本日12月14日は、アンナ・カリーナの没後6周年です。
それを記念して、アンナ・カリーナのゴダール作品を紹介します。
(1940年9月22日 - 2019年12月14日死去, 79歳没)

 


アンナ・カリーナは、1940年9月22日にデンマークのコペンハーゲンに生まれ、フランスで活躍した女優です。
ガルボ、バーグマン、ツァラー・レアンダーに続く、北欧美女です。

(近年は、スウェーデンの血を引くエヴァ・グリーンがいます)
当初はフランス語がたどたどしかったのですが、フランスのヌーヴェル・ヴァーグ期(1960年代)を代表する女優となりました。
彼女のキャリアは、監督ゴダールとの7つのフィルムなくしては語れないでしょう。

 

映画史には監督と女優との神話的なカップルが3つある。
リリアン・ギッシュとグリフィス、バーグマンとロッセリーニ、そしてアンナ・カリーナとゴダール。
ゴダールはアンナ・カリーナの翳りを帯びた奔放さをパリの風景の中に開放した。
それによって、映画は生きることの同義語になった。
ゴダールとアンナ・カリーナの出会いがなければ、映画はいまなお縁日の見世物の域を出ず、テレビより退屈なメディアであっただろう。

(蓮實重彦)

 

 

『気狂いピエロ』(1965)
監督 ジャン=リュック・ゴダール
共演 ジャン=ポール・ベルモンド、サミュエル・フラー
撮影 ラウール・クタール

【あらすじ】
金持ちの妻と結婚して退屈な毎日を送っていたフェルナンは、再会した昔の愛人マリアンヌと一晩を過ごす。
翌朝、部屋には首に鋏を突き立てられた男の死体があった。
「訳は後で話すから」と言うマリアンヌに手を取られてフェルナンドは彼女と逃避行を始める。

ある日、オディールが叔母の家で愛人が隠している大金を見たことから3人は強奪計画をたてるのだが……

 


この映画は、パリから地中海への南下の物語です。

カリーナは、ピエロことジャン=ポール・ベルモンドに言います。
「気狂い、気狂い。あなたは直線をまっしぐらに、果ての果てまで行けばいいのよ」

そして、たどり着いた地中海には、氾濫する透明な光のまばゆいまでの反映がありました。

 

フェルディナンが無意識に希求する海は南になければならず、海辺の光景は空と水の青さを裸の色彩そのものに還元しうるものでなければならず、またその水が、彼の存在を最終的には拒絶するものでもなければならない。

(...)ラウール・クタールがイーストマンカラーで捉えた大型画面が追い続けるゴダールの男たちの歩みを止めるも
のは、湿って冷たく、人を溺死へと誘う液体の拡がりではなく、あたりに氾濫する透明な光りの、まばゆいまでの反映なのだ。

(...)『軽蔑』の夫ポールのカプリ島での辺巡は、まさにゴダールの言葉どおり、「『リオ・ブラボー』の人物を演じようとする『マリエンバート』の人物」が襲われるであろう、あまりの透明さ故のめまいとして理解するしかない。

その透明さとは、あのカリフォルニアの空のそれであり、またハワード・ホークスの仕草が描く軌跡の透明さでもあるわけで、だとするなら、『気狂いピエロ』のフェルディナンの直線状の南下は、裸の真実への二律背反的な志向に支えられながら、走ることの不可能性を証明すべく遂行されていたことになるだろう。

(...)ここで重要なのは、『勝手にしやがれ』のミシェルが行きそこなったコーロッパの南を目指して、ゴダールの作品のフォルムの内的力学に促されて走りだしたフェルディナンが、海というより、もはや青そのものというはかはないものの圧倒的な顕在ぶりに出あって立ちどまったという点なのである。

 

(蓮實重彦)

 


壮絶なラストシーンのあとのエンディングシーンでのナレーションは、映画史に残る名高いものです。
(アルチュール・ランボーの引用)

ここには、文学コンプレックスがいささかも感じられない、映像と言葉の衝突があります。

 

また見つかった。

何が。

永遠が。

太陽と溶け合う海が。


  Elle est retrouvée. 

  Quoi ? 

  L'Éternité.
  C'est la mer allée. Avec le soleil.

 


この感動的な、光にみちた旅の始まりにあったのは、実は、翳りを帯びた、アメジスト色とグレーの交じり合った、アンナ・カリーナの瞳だったのです。

女と、車と、太陽と海と、狂気とが交じり合った、奇跡のような映画です。

 

ただし、この映画のあとのゴダールは、そうした奇跡に恵まれることは少なかったように思います。

素晴らしい作品もいくつかあるのですが、少なくとも女優が素晴らしく撮れていると思われるのは、1980年代の『カルメンという名の女』まで待たないいけないように思います。








 



 








 

※なお、タイトルの「気狂いピエロ」とは、犯罪史上名高い実在の人物の名前だったそうです。

 本名ピエール・ルートレルと言い、ピエロはピエールの愛称です。

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