1月11日の岡田茉莉子の生誕91周年を記念して、岡田茉莉子の作品を紹介します。



岡田茉莉子

  • 1933年1月11日東京都生まれ。父は男優の岡田時彦。
  • 1951年、東宝入社。芸名は谷崎潤一郎が付けた。成瀬巳喜男『舞姫』でデビュー。
  • 1950年代は、マキノ雅弘『やくざ囃子』、成瀬巳喜男『流れる』など巨匠たちの作品に精力的に出演してきた。
  • 1962年 「岡田茉莉子・映画出演100本記念作品」として自らプロデュースした主演映画『秋津温泉』がヒット。
  • 夫は映画監督の吉田喜重。

 

『秋日和』(1960)
監督  小津安二郎
撮影 厚田雄春
共演 原節子, 司葉子, 佐田啓二, 佐分利信, 沢村貞子, 桑野みゆき, 笠智衆

【あらすじ】
麻布の寺で、三輪の七回忌の法要が行われた。
三輪の学生時代の友人間宮、田口、平山の三人が久しぶりに集まる。
彼らは三輪の娘アヤ子に縁談を勧めるが、笑ってごまかされてしまう。
実はアヤ子は、結婚すると母秋子が一人になるのを気遣っていたのだった。
間宮と田口は、秋子が再婚すれば、アヤ子も結婚を決心するだろうと秋子と平山の再婚を画策するのだが、話はこじれていく

 


主演は原節子と司葉子ですが、岡田茉莉子は重要な助演者として登場します。
後半は、岡田茉莉子が全体を牽引しているかと思う程です。


この映画は、小津特有の娘を嫁にやるファミリードラマであるだけでなく、コメディです。
そのコミカルな展開を牽引しているのが、岡田茉莉子なのです。


岡田茉莉子が演じているのは、司葉子の同僚の、寿司屋の娘です。
司葉子が、母である原節子の再婚を不純だと憤るのに対して、子供っぽいとからかいます。
その軽やかさが、魅力的です。







岡田茉莉子が更なる魅力を発揮するのは、男たちを相手にしたときです。
佐分利信、中村伸郎、北竜二という3人の中年男たちが、原節子の再婚と司葉子の結婚を同時に進めようとあれこれと画策するのですが、その段取りの甘さを厳しく批判します。

「どうして静かな池に石を放り込むようなことをなさるんですか!」





そこから、佐分利信たちと飲みに行き、最後に実家の寿司屋に男たちを連れてきて、「ここのお嬢さんはとっても美人なので、見せたかった」とすっとぼけたりします。

司葉子と対照的なサバサバしたモダンガールぶりは、男たちとのやり取りもあって、極上のコメディに仕上がっています。




特に、岡田茉莉子と北竜二とのやりとりは傑作です。

「君は一生、三輪の小母様を愛せるか」と念を押し、北竜二は「あぁ、愛せるよ」と答えます。
それを二度しっかり繰り返し、話題は変わり、岡田茉莉子が寿司屋の娘であることが判明し、岡田茉莉子が「どんどん注文して、ちゃんと払って帰ってね」などと言います。

その後、岡田茉莉子は北竜二に、みたび「でも、小父ちゃま、本当によ」と問いかけます。
北竜二は「あぁ、本当だよ。本当に愛するよ」と答えるのですが、岡田茉莉子は「そうじゃないの 本当にお勘定払うのよ」と言うのです。








このシーンの面白さは、岡田茉莉子のすれっからしな対応と、それにやり込められる中年男たちの対照的なあり方にあります。

ただ、それにとどまらない広がりもあるように思います。

ここでのテーマは、二次会の寿司屋で話すようなテーマではありません。
北竜二は「永遠に愛するよ」とまで言います。

そんな永遠の愛が会話の主題に選ばれていようと、このシーンが終わってみると、岡田茉莉子にとっては、実は他人の恋愛やら結婚やらはどうでもいいような印象を受けます。

仲のいい同僚である司葉子にしても、その母の原節子にしても、岡田茉莉子にとっては重要な人物であるのですが、最後は、どこか「永遠に愛するだの言っても、いつかは変わってゆくものだ」とでも言いかねない諦念が漂っているのです。


それに先立つシーンとして、岡田茉莉子と司葉子が、結婚した同僚が、新婚旅行へ行く東海道線の車輛から自分たちに花束を振ってくれると約束をして、いそいそと東海道線の見える屋上へと上がったにもかかわず、東海道線からそうした様子が見えず、失望するシーンがありました。

岡田茉莉子はそこで、怒りながらもこのように言います。
「だったら結婚なんてつまんない。やっぱり男もそうだろうか。私たちの友情ってものが結婚までのつなぎだったら、とっても寂しいじゃない? つまんないよ。ふん、バカにしてらァ」







そこで既に、人間関係の無常さがほのめかされているのです。

そうして先の岡田茉莉子と北竜二のやり取りを思いかえすと、一見軽やかに見えながらも、人間関係の深淵のようなものが垣間見えてきます。















 


なお、岡田茉莉子の父の岡田時彦は、小津安二郎の映画の常連の男優でした。

 

岡田茉莉子の自伝によると、岡田時彦が死んだとき、小津安二郎は「僕はこれから何を撮ればよいのだろう?」と思ったと、岡田茉莉子に思い出を語ったそうです。

 

それほどまでに、岡田時彦は初期小津安二郎にとって欠かせぬ男優で、その娘である岡田茉莉子に対する小津安二郎の思いもまた他の女優とは別の特別なものであったようです。

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