2月29日は、ミシェル・モルガンの生誕106周年です。
(1920年2月29日生誕 - 2016年12月20日死没)
それを記念して、彼女の作品を紹介します。

 


こちらはフランス映画史の残る傑作の1つでしょう。

 


なお、Amazon Prime ビデオで無料で視聴可能です:

 

 

『曳き舟』(1941)
監督 ジャン・グレミヨン
撮影 アルマン・ティラール他
共演 ジャン・ギャバン

【あらすじ】
港町ブレスト。
曳き船サイクロン号の船長アンドレは、難破した船を救助した際に知り合った謎めいた美女カトリーヌと恋に落ちる。二人は海辺の家で密会するようになるが、長年連れ添った妻イヴァンヌは心臓の持病を抱えていた…。



『霧の波止場』(1938)に続く、ミシェル・モルガンとジャン・ギャバンの共演作品となります。
港を主題としながら、『霧の波止場』と全く異なる映像の美しさに打たれます。

 


『霧の波止場』は照明と美術(装置)の映画でした。
そこでは、オープンセットでの屋外撮影を活用しつつ、隠れ家のバーの屋内を主な舞台としており、屋内と屋外をいかに繋ぐかが、演出上のポイントでした。
かの有名な、窓の外から窓の外を見るミシェルとジャンを捉えたショットは、まさにそうした瞬間の1つでした。

 



それに対して『曳き舟』は、ロケーションと自然光の映画です。

 

波にもまれる曳き船の甲板、港町の光景、係留される船舶、舟と舟を結ぶ綱のたわみ、あるいは夢のようなとしかいえない白い砂浜の拡がり、等々、グレミヨンのキャメラが切り取ってみせる現実の断片は、世界の再現を越えた生々しさでスクリーンの無類の緊張感を行きわたらせる。

(蓮實重彦)

 


ミシェル・モルガンとジャン・ギャバンが海辺を歩くシーンの美しさはどうでしょう。

 

前夜の嵐の夜の海と真逆の、晴れた空と白く砂浜を背景に、ミシェル・モルガンは、白いブラウスに、黒の半袖のワンピースのようなものを重ね着して、歩きます。
その抒情的な美しさ。

風がまだ強く、そのブロンドの髪が乱れ、ミシェル・モルガンが顔ははっきりとは見えません。



ミシェルがヒトデを捕まえる際に、小船に腰掛ける2人の姿が映し出され、ミシェルは、髪の毛をかき上げ、その美しい顔と鋭い瞳を露わにするのです。


ミシェルを見つめるジャン・ギャバンに愛が芽生える様子が、一切の説明なく描かれています。
『霧の波止場』のように「瞳がきれいだ」などと言わないのです。

その後、ジャン・ギャバンは、ミシェル・モルガンとの深い恋におちていくわけです。


その慎ましい演出と画面の力。

 









映画とは、こんな瞬間だけあれば、あとはどうでもいいような気にさえなります。

男女の距離と瞳の交差。これを優雅に描くことが映画なのだと思います。




















なお、デブラ・ウィンガー主演『シェルタリング・スカイ』(ベルトルッチ)のラストシーン近くで、アフリカの都市の映画館ででこの『曳き舟』が上映されているカットが入ります。

 

 

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