来る3月9日はジュリエット・ビノシュの60歳の誕生日です。
(1964年3月9日生まれ)
それを記念して彼女の作品をご紹介します。

 

『カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇』(2013)
監督 ブリュノ・デュモン
撮影 ギヨーム・デフォンテーヌ
共演 ジャン=リュック・ヴァンサン

【あらすじ】
1864年、フランスに生まれたカミーユ。19歳の時、彫刻家ロダンに弟子入りし、23歳年上の彼と恋に落ちるが、15年間に及んだ2人の恋愛関係はやがて破局。父親の死後、カミーユは家族によってパリ郊外の精神科病院へ送られ、1915年、彼女は今や南仏のモントヴェルク精神科病院で周囲の人々から孤立しつつ、つらい毎日を送っていた。弟のポールが週末に訪ねてくると知らされ、カミーユはそれを心待ちにするのだが…。

 


怪作です。
カミーユ・クローデルとロダンとの恋愛と確執は、イザベル・アジャーニ主演の『カミーユ・クローデル』で映画化されていますが、この作品は、その後日譚です。

 


カミーユ・クローデルを演じるジュリエット・ビノシュは、精神病院を舞台に、精神病患者と看護師である修道女たちの間で、薄暗いねずみ色の服を着ています。

 

ビノシュは、会話する相手が限られ、院長にロダンの悪口を言い募る以外には、ほとんど口を利かず、寒々とした精神病院やその庭や周囲の外界のなかで、静かに歩きます。

冒頭では、ビノシュが修道女たちに入浴を手伝ってもらい、やせ細った乳房や下腹部を見せます。

 












しかし、精神病患者の悲惨さや、ジュリエット・ビノシュの痩せた裸体が見えるからと言って、煽情的な前衛映画ではありません。
(1970年以降の映画は、狂気を扱いつつ、それをセンセーショナルに演出してきました。
フェリーニ、パゾリーニあたりはまだ良質な方ですが、ホドロフスキー、マカヴェイエフあたりになると観るに堪えませんでした。)


精神病患者の女たち(なお、どうやら本当の患者たちらしいです。それはブレッソン作品を思わせます)については、その狂気について、禍々しく強調しているわけではなく、彼女たちを、陰鬱ながらも、静謐で美しささえ感じさせる、薄く赤みのかかった壁や教会の中に置き、繊細な光を当てることにより、「醜悪」で「非人間的」なイメージから無縁の存在として演出しています。

それは、同様に収監されているビノシュについても同様です。
時折、ヒステリックな言動をしたり、不意に笑ったりしつつも、それは、ロダンの悪行を追及し告発するものだったり、弟のポールの来訪を喜んだりするものであり、その意味で病人ではなく、私たちと地続きの存在です。






















その白眉と言えるのは、患者たちがドン・ファンの劇の練習をしているシーンです。
そこにふらりと見学しに、ビノシュが来て、舞台を眺めます。

何度もセリフを間違えるドン・ファン役の患者を、観て、ビノシュは笑みを浮かべます。
笑ってしまうのは、その誘惑の演技が下手で、まるでドン・ファンに見えず、それでは女を誘惑など出来ないわとでも思ったからでしょう。

ドン・ファンが「私と結婚してくれますか?」と言い、本来なら「いいえ!」と言うところを、女役の患者が「はい!」と言ってしまったりして、修道女が「違う!違う!もう一回!」と何度も何度も命じ、一種コメディのような雰囲気が醸し出されます。

しかしながら、その劇が進み、女役の患者が「私を騙すことがなければ、あなたのお気持ちを受け入れましょう」というセリフをいうくだりなると、ビノシュの表情は硬くなります。

手で顔を覆い、落涙し、顔が歪みます。
「もう観てられないわ」とでも思ったかのように、ビノシュはその練習場から退出します。










私たちが、古今東西問わず観てきたメロドラマがここにあります。
昔の苦い恋の記憶を思い出し、涙ながらにその場を立ち去るなどというのは、陳腐の極みです。
演歌で「女の涙」として歌われてきたものです。

しかし、精神病院のカミーユ・クローデルを演じるジュリエット・ビノシュには、私たちが「女の涙」を初めて観たかのような鈍い感動があります。
その素晴らしさには、強く胸をうたれます。


それは、精神病患者への同情などではありません。

先に述べたように、精神病患者たちは私たちと地続きの存在です。
それよりも、ジュリエット・ビノシュの体現する「女の涙」が、説得力を持った切実な表現だからです。

思えば、ビノシュは『汚れた血』以来、そうした生きることと等価のものとして、映画女優であったのです。

その意味で、そんなビノシュのフィルモグラフィの中で最も重要な作品と言えるでしょう。





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