本日1月11日は、ソン・イェジンの生誕42周年です。
それを記念して、彼女の作品を紹介します。


ソン・イェジン
손예진 / 孫藝珍 / Son Ye-Jin
1982年1月11日 韓国大邱生まれ

  • ソウル芸術大学に進学後、1年で休学しプロの俳優活動に専念する。
  • 1999年 CMデビュー
  • 『秘密の涙』(00)で映画に初出演。
  • 『おいしいプロポーズ』(01)で大ブレイク。
  • カンヌ国際映画祭の監督賞受賞作『酔画仙』(02)出演を経て、2003年には映画『ラブストーリー』『永遠の片想い』やTVドラマ『夏の香り』などで次々に主演を務める。
  • 恋愛映画『私の頭の中の消しゴム』(04)や『四月の雪』(05)のヒロイン役で日本でも注目を集め、韓流スターのひとりとして人気を集めた。
  • 韓国では「国民の初恋」と呼ばれて親しまれる。
  • 以降の映画出演作に『白夜行 白い闇の中を歩く』(09)、『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』(16)、『Be With You いま、会いにゆきます』『ザ・ネゴシエーション』(18)など。

 

『愛の不時着』(2019)
演出 イ・ジョンヒョ
脚本 パク・ジウン
共演 ヒョンビン
製作 スタジオドラゴン

【あらすじ】
パラグライダー中に思わぬ事故に巻き込まれ、北朝鮮に不時着してしまった韓国の財閥令嬢。
そこで出会った堅物の将校の家で、身分を隠して暮らすことになる ...

 

ソン・イェジンはその長いキャリアで数多くのテレビドラマと映画とに出演してきました。

映画では『私の頭の中の消しゴム』(2004)で悲劇のスターとして、いきなりスターダムにのし上がって以来、シリアスな役、とりわけ悲恋に泣く女の役を多く演じてきました。

この作品でも、「泣く女」ソン・イェジンの美しい涙を、私たちは何回も観ることが出来ます。

ヒョンビンが入院した病院では、看護師に「(ヒョンビンの)意識が戻らないと泣いて、意識が戻ったらまた泣いて・・・」と笑われるほどです。











さて、「泣く女」ソン・イェジンのもう一つの側面として、コメディエンヌぶりに着目したいと思います。

 

韓国でパラグライダーの試乗をしていた女が、突風により国境を越えて吹き飛ばされ、北朝鮮の木の上に不時着し、木の下のハンサムな軍人と出会うなどという馬鹿馬鹿しい出会いの物語は、コメディエンヌの資質をもったソン・イェジンがいるからこそ、嘘のような滑らかさでストーリーが運ばれていきます。
 

それは、ソン・イェジンのこれまでのテレビドラマ(『個人の趣向』(2010)、『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』(2018)など)や映画(『ナンパの定石』『恋は命がけ』)での、コミカルな役を通じて培われたものです。

 

(それは、『赤ちゃん教育』で恐竜の巨大な模型の上に上がったキャサリン・ヘップバーンや、『木によじ登る女』のミリアム・ホプキンスといった、往年のハリウッドの大女優たちを思い出させます。)




コメディエンヌぶりと言えば、家族を含め、周囲に敵ばかりだったソン・イェジンが、北朝鮮の閉鎖的な女たちや、頑迷な軍人を、微笑みながら、彼らを軽やかに丸め込むのも、爽快感さえあるほど、私たちを魅了してくれます。












この『愛の不時着』は、結ばれ得ぬ男女の関係が、悲劇的な展開を見せるのですが、とりわけ全16話の前半では、悲劇的な展開よりも、男女の接近というロマンティックな展開の方に重きが置かれています。


例えば、ソン・イェジンの髪を束ねるためのスカーフを通じ、ヒョンビンはソン・イェジンの髪に触れます。

そのスカーフという小道具の素晴らしさは、テレビドラマと思えないほどです。

 

その直後、ソン・イェジンは、衆目の前で髪を撫でてほしいと懇願し、ヒョンビンに撫でてもらうのですが、この髪の毛を介した、肌の触れあいは、クラシックなロマンティックコメディを観ているかのような上質な官能があります。





その後も、平壌のホテルのエレベーターの中で、熱はないかとヒョンビンはソン・イェジンの額に触れますし、病室で眠るソン・イェジンの髪をヒョンビンはそっと触れます。





そのように、性的で直接的な接触をひたすらに回避するのが、この作品です。

では、どのように2人は抱き合うのでしょうか。

いくつか抱擁シーンがありますが、中でも素晴らしいのは、パラグライダーでの帰国にチャレンジするソン・イェジンを追いかけたヒョンビンが、2人でパラグライダーに乗り、空中を流れていくシーンです。
嘘のようにロマンティックなこの瞬間は、見事な画面処理もあり、時間が止まったかのようです。

 

その後、2人が1台の自転車に乗るのも、性的な意味とは無縁の愛の運動として、ドラマを活気づけています。

 




このように、上質なロマンスが、脚本の妙もあり、華麗に展開されるのですが、この作品で最も重要な映像表現は、炎のように思います。
それは、愛情が燃え上がるという意味での炎ではなく、本当の炎です。

例えば、ソン・イェジンは、北朝鮮で初めての夜を迎え、韓国と比べて遥かに暗い、その夜の闇に不安になるのですが、そこへヒョンビンが届けるのは、ロウソクでした。






また、停電になった市場で迷子になったソン・イェジンをヒョンビンが探し出すときに高く掲げているのも、またロウソクでした。

 

更には、平壌のホテルのレストランが停電になったときにも、ウェイトレスがキャンドルを2人の間にそっと持ってきました。





その後も、ヒョンビンはソン・イェジンに、おこげやコーヒーや焼き芋などの素朴な手作り料理をふるまうことにより、ソン・イェジンの心が開かれていきます。
そこでは、いずれも炎が使われています。




 

とりわけ、庭で焚火を使って貝を焼くシーンの炎は、第5中隊の4人の仲間たちと共に、誰もが覚えているでしょう。




同様に、さよならピクニックのシーンでは、川辺で魚が焼かれ、蟹が蒸されます。

(そこには、ヒョンビンはいないのですが)






電灯の灯が少ない、薄闇に包まれた北朝鮮では、炎が、2人の心にも明かりを灯すようです。

まるで、ジュディ・ガーランドの『若草の頃』のようです。



第5話の平壌行の列車の停留シーンも、またそうした男女の接近の醍醐味に溢れています。

時ならぬ障害によって、焚火をしながら野宿することになった2人。
そこで、ヒョンビンは、ソン・イェジンに火を起こしてあげ、芋を焼き、毛布を肩にかけます。






第8話のクリスマスイブの2人の逃避行の末に見出された校舎でも、ヒョンビンは薪でストーブを焚くことになります。



いずれのシーンでも、ソン・イェジンとヒョンビンとが、お互いの肩を借りて眠ることになるのですが、Netflixと思えない豊饒な時間が流れます。

 

そんな炎という映像表現こそが、ソン・イェジンとヒョンビンの心の物語を、単なる美男美女のロマンスを超えた、見事なエンターテインメントに仕上げているのです。

(この稿続く)

(ところで、近年の映画はロケ撮影のために、十分な光量のない、いかにも早朝の薄い光で撮影されることが多く、かなり興醒めなのですが、この作品はうまくその問題をクリアしているように思います。主演俳優たちは、肌の白さが特徴的なので、光量の少なさは影響していません。衣裳はヴィヴィッドな原色を用いることで、画面を華やかにしています。)

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