本日5月12日は、キャサリン・ヘプバーンの生誕117周年です。
(1907年5月12日 - 2003年6月29日)
それを記念して、彼女の作品を紹介します。


キャサリン・ヘップバーンはアメリカ映画協会の「最も偉大な女優50選」第1位に輝いた女優です。

なお、ベスト10は以下の通りです:

 

1位 キャサリン・ヘップバーン Katharine Hepburn
2位 ベティ・デイヴィス Bette Davis
3位 オードリー・ヘップバーン Audrey Hepburn
4位 イングリッド・バーグマン Ingrid Bergman
5位 グレタ・ガルボ Greta Garbo
6位 マリリン・モンロー Marilyn Monroe
7位 エリザベス・テイラー Elizabeth Taylor
8位 ジュディ・ガーランド Judy Garland
9位 マレーネ・ディートリッヒ Marlene Dietrich
10位 ジョーン・クロフォード Joan Crawford

 


日本では同じヘップバーンでも、オードリーの人気が圧倒的ですが、海外では、ヘップバーンと言えば、キャサリンを挙げる人の方が圧倒的に多いです。

1979年の『結婚しない女』(監督 ポール・マザースキー)という映画では、登場人物たちはこんなセリフを口にするくらいです:

 

ジェーン・フォンダもバーバラ・ストライサンドも小物よ。
キャサリン・ヘプバーンやベティ・デイヴィスに比べれば。

 



さて、本日は映画史上最もエレガントな映画を紹介いたします。

 

『フィラデルフィア物語』(1940)
監督 ジョージ・キューカー
共演 ケイリー・グラント、ジェームズ・スチュワート
撮影 ジョセフ・ルッテンバーグ
製作 ジョゼフ・L ・マンキーヴィッツ

【あらすじ】
フィラデルフィアの上流社会の令嬢トレイシーはジョージとの結婚を目前に控えていた。
それを知って、二年前に彼女の我がままとプライドの高さに耐えかねて出ていったデクスターが、雑誌記者のコナーと女カメラマンを連れてやって来る。
実は邸の主人は、浮気相手のところへ行っていて式にも呼ばれていない有様で、体面を重んじる一家は、記者の手前、何とか取り繕う。
トレイシーに未練のあるデクスターは静かなる結婚妨害を試みるが……。

 


スクリュー・ボールコメディの傑作です。

※スクリュー・ボールコメディ:
1930年代なかばから1940年代前半にかけてハリウッドで盛んにつくられた。
「スクリューボール」とは「変わり者」の意。スクリューボールな男女の破天荒な行動が大騒ぎを巻き起こすもので、基本は男女が最後に結ばれるロマンティック・コメディ。

1956年にグレース・ケリー主演で『上流社会』としてリメイクされているので、それでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。


映画史上最もエレガントな作品には、私は、この作品と、ディートリッヒ主演の『天使』(1937)を選びます。
全てのラブコメは、この作品の劣化コピーではないかとさえ思えてきます。
真に大人な映画を愛する方々に、ご紹介いたします。

 

この『フィラデルフィア物語』にせよ、『天使』にせよ、若い方にはすぐ理解できない映画かと思います。

ストーリーがあまりにも早く展開するので、ついていけないかもしれません。

また、キャサリン・ヘップバーンにせよ、ディートリッヒにせよ、彼女たちが展開するエレガンスは、私たちがエレガンスという言葉から想像するものとは違っています。

 

とりわけ、キャサリン・ヘップバーンは、現代の価値観からは美女とはくくられづらい存在でもあります。

彼女の大きい口には好き嫌いが分かれるかもしれません。

そうしたことは仕方がないことだと思いますので、それを説得したいとは思いません。

 

真に成熟した方だけがわかる作品だと思います。

クラシックなものの良さとはそうしたものでして、手っ取り早く理解できるものでもないと思います。


監督は、女優を撮らせたら、ハリウッドNo.1のMaster of Elegance ことジョージ・キューカーです。

 

ジョージ・キューカーが手掛けた女優映画の傑作 [年代順]

  • グレタ・ガルボ主演『椿姫』(1937)
  • ノーマ・シアラー、ジョーン・クロフォード主演『女性たち』(1939)
  • ヴィヴィアン・リー主演『風と共に去りぬ』(1939) ※途中で降板
  • イングリッド・バーグマン主演『ガス燈』(1944)
  • ジュディ・ガーランド主演『スター誕生』(1954)
  • マリリン・モンロー主演『恋をしましょう』(1960)
  • ソフィア・ローレン主演『西部に賭ける女』(1960)
  • オードリー・ヘプバーン主演『マイ・フェア・レディ』(1964)
  • アヌーク・エーメ主演『アレキサンドリア物語』(1969)
  • ジャクリーン・ビセット主演『ベスト・フレンド』(1981)
なお、キャサリン・ヘップバーン主演の作品も6本撮っています[年代順]:
  • 『若草物語』 (1933) 
  • 『男装』 (1935)
  • 『素晴らしき休日』 (1938) 
  • 『火の女』 (1942)
  • 『アダム氏とマダム』 (1949)
さて、このハリウッド史上の傑作については、蓮實重彦以上の賛美が見つからず、以下に引用いたします:

 

この種のコメディの傑作というべきジョージ・キューカー監督の『フィラデルフィア物語』は、こうして結婚式の前夜という時空に登場人物の全員を投げこむことになるのだが、富豪令嬢がキャサリン・ヘップバーン、離婚した前夫がケイリー・グラント、雑誌記者がジェームス・スチュアートだと知れば、1940年度のこのMGM作品が、どれほど豪華で、しかし洒脱かつ繊細なロマンチック・コメディたりえているか、すぐさま見当がつくだろう。

 

しかも、ハリウッドのいわゆるロマンチック・コメディなるものが、抒情的恋愛メロドラマからは限りなく遠い、ときにはセックスウォー・コメディとも呼ばれる乾いたエロチシズムに基づくものだといったアメリカ映画の常識を知っているなら、キャサリン・ヘップバーン、ケイリー・グラント、ジェームス・スチュアートという3人の間にどんなセックスの闘争が進行するかに胸をときめかせるに違いない。

 

実際、男女間の愛情のもつれを描かせたら、ジョージ・キューカーの右に出る者は存在しないのである。

 

こうしたコメディの常として、公式の婚約者はあっさり無視される。

 

しかも、結婚相手のみじめな敗退に何の心の痛みも感じないものだけがヒロインたる資格を獲得する。

 

だからここでのキャサリン・ヘップバーンは、婚約者から隠れることもせず雑誌記者スチュアートを誘って水着に着かえ、自宅のプールで飛板とび込みを優雅にやってのけるかと思うと、抜き手を切りながら前夫ケイリー・グラントとの新婚旅行の甘美さを思い出してうっとりと瞳を湿らせ、あろうことか、泥酔して「オーヴァー・ザ・レインボー」をどなりまくる雑誌記者の腕に抱かれたままバスローブの裾から太股をのぞかせながら独身生活最後の夜を過ごすことになる。
 

このあたりになると、翌朝、結婚式が無事に挙げられるだろうなどとは、もう誰も信じてはいない。

 

(...)不意に複数の男たちにとり囲まれることになった富豪令嬢ヘップバーンの生きいきとしたさまはどうだろう。

 

胸の隆起を積極的に欠いた彼女が水着をまとい、プールの脇でその姿態を堂々と陽光にさらしてみせるさまは、もうそれだけで男たちに妙な気を起させるに充分なのだけれど、それを優雅にフィルムにおさめるジョージ・キューカーの大胆な繊細さには思わず日もとがほころんでしまう。

キャサリン・ヘップバーンがジョージ・キューカーと組んだときの魅力はアメリカ映画の貴重な財産である。

 

『男装』では断髪姿でタキシードまで着てみせたし、『素晴らしき休日』では、イヴニング・ドレスのまま軽業まがいの曲芸をやってのけたし、『フィラデルフィア物語』では、婚約者を地面にあびせ倒すかとみると、細い裸足のつま先でテーブルをひっくり返し、ゴシップ雑誌のキャメラマンのキャメラを破壊してしまう。

つまり、ラブ・コメディにあってはこうした軽々としたアクションの連続が心理を涼しい顔で無視しなければならないのである。それは一種の活劇なのである。
(蓮實重彦)

 

 

 



 

 










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