来る5月14日は、ケイト・ブランシェットの55歳の誕生日です。
(1969年5月14日生まれ)
それを記念して、ケイト・ブランシェットの作品を紹介しています。
(過去の投稿の再掲となります)

 

2023年5月に公開されたケイト・ブランシェットの最新作です。

 

『TAR/ター』(2022)
監督 トッド・フィールド
共演 ノエミ・メルラン、ニーナ・ホス
撮影 フロリアン・ホーフマイスター

【あらすじ】
ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命されたリディア・ター。
天才的能力とたぐいまれなプロデュース力で、その地位を築いた彼女だったが、いまはマーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。
そんなある時、かつて彼女が指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは追い詰められていく。



ケイト・ブランシェットの熱演含め、見ごたえのある素晴らしい映画でした、とまずはお伝えいたします。


エンディングを含め、ディテールが極めて謎めいているのですが、それについてはいったん置くとして、ケイト・ブランシェットの意欲的な演技について触れないわけにいかないでしょう。


今回のケイト・ブランシェットは、架空の女指揮者リディア・ターを演じています。
指揮者として成功の頂点に達しようとする正にその時に、戦いのストレスゆえに、狭心症を抱える妻(同性愛者なので)や、秘書や学生に対してハラスメントを与え、子供の喧嘩に過剰に関与し、お気に入りのチェリストを依怙贔屓し、その果てに、栄光から転落し、アジアの国に都落ちするというものです。

こうした設定は、これまでは、男優に対してなされてきたのですが、女優でそうした役は稀有だったでしょう。


ふと、トップ女優に上り詰めたケイト・ブランシェットは、キャサリン・ヘップバーンの次に、ベティ・デイヴィスの役をやろうとしているのでは?と思います。

『アビエイター』(2004)で、ケイト・ブランシェットは、キャサリン・ヘップバーンの役を演じました。
そのあまりにも見事なはまり役ぶりは、誰しもが納得がいくものでした。
スリムな体型、パンツルックの着こなし、ウィットに富んだ軽やかなふるまい... それはキャサリン・ヘップバーンに酷似し過ぎていたくらいです。
(キャサリン・ヘップバーンはケイト Kateと呼ばれていました。そのケイトをもう1人のケイトCateが演じたのです)

この作品におけるケイト・ブランシェットのチャレンジは、『ナイト・メア・アリー』のようなファム・ファタールを更に超える悪女 --- ハラスメントをする女--- を演じることだったように思います。


ふと、そうした悪女は、ハリウッドクラシックにおいては、ベティ・デイヴィスだったように思います。
ベティ・デイヴィスは、キャサリン・ヘップバーン、ジョーン・クロフォードと並ぶ、ハリウッドの大御所女優です。

ベティ・デイヴィスの悪女ぶりは、『偽りの花園』(1941)が突出しているでしょう。
階段の上から、下を見下ろしたり(何度も出てきます)、椅子にふんぞり返って座り、男たちに侮蔑の視線を投げかけたり、足を蹴ったり。
食事を不味そうに食べ、召使に料理が冷えているから下げろと命じたり、心臓を患っている夫に「早く死んで欲しかった」と言い放ったりするのです。

重要なのは、それが、映画として成立するのは、撮影監督グレッグ・トーランドにより、バロック的な美しさを彼女がまとっているからです。
とりわけ、髪型や帽子の過剰な流線形は、映画史上に残る見事なものです。
(なお、ベティ・デイヴィスの美学は、その後部分的にジャンヌ・モローに受け継がれます)


さて、この映画も、2時間38分にわたって、指揮者の栄光と没落を描きながらも、退屈せず観ることが出来、しかも、エレガントな印象を残すのは、ケイト・ブランシェットの姿(とりわけ座る姿勢)や空間の作り方にあるように思います。
(それにしても、寒々しい色使い!)

空間の使い方では、バッハ嫌いの学生を指導するシーンでの見事な空間が挙げられましょう。
舞台に対して、生徒たちが雛壇のように座り、ケイトが舞台と雛壇の最下段を行き来して、そこで観る者との間に緊張関係を導入するのです。
他にもオーディション会場の客席が空のコンサートホールの曲線の美しさも挙げられましょう。

 













それよりも、ケイト・ブランシェットの華麗な座り方に注目したいと思います。


ケイト・ブランシェットは、この映画で何度も座り、パンツルックで脚を組みます。
深々と腰を下ろし、くつろいでいるその姿は、実に優雅で、とてもこれから没落する存在には見えません。
ポディウムに立ってタクトを振るときや、ピアノ台に座って楽譜と格闘するときよりも、彼女が生き生きとして見えるのです。(ワイドスクリーンを十分に生かしているからでしょうか)









没落後、フィリピンと思しき国のオーケストラのスタッフたちから歓待を受けたときも、ケイト・ブランシェットは心地よさそうにソファに座っています。



栄光の絶頂時のソファへ腰かけるケイトと、没落後にソファに腰掛けるケイトとが、共鳴しあっており、それが、この映画の通奏低音のように、一瞬感じられます。


そこでは、権力をもった指揮者と、そうでない演奏者・スタッフ・学生という関係が昇華されているようです。


そして、それは、映画の冒頭での、謎の人物がスマートフォンで撮影している、ケイト・ブランシェットの疲労した睡眠(プライベートジェットで座りながら眠る姿)と見事な好対照をなしています。



蓮實重彦のベルトルッチ論の聡明さからは程遠い出来ですが、ひとまずこの問題作をひとたび観た感想をまとめてみました。

 

それにしても、アカデミー賞主演女優賞をこの作品のケイト・ブランシェットが獲得できなかったのは、謎というか、アカデミー賞なんてそんなものという認識を強めてしまいます。


以下、余談です。
最後、ゲームのコスプレをしたアジアの少年少女が出てきたり、謎めいたディテールに溢れています。
出来れば、ケイトの美しさとともに、再び堪能したいのですが、いかんせん2時間38分は厳しい長さです...
(冒頭では、エンドロールばりにスタッフのクレジットが延々と流れるのですが、近年の映画に固有の長い長いクレジットだけは我慢が出来ません)






























 

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