3月7日は、イタリアの伝説的な女優アンナ・マニャーニの生誕116周年です。
(1908年3月7日生誕-1973年9月26日死去, 65歳没) 
それを記念して、アンナ・マニャーニの作品を紹介しています。


こちらは、アンナ・マニャーニの傑作にして、ルノワールの傑作でもあります。

 

『黄金の馬車』(1953)

監督 ジャン・ルノワール

撮影 クロード・ルノワール

共演 オドアルド・スパダーロ

 

【あらすじ】

18世紀初頭南米のスペインの植民地。総督府に到着したきらびやかな黄金の馬車。

同時にドン・アントニオが座長をつとめる"コメディア・デラルテ"一座もやってきた。

黄金の馬車に沸き立つ貴族たち、そして一座は舞台の準備に大わらわ。

やがて一座の花形女優カミーラをめぐって、総督フェルディナン、闘牛士ラモン、騎士フェリペの恋の大騒動の幕が開く。

 


当ブログでは、カトリーヌ・ドヌーヴを中心的に取り上げています。


それは、まったくもって個人的な趣味の理由です。

演技派の女優に少し食傷気味であるため、嗜好がクールビューティに傾いているからです。
じっさい、映画女優に絶対に必要なものは、演技力ではなく、スクリーンで発揮される美しさだと思っています。

大根役者と言われようとも、高倉健が優れた役者であり、
いかに演劇界で評価が高くとも、ローレンス・オリヴィエは映画男優としてはいま一つなのは、そうした理由によります。
演劇と映画は違うのです。


さて、このような次第で、クールビューティを中心に女優たちを取り上げてきました。

 

今回はアンナ・マニャーニを取り上げています。
しかし、彼女は、カトリーヌ・ドヌーヴと対極の位置にあります。

いわゆる美人女優ではありませんし、イタリア女優ですがモードと何の関係もありません。
髪も黒髪で、スタイルはふくよかなタイプで、スリムではありません。
人によっては、演技派に分類するでしょう。

ところが、アンナ・マニャーニという「演技派」女優は、私たちを圧倒します。
いわゆる「演技派」女優の感情を押し付けてくるような辛気臭さとは無縁です。

 

イタリア的な---と言ったら実に陳腐なのですが---、強い肯定性が、アンナ・マニャーニから溢れて出ているのです。

 

この女優に対して、言葉はあまりに無力です。
 




















 

ルノワールがこれだけはやってみたいと思っていたのは、アンナ・マニャーニが誇り高い笑みを浮かべて馬車から降りる瞬間の、黄金の馬車全体がみせる小刻みな震えであるに違いない。
その精巧なスプリング装置のはしたないほどの機能ぶりを目にして、すぐさま豪華なベッドを想像したなどとはいうまい。

だが、ここでのルノワールは女に繊細極まりない「震動」を贈物として棒げているのであり、マニャーニもまた、その「震え」に進んで全身を委ねようとする。

『黄金の馬車』が「映画を超えた何ものか」であるのは、もっばらその個人的な性格による。
ルノワールとマニャーニとは、夫婦でもあった名高い監督と女優のいかなるカップルにもまして、男女の出会いの喜びをあっけらかんと謳歌しあっているのである。
これはどのあられもなさがはたして許されて良いのかと、ふと不安に襲われぬでもないが、上映が終ったとき、あらゆる人が
それを許しているのは、いったい何故なのか。
映画が終ろうとする瞬間、アンナ・マニャーニがイタリア訛りのフランス語で「ちょっと惜しい気がするわ」とつぶやくとき、彼女は「色彩」と「運動」としての黄金の馬車との別れを懐かしんでいるかのようだ。
その言葉を耳にして、総てを許さずにいることなど、いったい誰にできようか。

(蓮實重彦)

 

 

#女優好きな人と繋がりたい 
#エレガンス
#映画女優
#女優志願
#女優志望
#最も偉大な女優
#イタリア女優
#イタリア映画
#アンナマニャーニ

#cinemaclassic 
#classicmovies 
#vintagemovie
#actress
#elegance
#attice
#annamagnani

#黄金の馬車
#ジャンルノワール
#ルノワール
#jeanrenoir
#renoir