映画『地下鉄のザジ』基本情報
1960年/フランス/93分/カラー
監督:ルイ・マル
出演:カトリーヌ・ドモンジョ、フィリップ・ノワレ、カルラ・マルリエ ほか
『地下鉄のザジ』 【6-4】
友人シャルルと3人で、エッフェル塔を訪れるガブリエルおじさん。リハーサルの時間を気にしつつ、地下鉄がストの日はタクシーが拾えないので、ザジを抱えて車の大渋滞のなかを縫って歩く。その渋滞に巻き込まれている一台が、紫ずくめの衣装に身を包んだ未亡人が乗る、これまた薄紫色の“シムカ 8 スポール カブリオレ”だ。 “SIMCA”と聞いて、それが嘗てフランスに存在した自動車メーカーとすぐ判る人も、徐々に減ってきているだろう。
創立者のアンリ・テオドール・ピゴッツィは、フランスにおけるフィアットの代理店を営んでいた人物で、1934年にフィアット車のライセンス生産を行う“シムカ”を設立した。トポリーノ、つまり初代フィアット500ベースのシムカ5を送り出し、スモールカー市場で成功を収める。 そして第二次大戦後、初のオリジナル・モデルであるアロンド(モノコック・ボディに、前輪独立懸架)を1951年に発表。中身はフィアット系ながら新しさのあるデザインで大ヒットし、フランス第4位メーカーの地位を固めた。しかしその後、1963年には、シムカはクライスラーに買収されてしまう。
どうりで本作には、パリの道路にシムカ・ブランドが溢れているわけだ。クライスラーに買収される前の、シムカに勢いのあった時代の映像が見られる。シムカの歴史は、フォード・フランス、タルボ(英国ではタルボット)、クライスラーにマートラも絡み、最後はプジョー傘下になるので、変遷がややこしい。
“続く”