本日3月11日はドミニク・サンダの73歳の誕生日です。
(1951年3月11日生まれ)
それを記念して、ドミニクの作品を紹介しています。
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今日ご紹介するのは、ジャック・ドゥミのミュージカルです。
『都会のひと部屋』(1982)
監督 ジャック・ドゥミ
音楽 ミシェル・コロンビエ
美術 ベルナルール・エヴァン
共演 リシャール・ベリ、ダニエル・ダリュー、ミシェル・ピコリ
※歌は全て吹替
【あらすじ】
町ナント。労働者たちが機動隊と相対している。
労働者の中に、冶金工ギルボーの姿もある。
彼は息子を失ったラングロワ男爵夫人のもとに間借りしていて、ヴィオレットという恋人がいる。
男爵夫人の娘エディットはテレビ販売店を経営するエドモンのもとに嫁いでいる。
嫉妬深い夫に嫌気をさしたエディットは、ある晩、裸体に毛皮のコート1枚という姿で家を飛び出し、フランソワに会いに行く…
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31歳のドミニク・サンダの作品です。
ドミニクは、ほとんどのシーンで毛皮のコートを着ています。
(ラストシーンだけ、緋色のブラウスにグレーのスカート姿で登場します)
売春をしているという設定で、毛皮のコートを一部はだけさせて、裸体を披露するシーンもあります。
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『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』のジャック・ドゥミの、彼固有の意欲的なミュージカルです。
その2作がそうだったように、セリフもすべて歌になっています。
※ただし、音楽はミシェル・ルグランではありません。
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ただし、『シェルブール』や『ロシュフォール』と打って変わって、はっきりと政治をテーマにしています。
冒頭と最後にオープンセットでの撮影とはいえ、労働者と機動隊との衝突が描かれています。
極めて意欲的なミュージカルです。
とはいえ、映画全体としては、ある部屋をめぐる、人間模様の方に重点が置かれているように思います。
大家ダニエル・ダリューから部屋を借りているリシャール・ベリと、ダニエル・ダリューの娘のドミニクとが、出会い、恋に落ち、死に至る悲劇という人間模様です。
また、ドミニクを愛する夫のミッシェル・ピコリもまた死に至ります。
『シェルブール』や『ロシュフォール』、その後の『ロバと王女』、『モン・パリ』に漂っていたような牧歌的な空気はありません。
古典的な映画手法(セットでの撮影、視覚的効果を抑制した語り)を用いながら、いかに現代的なテーマを扱えるかが目論まれているようです。
(その意味で、トリュフォーが『終電車』(1980)で、大戦時のドイツ占領下のパリを描いたのと対照的と言えましょう。)
※大傑作というものではありませんが、この映画の評は心無いものが多く、胸が痛みます。
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このような現代的な役としては、ドミニクは合っています。
当初は、ドヌーヴにオファーしたようですが、ドヌーヴが吹替を拒んだために、実現しなかったようです。当時、ドヌーヴは"Courage Fuyons"で歌を披露していたので、吹替は嫌だったというのがその理由です。
一方、ドミニクからは、"La Naissance du Jour"(1980)というドゥミのTV映画に出演していたので、彼女から再び仕事をしたいと希望したようです。
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なお、この作品は、日仏会館でのみの上映で、DVDでは出ていません。
労働者たちのストライクを背景としたこのミュージカルは、ドミニック・サンダとダニエル・ダリューが共演していますが、大人の映画でありながら、そのことには満足していないというドゥミの制作意欲がもっともみごとに結実した作品だと思います。
(蓮實重彦)
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