クリスマス・ムービーを紹介しています。
カトリーヌ・ドヌーヴ主演の作品としては『8人の女たち』を取り上げました。
こちらは、その6年後に撮影された、ドヌーヴのクリスマス・ムービーです。
『クリスマス・ストーリー』(2008)
監督 アルノー・デプレシャン
共演 ジャン=ポール・ルシヨン、キアラ・マストロヤンニ、マチュー・アマルリック、エマニュエル・ドゥヴォス
撮影 エリック・ゴーティエ
【あらすじ】
フランス北部の街、ルーベ。
アベルとジュノンのヴュイヤール夫妻には、3人の子供がいた。
それから長い年月が経ち、それぞれに独立した3人の子供たち。
長女エリザベートは生真面目な劇作家。一方の次男アンリは一家の問題児。そして心優しい末っ子のイヴァン。
6年前、アンリと折り合いの悪かったエリザベートは、とうとう彼を家族から追放して絶縁状態となっていた。
そんなある日、母ジュノンはジョゼフと同じ白血病を宣告されてしまう。
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監督は、アルノー・デプレシャン。
『キングス&クイーン』(2004)同様に、ドヌーヴと、マチュー・アマルリックとエマニュエル・ドゥヴォスを起用しています。
更には、娘のキアラ・マストロヤンニも出演しており、『私の好きな季節』『危険な関係』以来の共演となります。
助演者にも恵まれており、夫役のジャン=ポール・ルシヨンは、この作品でセザール賞最優秀助演男優賞を受賞したのも分かるくらいに、素晴らしい名演です。
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ドヌーヴについては、いつもながらのドヌーヴの豊かな髪の美しさもさることながら、妻・母・祖母を同時に演じることが出来るのは、驚嘆に値します。
後期ドヌーヴの1つの系譜は、こうした家族のドラマです。
それは近作『愛する人に伝える言葉』まででも引き継がれています。
(そのほかには、狂気が宿るドラマ、そしてコメディです)
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最後に、クリスマスムービーとして、雪の素晴らしさについて触れないわけにはいきません。
撮影監督エリック・ゴーティエの素晴らしい雪を味わってください。
ドヌーヴとは、『ポーラX』『キング&クイーン』で撮影を担当し、2019年は是枝裕和によるドヌーヴ主演の『真実』を撮ることになります。
『クリスマス・ストーリー』で素晴らしいのは、彼ら(複数の人物)が一堂に会する場面より、例えば病身の母親カトリーヌ・ドヌーヴと精神不安定な息子マチュー・アマルリックとが、すでに薄暗く寒さのつのる中庭のベンチで、お前を愛しく思った記憶などまるでないわ、おれにも母さんから愛された記憶は微塵もないな、といった殺伐とした言葉を母子でしんみりと交わしあう場面である。
誰もが二人の存在感をいまでは生々しく受けとめているので、ここでの「演出」の巧拙などもはや気にならなくなっている。
だが、それにもまして素晴らしいのは、終幕まぎわにいきなり降り始める雪だ。
夜の暗さの中に音もなく舞う小さな雪片が、これまで感じていたあらゆる苛立ちをあとかたもなく消しさってしまうからだ。
これは、山中貞雄の『河内山宗俊』とともに、世界映画史でもっとも美しい雪だと自信をもって断言する。
(蓮實重彦)
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