心して読まれよ。現代フランス映画の本質を書きました。
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『夏物語』(1996)
主演 メルヴィル・プポー
アマンダ・ラングレ
オーレリア・ノラン
グウェナウェル・シモン
撮影 ディアーヌ・バラティエ
【あらすじ】
バカンスをディナールで過ごす為にやってきたガスパールは、ここで恋人と落ち合い、約束のウェッサン島へ渡る予定を立てていた。
しかし落ち合うまでにはまだ時間がある。
そんな恋人を待つ間、彼はふとした事からクレープ専門店でバイトをする女学生マルゴと知り合う。
そして何度か言葉を交わすうちにふたりは自然とデートを重ねる様になるが……。
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ロメールの映画は、観る者を、ほんのわずかに卑猥な気分にさせます。
急いで付け加えますが、エロティックな意味ではないですよ。
フランスの美しい風景のなかで、男女の心理劇があって、その心理を読み解こうとする私たちの心は、一種卑猥としか言いようがないのです。
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リゾートや、美しい風景の中で、男女は、キスまではするのですが、そこから先の進展はあったりなかったり、破局があったりなかったり。
しかし、ベッドシーンが描かれることは稀ですし、DVまがいの暴力沙汰や、ましてや死人が出たりはしません。
事件というのが一切起こらないと言っていいでしょう。
かといって、心理の綾で観る者をクスクス笑わせるテレビ的な笑いも用意されていません。
それは、絵画や詩などを味わう高踏趣味でもないのです。
観る者は、その心理を読んで、その微妙なうつろいを、美しい映像とともに、味わうだけです。
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ハリウッド映画のようなセックス&バイオレンスでもなければ、
テレビのような下品なシチュエーションコメディでもなければ、
美しい映像や響きを楽しむアートでもないのです。
その中間地帯で、ロメール映画を楽しんで悦に入る私たちは、自分がセンスがいいと思ってしまいます。
それが何とも言えず、ちょっとだけ卑猥なんですね。
何度も言いますが、性的な意味ではないですよ。
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現代フランス映画の最高峰は、ロメールとガレルです。
(と言ってもロメールは2007年に最後の作品を撮って死去しています)
ロメールの映画では、男女は、自然光の中でアムールを語り合い、バカンスや生活を楽しんでいます。
私たちは「いやいや、"おフランス"趣味なんて恥ずかしい」と思いつつも、
少しだけ、繊細な心理劇を味わうことが出来る自分を見出します。
そうした優越感が、卑猥なのです。
でも、その卑猥さの快楽に抗うことは難しいですよ。
何を言っているか分からないかもしれませんが、ロメール映画を観ればわかります。
いえ、そうとしか説明できないのですよ。
それが、21世紀の映画の到達点です。なんだそんなもの?と思われるかもしれませんが、そんなものですよ。
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『夏物語』は、そんなロメール映画の典型です。
また、3人の女の間で、男が誰と島へ旅行に行くかで悩み、困り果てるという話です。
結末は、相変わらずポカーンとするような結末なのですが、
その男女の心理の小さなさざなみを味わえます。
その3人の女優を紹介します。
※なお、主演格のアマンダ・ラングレは、傑作『海辺のポーリーヌ』のポーリーヌ役で弱冠15歳でした。
14年後の29歳での再出演です。
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