本日5月6日はマレーネ・ディートリッヒの没後32周年です。
(1901年12月27日 - 1992年5月6日, 90歳没)

それを記念して、ディートリッヒの作品を紹介しています。
(以前の投稿の再掲となります)


こちらは、ディートリッヒのベストNo.2です。
Amazonプライムで無料で視聴可能の作品でもあります:

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09KQGNZ6M/ref=atv_dp_share_cu_r

 

『天使』(1937)
監督 エルンスト・ルビッチ
共演 ハーバート・マーシャル、メルヴィン・ダグラス
撮影 チャールズ・ラング

【あらすじ】
英国外交官パーカー卿の夫人マリアは、夫の出張中、内緒でパリに赴き、旧友のロシア大公妃の怪しげなサロンに顔を出す。
そこで出会ったアンソニーと食事を付き合うが、名前を訊かれても答えずにそのまま去る。
ロンドンの昼食会でパーカーは旧友アンソニーに会い、彼の“天使”の話を聞く。
それが自分の妻であるとは知らずに……。
そして、夫妻の邸に招かれたアンソニーは、気まずい会話を交わしながらも、マリアと再会の約束を取り付ける……。

 

まず、ディートリッヒの潤んだ瞳が、尋常ではありません。
いにしえの少女漫画か、フランス人形かと思う程、人工的で完璧な造形美を観ることができます。
映像に事後的に加工でもしたのかと思うほどであり、退廃的なディートリッヒはここにはいません。

 

撮影監督は、その後オードリーやマリリンも手掛けることになるチャールズ・ラング。
ロマンティック/ハイキー/半透明で知られる彼のタッチが十二分に生かされています。







そして、トラヴィス・バントンによる衣裳のシックさ。
黒をモチーフとした衣装の、首元を飾る金や白の装飾の優美さ。






更に、共演のハーバート・マーシャルやメルヴィン・ダグラスの、柔らかいダンディズムも、ディートリッヒと最高のケミストリーを醸成しています。
特に、ハーバート・マーシャルの声の色気は、驚嘆に値します。




ところで、監督のルビッチはドイツ出身なので、ディートリッヒとは関係が良好かと想像されるのですが、
実はそうでもなかったようで、彼女自身のこの映画に対する評価は残念ながら高くありません。

 

しかし、この作品は、ディートリッヒのベストに入る作品であるだけでなく、映画史に残る傑作です。

すなわち、ディートリッヒがエレガントであるだけでなく、作品がエレガントなのです。
映画史上最もエレガントな作品としては、私は、この作品と、キャサリン・ヘップバーン主演の『フィラデルフィア物語』(1940)を選びます。 



 






トリュフォーも「ルビッチは映画のプリンスであった」という小文の中でこの作品を絶賛しています。
男2人と女1人との三角関係の食事のシーンを、才能のない監督なら一種の修羅場に仕立て上げるであろうその食事のシーンを、ルビッチは、召使やコックの厨房でのやり取りで描き切っています。

映画のエレガンスとは、こうしたことを指します。
映画のエレガンスは、単に、美しい男女や華美な衣装やセットのことだけではないのです。




最後に蓮實重彦による素晴らしい批評を、長文ですが転載します:

 

このシチュエーションは、誰もが取り乱し、ことと次第によっては声を荒立てることさえあっても不思議でない。だというのに、ルビッチにあっての夫は、顔色ひとつ変えようとはしない。マレーネ・ディートリッヒを妻に持つ外交官ハーバート・マーシャルの素晴らしさは、表情を変えないことのサスペンスともいうべきものを、端正な身振りとともに最後まで演じ切っているところにある。

妻を奪われそうな彼がいささかもとり乱さないのは、嫉妬を知らぬからではないし、ましてや自信があるからでもない。ハーバート・マーシャルが見せる余裕の表情は、ほとんど世界の崩壊を垣間見てしまった者の深い諦念が到達した透明さにほかならない。

だが、その装われた平静さは、百戦錬磨の色事師メルヴィン・ダグラスをも虜にしてしまった自分の妻の、たぐい稀な性的魅力に対するつきぬ賛美の念によっても澄みきったものとなる。そんな女性の夫たりうることの誇りと当惑とがいつ崩れても不思議でない均衡を保っており、復讐だの絶望だのといった心の動きだけはどこまでも排するこのあやういバランスこそが、ルビッチ的なエロチシズムにほかならない。

男のもとに走ろうとする妻に向かって言葉少なに声をかけ、あとは振り返りもせずにその場から去ってゆくハーバート・マーシャルの後ろ姿でしめくくられる『天使』のラスト・シーン。

ディートリッヒの一瞬の心変わりを画面で説明したりはせず、ルビッチは、彼女が無言のまま歩調を早めてそのあとを追うさまを、短いロング・ショットで見せるだけだ。

後ろ姿の二人が、視線はいうまでもなく、ましてや言葉さえ交さずに退場する瞬間に物語を語り終えるルビッチを、洒落ているだの、粋だのといって「通」ぶるのはやめにしよう。

離れたままの男女の人影が流れるような動きで戸外へと歩み出るあっけないほど短いショットに、映画が露呈されている。そのことに、改めて心から驚かねばなるまい。

(蓮實重彦)

 

 



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