イザベル・ユペールの70歳の誕生日を記念して、彼女の作品を紹介しています。

(1953年3月16日生誕-)

 

こちらは、66歳のユペールの佳作です。

 

『ポルトガル、夏の終わり』(2019)
監督 アイラ・サックス
共演 ブレンダン・グリーソン
撮影 フイ・ポーサス

【あらすじ】
ヨーロッパを代表する女優のフランキーは、世界遺産に選ばれたポルトガルの避暑地シントラで夏の終わりのバカンスを楽しんでいた。
彼女はそこに家族や友人など近しい人々をまとめて呼び寄せていた。
しかし、その誰もが問題を抱え、悩み多き日々を送っていた。
そんな彼らを一堂に集めたのには、フランキーなりのある思惑があったからだったが…。



監督は、アメリカ人で、アメリカ・フランス・ポルトガル共同製作映画となっております。

まるでエリック・ロメールの映画のように、避暑地シントラを舞台にして、長廻しのショットで、セリフによるくどくどしい説明無しに、人間模様を映し出します。


私は伏線回収という言葉が嫌いです。
映画や芸術はストーリーのために存在しているわけではないからです。
もちろん、素晴らしいストーリーを実現する脚本は、あった方がいいです。
しかしながら、そうしたストーリー重視思考が、ファスト動画やらの氾濫の背景にあり、いちいち作品の伏線回収やらを議論する風潮を後押しするのです。
しかしながら、私たちが作品を観て、感動するのは、そうしたストーリーよりも、その視覚的実現によります。


この映画は、シントラという、冗談のように美しい風景を舞台に選んでいます。
冒頭のユペールの別荘と思しき邸宅のプールの青さには、美しいと感じると同時に、その嘘のような舞台設定に、不思議な映像体験を経験することになります。
この監督は、そうした漫画のような、限りなく単純化された舞台設定の中で、俳優たちを動かすだけで、映画になると考えているかのようです。
固定キャメラで、多少パンをすることはあっても、ギミックのある演出はほとんどありません。
この作品は、セリフではなく、俳優たちの演技によってストーリーをしっかりと語っているのです。






ユペールは、そこで死期が迫っている女優にして、妻であり、母親である役を演じます。青いデニム地のジャケットに、パープルのスカーフとパンツ姿で、シントラの森林の中や歩道を歩く姿が印象に残ります。

年齢を経るごとに、ユペールは、女優としての存在感の大きさを印象づけます。
ドヌーヴは、年を取ってもまだまだ美しいブロンドをもった容姿であるという感銘を受けますが、ユペールの場合は、そうした容姿の美しさというよりは、小柄で赤毛でありながらも、フィルムの中にフィットして、凛々しい印象をしっかりと残します。





 










この映画のベストショットは、ラストシーンです。
ユペールは、山頂へと足を進め、後から三々五々やってくる家族や友人を、上から見下ろします。
そのユペールの顔と、風に吹かれてなびく髪を、薄曇りの空を背景にして、やや仰角のショットが捉えます。

そして、雄大な夕陽を見る家族たちがロングショットが続きます。

これらのショットの感動について、いまは語るべき言葉はありません。
伏線があるのかないのか、回収されたのかされていないのか、分かりません。
余命わずかの女が、家族たちの集合する様子を見て何を考えているのかも分かりません。

そうした些事を堂々と無視するこの映画は、映画そのものが、実にエレガントだと思います。

 





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