本日3月23日はジョーン・クロフォードの生誕119周年です。
(1905年3月23日生誕 - 1977年5月10日死没)
それを記念して、彼女の作品を紹介いたします。

 

『大砂塵』(1954)
監督 ニコラス・レイ
共演 スターリング・ヘイドン、スコット・ブラディ、アーネスト・ボーグナイン
撮影 ハリー・ストラドリング

【あらすじ】
1890年代の西部。流浪のギター弾きジョニーがアリゾナの山奥にある賭博場へやって来た。
女主人ヴィエナはかつての恋人だったが、白昼起きた駅馬車襲撃事件の容疑者キッドを匿っているとして犠牲者の妹エマと保安官たちに嫌がらせを受け、24時間以内の退去を命じられる。
疑いをかけられたキッド一味は銀行を急襲。
その場にいたヴィエナも共犯と見られ、遂に自警団はヴィエナの店を襲い火をつけた…。

 

トリュフォーの『暗くなるまでこの恋を』でリヨンに逃亡中のベルモンドとドヌーヴが、映画館に行き、この『大砂塵』を観るシーンがあります。

 

『暗くなるまでこの恋を』より

 

ドヌーヴは「良かったわ。ただの西部劇じゃない。」と言い、ベルモンドが「恋愛物だ。感情がこもっていた。」と絶賛します。

 



 

ゴダールも、映画とはニコラス・レイのことだと言っているほど、この『大砂塵』の監督ニコラス・レイが、映画史に与えた影響は計り知れません。
 

この映画では、ジョーン・クロフォードは当時50歳前後であったはずです。
いわゆるB級映画(二本立て西部劇)ながらも、圧倒的な存在感を与えています。

その賛辞については、私は、ゴダール、トリュフォー、蓮實重彦ほど熱い言葉を私は伝えることができませんので、いくつか蓮實重彦のコメントを引用しておきましょう。
 

これは女性が主役の西部劇で、しかも女性のために男が何人も何人も死んでいく。

しかも最後に女性同士がお互いの嫉妬心からビストルを撃ち合って決闘をするという、

なんかいま考えただけでもゾクゾクするような倒錯的な作品です。

 




 

舞台となっている山小屋やその周辺の斜面を強調しているみごとな空間処理に驚いて、こんな創意に満ちた演出をやってのける映画作家はいるだろうかというほどの驚きでした。
それに、当時のトゥルーカラーの色彩処理が凄い。
茶褐色の岩肌を背景に純白のドレスを着たジョーン・クロフォードが真っ黒いピアノが弾く場面では、ひたすらに泣きました。
彼女の女優としての魅力は圧倒的でした。
フォードやホークスの西部劇などとはフィルムの質感が違っていました。
古典的というより、どこかに思いがけぬ歪みのようなものが走りぬけ、ちょっとバロック的な感じがした。
それが新しく思えたのです。






 

『大砂塵』という映画は場所そのものが斜面に据えられていて、この斜面をどのように人々がころげおちるかということがアンソニー・マン的な世界に近づいていきますけれども、その中で2人の男が死にます。

ベン・クーパーという若い男が、ジョーン・クロォードに抱かれて死ぬことになりますが、この時のジョーン・クロフォードの膝の上にベン・クーパーが顔を乗せる、そしてジョーン・クロフォードがそれを上から抱くようにする。
 
これは非常に母性的な形だと思いますけれども、こういう形で女の人が上にいて、男の人がその下に横たわる、上下の位置が違って、そして上から女性が見下ろすという形ですね。
 
それからジョン・キャラダインという老牧童が死にますけれども、彼もまさに死んだ瞬間に彼女に抱かれて床に身を横たえ、それをまたジョーン・クロフォードが少し斜めに見下ろすという形です。
 
正面から2人向き合った接吻というよりは、顔が少しずつ空間の中で上下にずれる、そしてずれた時にそれをどう撮り、どういう画面の連鎖としてつなげていくかという、これがどうやら私の考えているニコラス・レイのフォルムの魅力であるように思います。

 





 

ジョーン・クロフォードが小柄でありながらもあの眉毛の濃さによって西部の女王となり、小さな街のバーを取り仕切っていて、一種の階級的な西部劇であった。
 

トゥルーカラーによる色彩映画、ハリー・ストラドリングのはじめてのカラー作品ではありませんけれども、日本に入った最も優れた色彩映画の一つだと思います。
 
トゥルーカラーというのは、いかにも人工的な色なのですが、真っ赤な口紅をつけたクロフォードが、白いドレス姿で馬に乗り、首に綱を巻かれていまにも首を吊されそうになる夜景など、みごとなものでした。
 
その後、彼は色彩ミュージカルの名手として珍重されることになります。











思えば、女優というのものの必須要件 --- 大きい瞳、白い肌、赤い唇、彫りの深い造型 --- と言ったものを、極端なまでに総動員したのが、この映画のジョーン・クロフォードであると言えましょう。
(その意味で、ルネサンスを換骨奪胎したマニエリスムに近いものがあります)

彼女の、赤や緑のネッカチーフ、赤い唇が、黄色や黒のシャツ、白いドレス、そうしたものが、映画史上稀に見る、華麗な色彩を
実現しています。

 

ハリー・ストラドリング

  • アメリカ生まれ。叔父も撮影監督。
  • 1920年代から活躍。1930年代にはパリで活躍し、1940年代にハリウッドへ戻る。
  • 詩的レアリズムから、バロック風色彩処理、色彩ミュージカルまで幅広く手掛ける。
  • アカデミー撮影賞に14回ノミネートされ、『ドリアン・グレイの肖像』と『マイ・フェア・レディ』で受賞。

代表作:
『外人部隊』(1934)
『鎧なき騎士』(1937)
『断崖』(1941)
『ドリアン・グレイの肖像』(1945)
『欲望という名の列車』(1951)
『大砂塵』(1954)
『野郎どもと女たち』(1955)
『マイ・フェア・レディ』(1964)


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