第92回アカデミー賞で、作品賞を含む6部門にノミネートされ、結果的には、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞。非英語作品(英: Foreign-Language Film)の作品賞受賞は、史上初めての快挙である。
さらにはそれに先立つ第72回カンヌ国際映画祭でも最高賞であるパルム・ドールを韓国映画として初めて受賞している。アカデミー作品賞とカンヌの最高賞を同時に受賞した作品は「マーティ」(1955年)以来、実に65年ぶりのことである。
だから本作は、ごく控え目に言っても、「映画史上稀に見る成功作」ということになるだろう。
口コミ評価が高かったので、観に行こうと思いつつ果たせずにいた。上映館が意外と少ないのだ。それでも2/10(月)に「ユナイテッドシネマとしまえん」の座席を予約したら、その直後にオスカー受賞のニュースが流れた。なかなかいいタイミングだった。ユナイテッドシネマとしまえんは東京23区内にあるとは信じがたいほどの辺鄙な映画館なのだが、オスカー受賞効果なのか結構混んでいた。昼のニュースの後で鑑賞希望者がどっと増えたのか?ともあれ今後は一気に拡大上映されるので、多くの人が観に行くことになるだろう。
舞台は韓国のソウル。父ギテク(ソン・ガンホ)、母チュンスク(チャン・ヘジン)、息子ギウ(チェ・ウシク)、娘ギジョン(パク・ソダム)のキム家の4人は、汚い半地下のアパート暮らし。全員失業中で、低賃金の内職などでなんとか食いつないでいる。
ある日、ギウは、友人の頼みで、IT企業の社長パク・ドンイク(イ・ソンギュン)の娘ダヘの英語の家庭教師をやることになった。
ギウは高級住宅地にあるパク社長の大邸宅を訪れ、家政婦のムングァンに迎えられる。ギウはパク夫人(チョ・ヨジョン)の信頼を得て、英語の家庭教師の仕事が決まる。
それを皮切りに、後日、芸術療法士を装って、妹のギジョンがパク家を訪れる。人の良いパク夫人は疑うことを知らず、息子のダソンに絵を教える先生として彼女を雇う。
そのギジョンは奸計を用いてパク家の運転手を追い出すことに成功。そして、その後釜に座ったのは父ギテクであった。
そして最後の仕上げとしてパク家に仕える家政婦のムングァンをも追い出し、新しい家政婦として母チュンスクが家政婦として雇われることになる。こうして、キム家の4人は全員が家族であることを隠しながら、パク家への就職に成功した・・
文句なしに面白かった。ただ、確かに面白いのだけれど、正直、アカデミー作品賞に相応しいとは思えない。僕は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」や「ジョーカー」の方が好き。作品の出来もさることながら、韓国は所謂ロビー活動も得意なのでは?と勘ぐってしまう。
前半のテンポの良い展開は秀逸。前任者を次々に追い出して後釜に座っていくプロセスは小気味よい。パク邸はソウル市内の高級住宅地にあり、さる有名建築家の作になるという設定。この豪邸は実在ではなくて全部セットらしい。もしこの家が実在するなら100億ウォンは下らないらしい。
本作の背景には、韓国の就職難という事情がある。日本人からすると、職を得るのがそんなに大変なのか?と思えるが、韓国人にはしっくりくるのだろう。
それにしても、本作に限らず韓国映画を鑑賞していつも感じるのは、家庭内での親と子の絆の強さである。韓国には今でも子が親を敬う美風が強く残っているようだ。
かくしてパク家に寄生(パラサイト)することになったキム一家。収入も格段に増え、食事も改善された。が、良いことは長く続かない・・
実はこの豪邸には秘密の地下室があり、人が住んでいたのだ。ネタバレになるからこれ以上は書かないことにするが、要するに、少しは陽の当たる「半地下」ではなく、陽が全く入らない「地下」に住んでいるのだ。文字通り、「下には下がいた」というわけで、ここからの後半の展開も見事で、ワクワクドキドキしながら鑑賞することになる。
ちなみに、韓国では金持ちが自宅に地下室を設けるのはよくあることらしい。北朝鮮の核ミサイルへの備えの他、借金取りから姿を隠す目的もあるようだ。
クライマックスはかなりショッキングな展開となる。ラストはやや後味が悪いか・・