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『邂逅（めぐりあい）』(1939)
製作・監督・原案 レオ・マッケリー
共演 シャルル・ボワイエ、マリア・オスペンスカヤ
撮影 ルドルフ・マテ
【あらすじ】
大西洋航路の豪華客船に乗り合わせたパリのお洒落な紳士とアメリカ人の美しい歌手。
ふたりの恋は燃え上がり、6ヵ月後の再会を約束するが…。
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この映画が撮られた1939年は、ハリウッドが真の絶頂期にありました。
テクニカラーが浸透し始め、その初期の代表作『ロビンフッドの冒険』(1938)『風と共に去りぬ』(1939)が続々と公開され、ヒッチコックもイギリスから活動の拠点を移していきます。
加えて、ナチスの台頭によりヨーロッパからユダヤ人を中心に亡命がはじまっています。
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『邂逅』は、同年の『風と共に去りぬ』のようなテクニカラーも、大掛かりなセットもない慎ましい作品ですが、この映画は『風と共に去りぬ』に勝るとも劣らぬ、傑作中の傑作です。
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監督は、巨匠レオ・マッケリーです。
アイリーン・ダンとケーリー・グラントのコンビでのエレガントなコメディ『新婚道中記』でアカデミー賞監督を受賞しました。その後、再びアイリーン・ダンを起用した映画が本作です。
（レオ・マッケリーは、他には、マルクス兄弟の『吾輩はカモである』などのコメディや、小津安二郎が『東京物語』でリメイクした『明日は来たらず』のような家族ものなどを手掛けている、オールラウンドな監督です。）
出演者のシャルル・ボワイエは、マッケリーを高く評価しており、他の映画をキャンセルしてこの映画に出演したくらいです。
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本作は大ヒットしたこともあり、1957年に『めぐり逢い』としてセルフ・リメイクされました。
（主演は、デボラ・カーとケーリー・グラント）
更には、1994年にはアネット・ベニング、ウォーレン・ベイティ主演でリメイクされています。
（監督は グレン・ゴードン・キャロン。なんと、キャサリン・ヘップバーンも共演しています）
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撮影監督は、これまた巨匠のルドルフ・マテ。
彼の手によるデンマークの監督カール・ドライヤーの『裁かるゝジャンヌ』(1928)や『吸血鬼』(1930)などは真の傑作です。
この映画でも、船上の霧をはじめ、実に審美的なキャメラワークを見せています。
なによりも、鏡やガラスの使い方は本当に素晴らしいものがあります。
しかし、重要なのは、彼のヨーロッパ時代の作品とは異なり、これ見よがしの気を衒った撮影方法では、いささかもありません。
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素晴らしいシーンを紹介します。
アイリーンがニューヨークのホテルの部屋で一息つき、新聞でボワイエの婚約破棄のニュースを知り、ボワイエとの約束を思い出し、約束のエンパイヤステイトビルを見上げるために、バルコニーへと一足踏み出します。
そのとき、キャメラは、はじめ、アイリーンの見上げる顔を映しているのですが、アイリーンが、開閉式のガラスの扉の取っ手から手を離すと、風でも吹いたのか、そのガラスの扉が開き、アイリーンの横に収まり、そこに、エンパイヤステイトビルをアイリーンの横に浮かび上がるのです。
なんというロマンティックなキャメラワークでしょうか。
「揺れる想い」ということを表現した作品は、無数にありますが、これ以上に詩的で簡潔な表現を知りません。
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そして、言葉の真の意味で感動的なラストシーン。（以下ネタバレ）
クリスマスの日、ボワイエがアイリーンの部屋で、自らが描いた絵を探しあてたとき、その絵はスクリーンには映りません。
まず、ボワイエを左正面から映します。（左手に鏡があります）
そして、キャメラがすっと左へパンをすると、左にある鏡が大写しになり、絵を見るボワイエと、その絵が映りこみます。
その後、すっとキャメラが、また右にパンをして、ボワイエのバストショットへと移るのです。
キャメラは、たった10秒ほど滑らかに動くだけです。
その、自然でありながら、技巧に富んだ動きは、見事しか言いようがありません。
（続く）
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※（少しややこしいことを言いますと、観る者と観られる物とが通底する、その瞬間、それまでの切り返し中心のストーリーテリングから逸脱して、エモーションをより強くするのです。）