9月18日のグレタ・ガルボの生誕119周年を記念して、ガルボの作品をご紹介しています。
(1905年9月18日生誕 - 1990年4月15日死没, 84歳)
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映画史上最も造型的に完璧な女優は、おそらくガルボだと思います。
ガルボは、1924年 スウェーデンでサイレント映画でデビューし、
翌年招かれて、マウリッツ・スティッレル監督と共に、アメリカへ渡り、1926年 ハリウッドでデビューします。
16本の映画に主演し、1941年に引退しました。
(生涯結婚しませんでした)
なお、スウェーデンでは100クローナの紙幣にもなっております。
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グレタ・ガルボは、ディートリッヒと並ぶ、サイレント期~トーキー時代の北欧系美女です。
その北欧系の造形美の系譜は、そのあと、イングリッド・バーグマン、アンナ・カリーナに引き継がれます。
白黒映画にしか登場しなかったという点で、同じクール・ビューティのグレース・ケリーと世代が違います。
『クリスチナ女王』(1933)
監督 ルーベン・マムーリアン
共演 ジョン・ギルバート
撮影 ウィリアム・ダニエルズ
【あらすじ】
戦死したスウェーデンの国王に代わり、わずか6歳で王位を継承したクリスチナ。
執権オクセンスティールナ伯爵を補佐に、男勝りに育ったクリスチナは30年戦争を終結させ、平和をもたらした。
常に男装をし、立派に政務を果たす彼女が成年に達したとき、結婚話が持ち上がる。
そんなある夜、お供を一人引き連れ狩猟に出掛けたクリスチナは、吹雪に遭い、とある村の宿に泊まることに。そこで相部屋になったスペイン特使のアントニオと恋に落ちるが……。
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スウェーデン生まれのガルボが、スウェーデン女王を演じた作品です。
ガルボは、男装の女王として、威厳を放つ様子が魅力的です。
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造型的に完璧に近い美女が女王を演じるのですが、部屋では本を読み、朝になると雪で顔を洗う、ガルボの普段のなにげない様子が、一つ一つ美しく映えており、女王の崇高さというよりも、一人の人間としてのガルボの存在感が伝わってきます。
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撮影監督は、名匠ウィリアム・ダニエルズ。
シュトロハイム以来の無声映画時代から活躍し、『明眸罪あり』(1926)以来、ほぼ全てのガルボの作品を撮り続けています。
戦後は監督アンソニー・マンとのタッグが際立っています。
ハリウッドで製作された作品ですが、雪の降るスウェーデンの景色、船出の舞台が夢のように美しく撮られています。
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この映画で、最も感動的なシーンは、初めて愛した男性ジョン・ギルバートと夜を過ごすシーンです。
ガルボは、ふとしたきっかけでジョン・ギルバートと恋に落ちて一晩過ごした感動のあまり、その思い出の部屋を記憶に刻み込むために、音楽に合わせて、部屋の家具をひとつひとつ触っていくのです。
画面にみなぎっていながらも、決してあられもなく露出することのない官能性こそ、ガルボの魅力です。
それは、崇高な女王としてではなく、一人の人間の存在感があってこそなのです。
傑作は寝室の場であった。
監督のマムーリアンは、オペラの教養があり、踊りの振りつけの知識を持っていたので、音楽に合わせて演技することを命じた。
彼女がまるでそこがエデンの約束の地であるかのように部屋を歩き回り、そこにあるいろいろなものにふれていき、ジョン・ギルバートがそれを驚いたように、なかば魅せられて眺めているところで、ガルボがリズムに合わせて動くようにメトロノームを持ち込んだ。
彼女は手を、愛の泉を探す神の杖であるかのように使い、壁をなで、糸車を回す。
ベッドに身を投げ、顔を、シーツと毛布に、まるで恋人の胸であるかのように押しつける。
それから大きなベッドの上で雪ゾリのように身をすべらせて、寝台の柱に身体を押しつける。
それは当時のハリウツドがあえて試みた、ほとんど性的洸惚に近いものであった。
音楽が止まった瞬間、彼女はうめく。
「私はかつて幸福を想像していた。それはあなたが想像できないような幸福だ」。
彼女の演技をあっと言わせるものにしているのは、彼女がそのシーンで悲しみと喜びを同時に演じていることである。
彼女の洸惚を保っている言葉(「いつの日か、私はこの世で大いなる生を生きるだろう」)は、言い表わせないほどの喜びのさなかに、ある喪失と孤独を彼女に覚悟させるなにものかの低音をじわじわと広げてゆくのである。
(アレキサンダー・ウォーカー著『ガルボ』)
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私たちは、俳優をはじめとしたアーティストたちを、雲の上の崇高な存在やスターとして扱うべきではありません。
私たちと彼・彼女たちの間に絶対的な差異はありません。
誰もが、ただ単に異なっており、誰もが個性があるだけです。
(そして、彼・彼女たちも、そのように扱われたいと思っているはずなのです。本音を聞いたわけではないので、想像です)
等身大の存在としての美しさこそが、映画をはじめとしたポピュラー文化の基本的条件だと私は考えます。
当ブログでは、女優のエレガンスを論じるものですが、エレガンスとは崇高さとは異なる概念であり、等身大の存在としての美しさがエレガンスにとっての基本的条件だと考えます。
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