イザベル・ユペールの70歳の誕生日を記念して、彼女の作品を紹介しています。
(1953年3月16日生誕-)
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今日紹介するのは、ベルリン国際映画祭銀熊を獲得した作品です。
『未来よ こんにちは』(2016)
監督 ミア・ハンセン=ラヴ
共演 アンドレ・マルコン
撮影 ドゥニ・ルノワール
【あらすじ】
パリの高校で哲学を教えている50代後半の女性ナタリー。
夫は同じ哲学教師で、子どもも2人いて、どちらもすでに独立していた。
ひとり暮らしをしている年老いた母のことは気がかりだったが、それなりに充実した日々を過ごしていた。
ところがある日、結婚25年目にして夫から“好きな人ができた”と告白され、唐突に離婚を告げられる…。
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ユペールは、カトリーヌ・ドヌーヴのような美貌の女優ではありません。
小柄ですし、ゴージャスや、グラマラスという言葉は全く似つかわしくありません。
また、ブロンドではなく、赤毛です。
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彼女の女優としての特質 --- それも63歳になっても演じていられる --- は、その髪の毛の動きにあるように、ふと思います。
『未来よ こんにちは』で、ユペールが花を運ぶとき、元の生徒と歩くとき、窓へ向かって歩くとき、ユペールの白い顔の上にかかるロングボブの髪の毛が揺らぎます。
静かに動く、その髪の背後に、ユペールの大きな赤い唇が覗くのです。
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ユペールが、無意識的に後継者となっているところの、グレタ・ガルボは、実は髪の毛を乱すことは少ない女優でした。
(その帽子姿の美しさゆえに、ガルボ・ハットなるものが生まれたのです。)
そして、何よりも、瞳の動きこそが最大の魅力だったので、それを髪の毛で隠すことはありませんでした。
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髪の毛の美しさを映画に持ち込んだのは、ドヌーヴでした。
生涯染め続けているブロンドヘアこそが、彼女のトレードマークでありました。
『終電車』の華麗なシニョンを覚えていない人はいないでしょう。
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さて、ドヌーヴより9歳若いユペールの、女優としての資質は、その敏感な反応にあります。
ユペールは自らを媒介として、世界を切り取って見せる、感光紙のような存在です。
その敏感な反応は何よりも、髪の毛に表れているように思います。
ユペールが世界に反応するとき、彼女の髪の毛は、美しく動くのです。
それが、ハッピーエンドであろうと、悲劇であろうと、そしてこの映画のように、未来へ対して宙ぶらりんの状態で終わる場合であっても。
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