本日5月4日は、オードリー・ヘップバーンの生誕95周年となります。
(1929年5月4日 - 1993年1月20日)
 それを記念してオードリーの作品を紹介しています。(過去の投稿の再掲となります)

 

『麗しのサブリナ』(1954)
共演 ハンフリー・ボガード、ウィリアム・ホールデン
衣裳 イーディス・ヘッド、ジヴァンシー ※アカデミー衣裳デザイン賞 (白黒部門)
撮影 チャールズ・ラング


【あらすじ】
大富豪ララビー家のお抱え運転手の娘サブリナが、主の次男デイヴィッドに恋心を抱くも、彼女の父は身分違いの恋を忘れさせるため娘をパリへ送り出す。
2年後、洗練された淑女に変身した彼女が帰国すると、デイヴィッドはすっかり夢中に。

 

上流社会を舞台にしており、いかにもパラマウント映画らしい作りの映画です。
(パラマウント映画なのに、なぜかボギーがいたり、前年フィルムノワールの傑作『復讐は俺にまかせろ』を撮った撮影監督チャールズ・ラングがいて不思議な感じがしますが)


この映画での「遅れてきた最後のスター」オードリーの瑞々しい魅力は、誰しも認めるところでしょう。

ショートパンツから素足を見せたり、サブリナ・パンツでの登場は、それまでのハリウッドエレガンスとは全く異質のものでした。すなわち、淑女や貴婦人の華麗さや、娼婦の優雅さとは、まるで異なっていました。

それは、若さの瑞々しい発露と、未成熟さと弱さが魅力だったのです。


















この映画に関しては、衣裳やメークアップについて述べないわけにはいかないでしょう。

サブリナパンツやサブリナネックライン、サブリナヘア・・・等々、彼女のファッション・アイコンとしての出発点となる映画でしょう。
『ティファニーで朝食を』と並ぶシンプルなシックネスが素晴らしいと思います。

なお、アカデミー衣裳デザイン賞をイーディス・ヘッドが受賞していますが、話題になったドレスやスーツはジヴァンシーのデザインのものによるようです。





いささか衒学的になりますが、撮影監督のチャールズ・ラングにも触れたいと思います。

チャールズ・ラングはこの後以下のオードリー作品を手掛けますので、オードリーにとって重要な存在です。

  • 『シャレード』(1963)
  • 『パリで一緒に』(1964)
  • 『おしゃれ泥棒』(1966)
  • 『暗くなるまで待って』(1967)
他にも、以下の映画でも女優たちを華麗に撮りあげています:
  • マレーネ・ディートリッヒ主演『真珠の頚飾』(1936)、『天使』(1937)
  • シルヴィア・シドニー主演『真人間』(1938)
  • クローデット・コルベール主演『ミッドナイト』(1939)
  • ジーン・ティアニー主演『砂丘の敵』(1941)
  • ジョーン・フォンテイン主演『旅愁』(1950)









この映画の美しいショットは、どれもオードリーの顎のラインを巧みにとらえたものです。

 

パリから戻り地元の駅に降り立ったオードリーは、立ちながら手を顎にそっと添えています。



ボギーと夜のテニスコートで接吻を交わすことになったときに、軽い驚きを見せたオードリーのかしげた首から顎へのライン。

これがこの映画で最も美しいショットのように思います。



こうした華麗なシーンがありながらも、この映画は、ホールデンを思いながら、まだ大人になれないオードリーの憂鬱が主題でした。

そんな物思いに沈むオードリーを捉えたショットには、素晴らしいものがあります。

特に、パリの下宿先でのショットでは、影がかかった顔で、憂いを帯びた美しい瞳が浮かびあがります。







それは『ローマの休日』というロケーション映画とは異なるスタジオシステムの素晴らしい技術による成果だと言えましょう。

じっさい、この撮影監督チャールズ・ラングの撮りあげたオードリー作品はいずれも、スタジオでの撮影によるものです:

  • 『シャレード』(1963)
  • 『パリで一緒に』(1964)
  • 『おしゃれ泥棒』(1966)
  • 『暗くなるまで待って』(1967)

その意味で、オードリーはこの作品の後、『ローマの休日』的な撮影とは決別していくのです。

 

例外は『ティファニーで朝食を』のオープニングシーンくらいでしょう。

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