来る7月16日は、バーバラ・スタンウィックの生誕117周年となります。
それを記念して、彼女の作品を紹介しています。
(1907年7月16日生誕 - 1990年1月20日死没)

 

人を幸せにする映画というものがありますが、監督ハワード・ホークスによるこの映画はそんな映画の1つです。

 

なお、Amazonプライムビデオで無料で視聴可能です。
 

『教授と美女』(1941)
監督 ハワード・ホークス
製作 サミュエル・ゴールドウィン
撮影 グレッグ・トーランド
出演 バーバラ・スタンウィック、ゲイリー・クーパー、オスカー・ホモルカ、ダナ・アンドリュース、ダン・デュリエ
   S・Z・サカール、ヘンリー・トラヴァース

 

【あらすじ】
百科事典編纂の為、館に何年も缶詰になっている8人の教授達がいる。
最年少の言語学者プットの前に格好の調査対象、下町訛り丸出しのブギウギ・シンガーが現れ、彼は館に彼女を招待する。
情夫のギャングのボスが犯した殺人事件の証人喚問されるのを逃れられると、彼女は喜んでやって来るのだが……。



ハワード・ホークスの映画は、現代を扱っていながら、どこか時間が現代から浮遊したような感覚があります。

この作品で、百科事典作成にいそしむ、ゲーリー・クーパーの同僚の7人の老研究家たちは、まるで7人の小人のようです。
そこに、踊る白雪姫として、ブギウギダンサーのバーバラ・スタンウィックが紛れ込んできます。


ここでのバーバラ・スタンウィックの素晴らしさは、決して下品にならない親しみやすさと言えましょう。

スパンコールをたっぷりとちりばめた、胸と下半身を包むツーピースのドレスを身にまとい、ダウンタウンと思しきキャバレーでブギウギを、粋に歌い踊ります。


観客の大歓声を得たあと、「また、同じ曲をリクエストなのね。じゃあ、協力してね。」と言って、観客の中に分け入り、「マッチ・ブギー」なる小品を披露します。

そのエンターテイナーとしての愛嬌。





そんなバーバラ・スタンウィックが、ゲーリー・クーパーたちの研究の館へやってきます。
いかにも「掃き溜めに鶴」のようなシチュエーションにもかかわらず、バーバラ・スタンウィックは老研究者たちを小馬鹿にすることなく、軽やかに溶け込むのです。








こうした作品では、女優としての才覚が求められるように思います。

一方で、艶っぽく、色気を漂わせつつ、もう一方で、軽やかで、親しみやすさを演出するのです。
(実際この映画のリメイクの『ヒットパレード』でのヴァージニア・メイヨーは苦戦しています)

そうした才覚をバーバラ・スタンウィックは軽やかに発露させます。

その軽やかさは、『パームビーチ・ストーリー』でのクローデット・コルベールが、ウズラを撃つ会の中年男性のグループに溶け込んでいく様子を思い出させます。








ハリウッドクラシックのコメディエンヌたち ---バーバラ・スタンウィックだけでなく、キャロル・ロンバード、キャサリン・ヘップバーン、ミリアム・ホプキンス、ロザリンド・ラッセル --- は、みなそんな軽やかさを備えているのです。

(ガルボ、ディートリッヒ、バーグマンといった北欧系美女にはできない芸当です)



この映画の白眉となるのは、バーバラ・スタンウィックとゲーリー・クーパーのキスシーンです。

 

『教授と美女』の素晴らしさは、そこにキスの発見ともいうべき瞬間が描かれているからだ。
 実直な言語学者がギャングの情婦からキスのレッスンを受けるといった物語の他愛なさを生真面目に演じ、なお、人を納得させてしまうゲーリー・クーパーの嘘としか思えぬ不器用な巧みさこそハリウッド映画のキスシーンにうってつけのものなのだ。(蓮實重彦)





こうした多幸感を支えるのがバイプレーヤーたちです。
7人の老研究者たちには、オスカー・ホモルカ、S・Z・サカール、ヘンリー・トラヴァースなどの名優たちがいます。
(現代の映画に不在の魅力ある老人たち)

彼らのバイプレーヤーとしての魅力が一人一人際立っていることが、この大人のおとぎ話を嘘くさくさせないような気がします。




最後に急いで触れないとならないのは、撮影監督のグレッグ・トーランドです。
『市民ケーン』『歴史は夜作られる』『嵐が丘』『偽りの花園』... そのような大撮影監督が、この一見してたわいものないコメディを担当しているのがハリウッドクラシックの素晴らしさです。

 

映画の終わり近く、ゲーリー・クーパーはそれと知らずにハーバラ・スタンウィックの寝室に入りこんでしまう。
ベッドに横たわっているのが同僚の老教授だと信じて、彼は、自分が初めて女性を愛してしまったと告白するのだが、それを暗闇の中で黙って聞いているバーバラ・スタンウィックのクローズアップは息をのむ素晴らしさだ。
名手グレッグ・トーランドのキャメラの傑作中の傑作だろうが、闇の中に光る彼女の瞳の濡れたような艶やかさを見て泣かない人間は人間の名に値しないと思う。

(蓮實重彦)





 

バーバラ・スタンウィック

  • ニューヨークに生まれ、年の離れた姉に育てられる。
  • 1927年に映画デビュー以降どんな役柄でもこなせる女優として活躍。
  • 『ステラ・ダラス』から始まって『教授と美女』『深夜の告白』『私は殺される』でアカデミー主演賞にノミネートされるが、いずれも無冠に終わっている。
  • 1965年からはTVシリーズのプロデューサーとしても活躍。

 

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