明日のNHK BSで、メリル・ストリープ、クリント・イーストウッド主演の『マディソン郡の橋』が放映されます:
5月28日(火)午後1時00分〜3時16分
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この作品についての以前の投稿を再掲します。
なお、メリル・ストリープは先日のカンヌ国際映画祭で名誉パルムドールを受賞しました。
名誉パルムドールは、女優としては、ジャンヌ・モロー、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジョディ・フォスターに続く4人目となります。
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Meryl Streep
- ニュージャージー州生まれ
- ヴァッサー・カレッジ演劇科を修了後、奨学金によりイエール・スクール・オブ・ドラマへ入学。
- 卒業後、ニューヨーク・シェイクスピア・フェスティバルで舞台に立ち、注目される。
- 1977年『ジュリア』で映画デビュー。
- 1978年『ディア・ハンター』でオスカー助演女優賞に初ノミネートを果たす。
- 1979年『クレイマー、クレイマー』でアカデミー助演女優賞を受賞。
- 1982年『ソフィーの選択』で主演女優賞を獲得。
『マディソン郡の橋』(1995)
監督・共演 クリント・イーストウッド
撮影 ジャック・N・グリーン
【あらすじ】
アイオワ州マディソン群の片田舎。
農場主の妻フランチェスカは、夫と二人の子供に囲まれ平凡な主婦として穏やかな毎日を送っていた。
そんなある日、夫が幼い子供二人を連れて4日間遠方へ出掛け、一人で家の留守をしていた彼女の所へある男が道を尋ねてくる。
男の名はロバート・キンケイド。旅のカメラマンで、この近くの屋根のあるローズマン橋を撮影に来たが道に迷ったという。
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古き佳きハリウッドのロマンティシズム
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メリル・ストリープは、1940年代に生まれた女優ですが、アメリカ女優不作の時代に属します。
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アメリカ映画界では、ジェーン・フォンダ(1937年生まれ)の次の世代から、目立った女優がいなくなります。
1940年代前半では、例外的に1940年生まれのラクエル・ウェルチ、1941年生まれのフェイ・ダナウェイ、1942年生まれのバーブラ・ストライサンド、1945年生まれのミア・ファローがいるくらいです。
(その後は、1946年生まれのダイアン・キートン、1949年生まれのジェシカ・ラング、メリル・ストリープくらいです)
この4人とも、映画女優としてはやや遅咲きのであり、遠回りしている世代に属します。
- ラクエル・ウェルチは雑誌のカバーガールのキャリアが先行し、1964年に徐々に作品に出始め、初の主演作は28歳の『バンドレロ』(1968)です。
- フェイ・ダナウェイは、舞台が長く、26歳で『夕日よ急げ』(1967年)でデビューし、同年の『俺たちに明日はない』(1967年)でブレイクします。
- バーブラ・ストライサンドは、本来は歌手なので、26歳で映画デビューです。(『ファニー・ガール』, 1968年)
- ミア・ファローは、映画一家の生まれでキャリアが早いのですが、テレビドラマが先行するので、映画初主演は23歳となります。(『ローズマリーの赤ちゃん』, 1968年)
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奇しくも、この4人とも、1967-68年に事実上の初の主演映画を獲得するのです。
本来なら、1940年代前半生まれなら、1960年代前半にデビューしてそうなのですが、1967-68年を待たなくてはなりませんでした。
それは、1960年代のハリウッドが、いかに新進の女優を活かす映画が少なかったことを意味しています。
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1960年代のアカデミー賞主演女優賞も、そのような傾向です。
キャサリン・ヘップバーンとエリザベス・テイラーがそれぞれ2回受賞しており、外国人であるソフィア・ローレン、ジュリー・クリスティ、マギー・スミスが各1回受賞しています。
そのほかは、ジュリー・アンドリュースは29歳での受賞、アン・バンクロフトは31歳、パトリシア・ニールは36歳。
良くも悪くも、ベテラン女優たちの名誉賞的な受賞であった側面は否めません。
思えば、1960年代に流行ったアメリカン・ニュー・シネマは、男優ばかりにフォーカスがあたった作品ばかりで、女優の存在感が大変希薄です。
例外は、『俺たちに明日はない』のフェイ・ダナウェイでしょう。
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そんなアメリカ女優不遇の時代を、その類まれな演技力で実力ではねかえしたのが、メリル・ストリープでした。
演劇界を経て、28歳で映画デビューし、1980年代以降のアメリカ映画は彼女抜きには語れません。
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メリル・ストリープは、リアリズムの女優です。
同じく1940年代に生まれたドヌーヴが、フランスで最後のロマンティックメロドラマを演じたのと対照的に、メリル・ストリープは、その美貌で観客を魅了するのではなく、そのリアリズムで胸をうってきたように思います。
その意味で、フランス映画界で例えれば、ドヌーヴではなく、イザベル・ユペール的な存在です。
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この『マディソン郡の橋』は、中年の男女の恋愛の物語という点ではロマンティックなのかもしれませんが、演出はアメリカの田舎町に住む疲れた主婦のリアリズムにも重きを置いています。
そのリアリズムが、露悪趣味や政治的な主張などとは全く無縁に、上質なエモーションに結びついているのは、監督でもあるイーストウッドに、古き佳きハリウッドの血が流れ込んでいるからでしょう。
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