本日11月12日は、伝説的な映画女優アンナ・ステンの没後30周年となります。
それを記念して、彼女の作品を紹介します。
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アンナ・ステン／Anna Sten А́нна Стен
1908年12月3日 - 1993年11月12日
ロシア帝国キエフ生まれ
ウクライナ人の父とスウェーデン人の母の間に生まれる。
ロシア映画アカデミーで学び、モスクワ芸術劇場に入団。
ロシアのサイレント映画に数多く出演したが、ドイツ映画『カラマゾフの兄弟』（1931年）で注目を浴びる。
サミュエル・ゴールドウィンと契約し、『女優ナナ』(1934)でハリウッドデビュー。
『結婚の夜』(1935)
製作 サミュエル・ゴールドウィン
監督 キング・ヴィダー
撮影 グレッグ・トーランド
共演 ゲーリー・クーパー、シグ・ルーマン
【あらすじ】
スランプに陥った作家が妻と共に田舎にこもるが、都会生活に未練のある妻はＮＹへと引き返してしまう。
夫は隣家の娘に次第に心惹かれ、作品のインスピレーションを得て行く。
彼に請われるまま、話をしに訪ねて行く娘を、父親は政略結婚の婚約者の手前、快く思わず、二人の仲を引き裂こうとする。
そこへ作家の妻も戻って来て……。
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映画史上には、ソ連とハリウッドとドイツでスターだった女優が存在します。
それがアンナ・ステンです。
ロシアバレエ団の振付師だった父をもち、1920年代のソ連では、プドフキンの映画やメイエルホリドとの共演をした後、ドイツへ渡りそこでいくつかの作品に主演した後、ちょうどトーキー移行期のハリウッドで、サミュエル・ゴールドウィンと契約するのです。
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ソ連の1920年代は、ロシアアヴァンギャルドという名前で、ソ連の芸術全般が世界史的にも最も最先端だった時代であり、映画界ではエイゼンシュテインが登場した時代です。
そして、その時代に、演劇界をメイエルホリドが牽引しました（彼は後に転向しなかったかかどで粛清されるのですが）。
そこで、彼女は、ある映画でメイエルホリドと共演をしているのです。
一方、1930年代のアメリカ映画界は、言うまでもなく、トーキーになり絶頂期を迎えます。
第2のグレタ・ガルボを狙って、アンナ・ステンは映画界に売り出され、そこで、かのゲーリー・クーパーと共演したのが、この『結婚の夜』です。
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メイエルホリドとゲーリー・クーパーの両方と共演した女優がいたことに、人はもっと驚いていいと思います。
インターナショナルだの、グローバルだの、と言われますが、アンナ・ステンほどの越境者は、女優の世界にはいないでしょう。
確かに、イングリッド・バーグマンは、スウェーデン、アメリカ、イタリア、フランスと各国で活躍しました。
しかし、それは資本主義圏での移動であり、共産主義圏／資本主義圏での移動は、女優では聞いたことがありません。
（香港からフランスへ渡ったマギー・チャン／張曼玉、中国からシンガポールへ渡ったコン・リー／鞏俐あたりが比較されましょうか。とはいえ、やはり小粒です。）
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さて、この『結婚の夜』は、淀川長治が、恋愛映画のベストとして、『シナラ』『男は神に非ず』と並んで絶賛していた作品です。
コネティカット州の雪原の世界を舞台に、ニューヨークからやってくるゲーリー・クーパーと、隣家に住むアンナ・ステンとのロマンスが語られるのですが、ただただ綺麗な語り口が、心に沁みます。
綺麗な語り口というのは、当たり前ですが、女優の綺麗さとは無縁です。（女優は十分に美しいですが）
妻が不在のゲーリー・クーパーの家に訪ねてきたアンナ・ステンが、自分の家に帰ろうとしたところ、吹雪で枯れなくなり、クーパーの家で一夜を過ごすことなったという状況で、誰しも不埒な想像をします。
しかし、ゲーリー・クーパーとアンナ・ステンが交す会話と、短い接吻は、そうした不埒さとは無縁で、本当に綺麗な語り口です。
綺麗にロマンスを語ることが、クラシック映画の美徳というものです。
そんな美徳に満ちた世界で、ゲーリー・クーパーほど、高潔さが似合う美男子はいないでしょうし、アンナ・ステンは、愛らしい丸顔と繊細な表情を遺憾なく発揮しています。
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監督は、パラマウント映画の傑作で知られるキング・ヴィダー。（『ビッグ・パレード』『群衆』）
撮影監督は、映画史上に残る名手グレッグ・トーランド。（『市民ケーン』）
共演に、ルビッチ映画の常連シグ・ルーマンが名を連ねています。（『生きるべきか死ぬべきか』）
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