来る3月9日はジュリエット・ビノシュの60歳の誕生日です。
(1964年3月9日生まれ)
それを記念して彼女の作品をご紹介します。
『レッド・バルーン』(2007)
監督 ホウ・シャオシェン
撮影 リー・ピンビン
共演 シモン・イテアニュ、ソン・ファン
※オルセー美術館開館20周年記念作品
【あらすじ】
7歳の少年シモンは、パリの空を漂う赤い風船を目にする。
手が届かず諦めるシモンだったが、赤い風船は彼に付かず離れず、ふわふわと浮遊し続ける。
そんなシモンの母、スザンヌは人形劇師。
新作劇の準備に追われ神経の休まらない彼女に代わり、台湾人留学生ソンがシモンの面倒を見ることに。
映画学生のソンは、やがてシモンを主役に映画「赤い風船」の撮影を開始する。
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伝説的な映画『赤い風船』へのオマージュ作品を、オルセー美術館が台湾(中華民国)の監督ホウ・シャオシェンに依頼するという背景をもった映画です。
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ここでのビノシュは、珍しくブロンドヘアで登場します。(この作品と『夏時間の庭』くらいでしょう)
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ビノシュは映画の中でも映画女優役が多いように思います。
(『コード:アンノウン』(2000)、『アクトレス~女たちの舞台~』(2014)など)
ホウ・シャオシェン特有の縦の構図のなかで、彼女は決してアップになることはなく、その横顔の美しさを見せることは多くはありません。一種殺伐とした雰囲気さえあります。
この映画の主役は子供(ホウシャオシェンが得意とする)と赤い風船ですので、ジュリエットがやや脇役的な扱いになるのも必然的なことでしょう。
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こうしたこともあり、この映画をつまらないと思う人も多いでしょう。
面白い出来事が起こるわけでもなく、パリのアパルトマンの賃貸に係わりいざこざが描かれます。
また、テーマである『赤い風船』の映画化も、いかにもな映画撮影があるわけではありません。
子供がふと見上げると、風船がここかしこで目に映るだけです。
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殺伐としたアパルトマンに、ピアノが運び込まれ、盲目の調律師がピアノを調律するあいだに、ビノシュに微笑みが戻ります。
そうした一瞬に、甘ったるい感傷と無縁のゆるやかな感動があります。
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