オススメ最新作(※ネタバレなし)
タナダユキ監督最新作。
"映画のための映画"に弱い自覚はあるんですが、年々そういった映画に対して涙腺が緩くなってる感があります。
最高の一本でした。
そして、大久保佳代子という存在に完全にノックアウトされました。
大久保さん、これから先は本格的に女優さんとしていかがですか?
『浜の朝日の嘘つきどもと』
(2021)
映画を愛するすべての人に観て欲しい!
笑って泣いて現実を突きつけられながらもほっこりできる、そんな素敵な作品です。
このブログでは、映画のための映画というか、映画の自己表現をした作品みたいなものを定期的に紹介してます。
私が単純にそういう映画愛に溢れた作品が好きなだけなんですが(笑)
「映画って生きるためにないといけない訳じゃないけど、もし本当に無くなっちゃったらやっぱり寂しいよね」っていうここ2年くらいのモヤモヤとそれに対するひとつの答えなどを言語化してくれており、なんだか自分の感情の落とし所というか、腑に落ちたといくか、なんだか観た後にストンと来た作品でした。
あとは、コロナ対策で映画関係者が抱える苦悩や葛藤が、言葉としてたくさん表現された作品となっており、現実から逃げない気概を感じる作品です。
そんな製作のスタンスがありつつ、何より物語と演者が素晴らしいのよ!!
まずね、高畑充希演じる茂木莉子(偽名)と柳家師匠が演じる映画館主・森田の掛け合いが気持ちいい!
遠慮なく、テンポ感よく、明け透けなく進んでいく会話は、重いテーマを孕んだ作品の羽となり観客の心を軽くしてくれています。
あと、詳しくは後述しますが大久保佳代子さん!
素晴らしいなんてもんじゃない、素ン晴らしかった!!
びっくりしました。
間違いなく本作の大事な魅力ポイントのひとつになっています♪
詳しくはのちほど。
とりあえずいつも通りあらすじから参りましょう!
(…今回は結構早めにあらすじ紹介始めましたよね?)
「ばかやろー、まだ始まっちゃいねーよ」
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■『浜の朝日の嘘つきどもと』あらすじ
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100年近くの間、地元住民の思い出を数多く育んできた福島県の映画館・朝日座。
しかし、シネコン全盛の時代の流れには逆らえず、支配人の森田保造はサイレント映画をスクリーンに流しながら、ついに決意を固める。
森田が一斗缶に放り込んだ35ミリフィルムに火を着けた瞬間、若い女性がその火に水をかけた。
茂木莉子と名乗るその女性は、経営が傾いた朝日座を立て直すため、東京からやってきたという。
しかし朝日座はすでに閉館が決まっており、打つ手がない森田も閉館の意向を変えるつもりはないという。
そんな森田に茂木莉子は…。
(映画.comより)
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■大久保佳代子という女優さん
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いやー、大久保さん演じる先生こと田中茉莉子が、もはや可愛い。
人間臭くて正直で、人情味があるけどサバけてる、そんな気持ちのいい田中先生という人物を大久保さんが魅力的に演じきっています。
まずは普通に演技がうまいです。
絶妙にバラエティで観る大久保佳代子ではない。
自然体だけど、映画の中の田中先生になりきっている。
説教や諭す的なシーンやセリフも、そうとは感じさせない絶妙な匙加減で言うもんだからどんどん田中先生を好きになる自分がいる。
現実には型破りなんだけど型破りすぎないんだけど(観た人には分かる)惚れっぽいといった田中先生のキャラを、コミカルに人間味溢れる感じで体現しており、こんな人とこんな関わり方できたら幸せだろうなーと思わせてくれるんです。
あと、映画150本/年やドラマを1クール5本とか観てると、正直なところもはや「病床での人の死」といったシーンに感情移入しずらくなってる自分もいたりはするんですが、久しぶりにそういったシーンで涙が溢れてしまいました。
しかも泣きながら笑わせてくれるという、もう胸いっぱいになっちゃうシーンになってます(笑)
本作を観た人の中でこんな教師を目指してくれる人が出てきてくれたら最高(^^)
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■バランス感覚
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映画の中でどの意見や立場や価値観を描くかによって、映画のバランス感覚が分かります。
本作は個人的にとてもしっくり来る映画でした。
娯楽である映画に想いのある主人公たちと対になる存在として、映画館の土地を再利用して地域活性を目指す企業が登場します。
彼らが言うようにスーパー銭湯を作った方が高齢化社会の中で活用してもらえる、新たに雇用をたくさん生み出せるなどなど、映画館を残すことよりなんならそっちの方が正しいのかもしれない。
そういう意見や立場を描くのがとてもフェアな気がしました。
結果として、最後ギリギリのところで映画的なフィクションをオチとしつつ(それも自分たちでイジるくらいの余裕を見せつつ)、シビアな現実を突きつける形にしている本作は、コロナ禍や大震災など人の生き死や生活がかかった大きな変化が起きるたびに、映画を含むエンタメや娯楽といったものたちが直面するであろう問題を逃げることなく描いてました。
でも、そこに息づく人や、映画などの娯楽がないと「生きている」とは言えない人たちの存在に寄り添った優しい映画になっています。
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■あとがき
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前述のとおり、気概と優しさに満ちた映画になっており、ひじょーーーーーーにオススメな一本!
もちろんそれだけでなく、キッズリターンへのオマージュや、昔の特撮映画や日本映画ネタもたくさん登場していて、映画ファンにはそれだけでも面白い作品です♪
タナダユキ監督作品は『ロマンスドール』と本作と、立て続けにハマっておりますが、本作の方が断然好きでした(^^)
最近時間に余裕がなく、記事アップがかなりいまさらになってしまったのですが、ソフト化や配信が始まったら多くの方に観ていただきたい作品です!!!
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■予告編
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