映画『男と女 人生最良の日々』基本情報

2019年/フランス映画/90分/カラー・モノクロ

監督:クロード・ルルーシュ

出演:アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、モニカ・ベルッチ ほか

 

 

 

『男と女 人生最良の日々』 【5-4】

 

 

 Toute Petite Voiture(=very small car)、つまり「とっても・ちっちゃい・クルマ」の頭文字を取って、TPVと名付けられたこのプロジェクトの開発に取り組んだのは、トラクシオン・アヴァンの生みの親でもあるアンドレ・ルフェーブルを中心とする設計チーム。試作第1号車が完成したのは1937年。さらに1939年には250台のプロトタイプが製作されたが、この時すでにヨーロッパは戦火に包まれており、シトロエンの首脳陣はこのプロジェクトの秘密を守るために、プロトタイプ1台を残して、すべてを潰してしまった。これはシトロエン版の国民車構想といえるものかも知れない。農業大国でもあるフランスの、農民のための、農民車構想か。

 

 ルフェーブルたちは戦時中も開発を続け、戦争が終結した3年後の1948年、TPVは「2CV」という名を与えられ、パリ・サロンでデビューする。低価格の車ながら、そこには柔らかな足回りを実現する関連懸架サスペンションをはじめとする独自のアイデアが、随所に盛り込まれていた。ちなみにTPVプロトタイプは、フロントからボンネットにかけての処理がアヴァンギャルドで、軍用車っぽさもあり、市販された牧歌的な「2CV」よりも突き抜けたデザインです。

 

 「2CV」は実にロングライフな商品で、フランス国内で1948年から1988年まで造られた。そののちポルトガルで1990年までは生産されたので、90年代まで生き続けたことになる。今でも80年代のものから90年式(91年式という表示のものもある)の車両が、日本の中古車ショップで売られている。荒れた天気でない日に、元気に走る姿を、日本の路上でもたまに見かける。

 

“続く”