本日9月28日は、ブリジット・バルドーの生誕89周年です。

(1934年9月28日-)

それを記念して、彼女の作品を紹介いたします。

 

『軽蔑』(1963)
監督 ジャン=リュック・ゴダール 
共演 ミシェル・ピッコリ、ジャック・パランス、フリッツ・ラング

撮影 ラウール・クタール
音楽 ジョルジュ・ドルリュー
製作 カルロ・ポンティ他

【あらすじ】劇作家のポールのもとに、辣腕プロデューサーのプロコシュがシナリオの書き直しを依頼しに来た。
フリッツ・ラングが監督する新作『オデュッセイア』があまりにも難解すぎるからだ。
打ち合わせの後、プロコシュの自宅へ招かれたポールと妻カミーユだったが、後からやって来たポールにカミーユの態度は冷たい。
彼女が何に対して怒っているのか、二人の仲は自宅へ戻っても変わらない。
あんなに愛し合ったのに、ベッドを共にする事も拒絶するカミーユ……



1950年代に、ロジェ・ヴァディム作品でのグラマラスな魅力で、一気にスターとなった彼女が、1960年代には、ラブコメディーではない数々のシリアスな作品に出演するようになります。
その代表的な作品が、こちらです。
 
この作品は、ゴダール唯一のテクニカラー作品です。
エーゲ海に浮かぶカプリ島で、エーゲ海にふさわしいテクニカラーで、この上なく美しく撮影されています。






単に美しいばかりではなく、ギリシア時代の彫像が映り込み、観る者をギリシア悲劇に世界へといざないます。
その意味で、この作品は「現代のギリシア悲劇」と言っていいでしょう。
 

ゴダールの1960年代の映画には、アンナ・カリーナが多く主演しています。
しかし、この「現代のギリシア悲劇」の『軽蔑』には、翳りのある瞳をもった、北欧生まれのアンナ・カリーナより、赤ん坊のような純粋無垢さと美しい肉体をもったB.B.がふさわしいのです。





急いで付け加えますが、「美しい肉体」と言っても、B.B.は下品なヌードなどとは無縁です。
美しい背中やヒップラインで、官能的な肉体美をフィルムに残しながらも、B.B.が演じるのは、愛と、その終わりにある悲劇です。








今日ここで触れておきたいのは、映画史に残る美しい愛の語らいです。
映画の冒頭で、ベッドにヌードでうつ伏せに横たわるBBと、並んで横たわるピッコリ。
2人の会話に、ジョルジュ・ドルリューのセンチメンタルな音楽がゆっくりと重ねられます。

やがて軽蔑の対象となるはずの夫ピッコリに向かって、B.B.は、自分の乳房と乳首とのどちらが好きかと尋ね、
ピッコリは「わからない、両方とも好きだ」と答える。

その後に、B.B.は「肩はどう? 口は? 目は? 鼻と耳は?」と続けます。








このシーンがどう素晴らしいかを説明いたします。長くなりますが、ご容赦ください。


ハリウッド映画の黄金時代に、あらゆる最高のラブシーンが撮られてしまいました。
感動的なセリフを、美しい男女が、最高のセットと音楽で囁きあう時代は、1963年の時点では、もう終わっているのです。

そんな1960年代にゴダールが、新たに撮ることができたラブシーンは、美しい「リズム」としてのラブシーンです。


BBとピッコリが交わすセリフの意味は、正直よくわかりません。
その意味で、セリフの意味はいったん宙吊りにされているのです。

そんな意味が宙づりになった言葉が、映像と音楽と、実験的に繋げられたとき、ある種のリズムが生れ、いままで味わったことのない、映像体験が残ります。

下手な素人がやったら1,000回に999回まで失敗するであろうこうした実験こそが、ゴダールのやった発明でした。

ゴダールとBBによって発明された最高のラブシーンが、この『軽蔑』の冒頭のシーンです。
美しい、愛の「リズム」を是非味わってください。

 

ゴダールの人物たちは、しばしば2つのものの間で迷うといわれる。

だがそれは、二者択一を強要されたものの苦悩ではない。

彼らは、確かに、「わからない」の一語をつぶやいて未決断の状態に落ちこむ。

たとえば『軽蔑』のブリジット・バルドーは、やがて軽蔑の対象となるはずの夫ミシェル・ピッコリに向かって、自分の乳房と乳首とのどちらが好きかとたずねる。

「わからない、両者とも好きだ」というのがその答えである。

そのとき問題になるのは、隙間の拡がりなのだ。

そしてはとんどのゴダール的な人物は、その拡がりの中に自分を置く。それが隙間の悲劇性にはかならない。

そしてゴダール的な問題とは、「どうして」と「だって」のわずかな隙間をおし拡げるゆるやかな運動、つまリスローモーションとして生きられることになるだろう。
(蓮實重彦)

 

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