本日5月14日のリタ・ヘイワースの没後37周年を記念して、彼女の作品を紹介いたしています。
(1918年10月17日 生誕- 1987年5月14日死没)
『ギルダ』(1946)
監督 チャールズ・ヴィダー
共演 グレン・フォード
撮影 ルドルフ・マテ
【あらすじ】
ブエノスアイレスに流れ着いたジョニー。
カジノでイカサマがばれ、殺されかけたところをカジノのオーナー、マンスンに助けられる。
才能を見込まれ、片腕として雇われることに。
ある日、マンスンは旅先から若い妻を連れて帰ってくるが、その妻こそがジョニーの人生を狂わせた、かつての恋人ギルダだった・・・
※『ショーシャンクの空に』で引用されています
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1946年、ハリウッドクラシックはこの映画とともに、転換点を迎え、一連の新しい映画が生まれます。
それは、フィルムノワールと呼ばれます。
主演のリタ・ヘイワースもまた、新しい女優の美しさを伴って、スターダムへ登場したのです。
(なお、同時代人としては、ジェニファー・ジョーンズ、ローレン・バコールがいます)
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ハリウッドクラシックには、映画会社によるヘイズコードという自己規制の仕組みがありました。
端的に、性的なこと、暴力的なこと、宗教や人種差別への当てこすり、薬物への言及は、禁止されていました。
むろん、ヌードやベッドシーンなどもってのほかでした。
男女は、パジャマ姿であっても、ベッドで同衾してはいけないとさえされていたのです。
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余談ですが、それがゆえに、キスシーンがより官能的になりました。
ハリウッドクラシックのキスシーンが素晴らしいのはそうしたことによります。
1946年のヒッチコックの『汚名』では、世界一長いキスシーン(イングリッド・バーグマンとケーリー・グラント)が生まれたくらいです。
あるいは1941年のハワード・ホークスの『教授と美女』のヤムヤムシーン(バーブラ・スタンウィックとゲーリー・クーパー)。
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さて、リタ・ヘイワースの『ギルダ』の衝撃は、終盤でリタ・ヘイワースが見せる、ダンスシーンです。
とりわけ、ノー・ストラップの黒いシルクのイブニングドレスを着たリタが、歌いながら、黒い長いグローブを脱ぎ捨てるシーンが官能的だったのです。(歌は、アニタ・エリスの吹替え)
いわゆるストリップティーズのダンスに似てはいるのですが、このシーンには、ヌードはありません。
それどころか、脚はスリットか多少見える程度ですし、バストも特にいわゆるグラマラスなものではありません。
腰の振り方も、必ずも扇情的なものではありません。
(そもそも、彼女がなぜ踊っているかは、物語上よくわからないのです)
よって、ヘイズコードが禁じているはずの性的なものが復活しているわけではありません。
一見して、リタの赤い髪、白いデコルテ(首、肩)と二の腕だけがむき出しになっているだけです。
ここでは、ハリウッドの女優たちのエレガンスとは、また別の何ものかが、登場しているのです。
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それは、端的に髪の動きの妖しさと言えましょう。
この続きは、以下の2つの論考からの引用に譲りたいと思います。
踊りだすと太腿のあたりまでまんなかがパッと割れる大胆なスリットの入ったノー・ストラップの黒いシルクのイブニングドレスを着たリタ・ヘイワースが「それはみんな彼女のせい」の歌に合わせてしなやかに踊りながら黒い長手袋をぬぎ捨てる(「手袋のストリップショー」といわれた)シーンは、映画『ギルダ』のハイライトであるとともに、女優リタ・ヘイワースの魅惑の頂点でもある。
このナンバーの声はアニタ・エリスの吹替えとのことだが、リタ・ヘイワース自身が――吹替えなしで――ギターを爪弾きながら同じ歌を歌うシーンが先に出てくるので、声の吹替えなどまったく気にならずに、「手袋のストリップショー」では彼女の身のこなしの見事さに陶酔できることになる。
リタ・ヘイワースはどんなものを身にまとっていても、体の線がくっきりと見えるだけでなく、ほとんど着ているという感じがなく、まるで肉体の一部のようななまなましさ、なまめかしさだ。
片方の長手袋を美しくすらりとのびた腕から、するするとストッキングのようにひきさげながら抜き取り、指でつまんでくるくると回してみせびらかし、ナイトクラブのフロアのテーブルの男たちに投げてやる。
歌い、踊り終わってから、彼女はもう一方の長手袋をぬいで、ほうり投げる。
体を前にのめらせてほうり投げた拍子に、まばゆいばかりに輝く長いふさふさとした髪の毛がゆらいで顔にかかる。
その髪の毛をさっとかきあげると、あの、誰に微笑みかけるとも知れない高慢な歓びにみちたリタ・ヘイワース・スマイルが画面いっぱいにひろがるのだ。
(山田宏一)
おそらく、リタ・ヘイワースを他のスターから隔てているものは、豊かな赤毛という点をのぞくと、どこといってとらえどころのない中途半端なところにあるというべきであろう。(...)
彼女は、意図的に精神と肉体を統御することで鮮明な輪郭におさまるといったプロフェッショナルな女優ではなく、あくまで無自覚かつ無責任におのれを人目にさらすとき、フィルムの表層に思いもかけぬ亀裂を走らせうるタイプのスターなのである。(...)
彼女が動いている限りは流れるように揺れ続けるそのヘアースタイルが、綿密な計算に基づく純粋に人工的な産物である(...)。
ときには顔の輪郭さえおおい隠しかねないそのウェーヴは、本能をあらわにする動物的なものというより、遥かに植物的な執着のなさを印象づけている。(...)
スクリーンのギルダ=リタの存在がいきなりふっと間近かに迫ってくるのは、乱れていることが存在のあかしだともいいたげな豊かな髪が、やおら大気に煽られたかのように大きく揺れ動く瞬間にほかなるまい。
執拗にミスター・ファレルと応答し続ける彼女は、ショットごとに微妙にかしげる首の角度を変えるので、それにつれて豊かな髪のたゆたいが頬から素肌の肩を隠したりあらわにしたりする緊張感が、鈍いエロティシズムとなってスクリーンを湿らせてゆく(...)。
(蓮實重彦)
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なお、リタの髪は、毛根除去により額を生え際を上げているようです。
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なお、撮影監督は、カール・ドライヤーや、レオ・マッケリーの『邂逅』で知られたルドルフ・マテ。
彼は、リタがフォックス映画社のキャメラテストを受けた際にも、担当をしているのです。
ダンスシーン以外のクローズアップで直接ライトを当てない手法は、実に巧みです。
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