(1955)
  • ジェニファー・ジョーンズ主演『武器よさらば』(1957)

その背景には、敗戦国であるイタリアの資産を、戦勝国のアメリカが接収する目的があったようです。
(なお、時代が下ると、メキシコやスペインロケが敢行されますが、それは人件費高騰のためです)



また、奇しくも時代が、カラーやワイドスクリーンの映画の普及過程にあったので、うってつけのスペクタクルとして、イタリアが選ばれたように思います。
 ※『ローマの休日』や『旅愁』はモノクロでスタンダードサイズの映画です。

それはイタリアだけでなく、『慕情』(1955)での香港や、『巨象の道』(1954)でのスリランカの映画、『雨の朝巴里に死す』(1954)でのパリを舞台にした映画もあります。


いずれも、全篇ロケで撮っているのではなく、室内シーンはスタジオで撮られています。


したがって、画面の質感が、必ずしも、外界の空気を感じさせるわけでなく、下手をするとNHKの紀行番組のような、豪華で綺麗なだけの映像になる場合が多いです。
(例外は、グレース・ケリー主演の『泥棒成金』(1955)の、南仏やモナコロケの、官能的で享楽的な美しさですが、それでも、全体の中では決して時間は長くはありません。)


さて、そうしたイタリアロケ映画ですが、オードリーやジェニファー・ジョーンズをはじめ、女優たちが輝いています。

この作品も、ドロシー・マクガイア、ジーン・ピータース、マギー・マクナマラと、同じアパートに住むことになった3人の女性を主演に据えています。

(3人の女優と言えば、同じジーン・ネグレスコの『百万長者と結婚する方法』(1953)での、マリリン・モンロー、ローレン・バコール、ベティ・グレイブルの競演を思い出させます。

この『愛の泉』にせよ、『百万長者と結婚する方法』にせよ、20世紀フォックスのシネマスコープを用いて、室内空間での女優達の会話劇が主要な部分を占めています。)










素晴らしい撮影として、ドロシー・マクガイアがバルコニーに出て、ローマの夜景を眺めるシーンがあります。
(ただ、このシーンでのローマの街は本当のローマでないように思います)

長年秘書を務めてきたクリフトン・ウェッブに求婚され、その幸せに胸がつまったのか、ドロシー・マクガイアは、青い夜闇にバルコニーに出てきます。
大理石の手すりに手を置き、何度かさすりながら、ローマの街へ視線を投げたり、夜空を眺めます。
そのシックなクリーム色のナイトガウンをまとったドロシー・マクガイアの背中や後頭部を、後ろから室内の光が照らす一方で、彼女の顔にも、外から光が当たり、抒情的な素晴らしいシーンとなっています。

その一方で、ジーン・ピータース、マギー・マクナマラらは、ドロシー・マクガイアの結婚を祝福しながらも、自らの恋が破れ、イタリアを離れないとならず、ベッドで眠れずにいます。
ジーン・ピーターズは、ひとたびベッドから身を起こし、ランプシェードをつけ煙草に火をつけようとするも、やめてしまい、再びランプシェードを消します。
そのときの照明の繊細な変化は見事です。















その女たちの対照的な様子を、何のセリフもなく、短く語るのを観るときこそ、映画を観ているという実感を持ちます。

決して、豪華スターではない3人ですし、無粋な作品ばかりの20世紀フォックスですが、たまにはいいシーンもあります。

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