【search/サーチ】 | シネフィル倶楽部

シネフィル倶楽部

洋邦ジャンル問わず最新作から過去の名作まで色んな作品ついて、ライトな感想や様々な解釈・評論を掲載orつらつらと私「どい」こと井戸陽介の感想を書く場にしたいと思います!観ようと思ってる作品、観たい過去の作品を探す時とかの参考書みたいに活用してもらえればと♪

NEWオススメ最新作(※ネタバレなし)

 

マウスの動きに出る迷い、ウィンドウの動かし方に出る好奇心、テキストを書いて消してに出る恐れ───。

 

PCの画面にここまで人の感情が出るんだなぁと改めて認識させられました。

 

そういう新たな手法を取り入れた斬新な映画は、驚くほど秀逸な出来になっていました。

 

斬新なことをやろうとする映画は、ともすればその手法に寄りかかって中身のない映画になりがちです。

 

ただ、この映画の製作陣はきっと分かっているんだなぁと感じました。

映画を作る上で技術や手法はあくまで物語や観客に体験を最適化する手段に過ぎないんだということを。

 

その手段とは「映画を観る」ではなく「映画を読む」気持ちにさせる方法です。

 

そして、その方法で二転三転する物語やラストの結末を知った時、いちいちゾワゾワしてしまうのです。

 

『Searching』

[邦題:search/サーチ]

(2018)

 

昨今、ホラーやサスペンスのジャンルがイキイキしております!

 

『クワイエット・プレイス』『カメラを止めるな!』『ゲットアウト』、そして本作。

 

変化球的な作品ですが、娘が行方不明になる事件と背景を元に、きちんと親子の物語が観客に伝わるようになっています。

 

 

そして、ただのスリラーではなく、ミステリーとしてものめりこめる作品に仕上がっています。

 

個人的には変化球な作品や上映形式は苦手です。

 

最近の映像表現の中で「FPS」という言葉があります。

主にゲームの表現の一つとして頭角を現してきた手法です。

 

そのFPSを使い実験的な映画として一部で話題になった『ハード・コア・ヘンリー』なども苦手です。

 

あとは4DXとかも好きではないです。

 

そんな自分でもこの映画は好きでした。

 

それではPCを起動して、あらすじのフォルダを覗いてみましょう。

 

「起動」

 

──────────────

■『search/サーチ』あらすじ

──────────────

忽然と姿を消した16歳の女子高生マーゴット。

 

行方不明事件として捜査が始まる。

 

家でなのか、誘拐なのかわからないまま37時間が経過。

 

娘の無事を信じる父デビッドは、彼女のPCにログインしSNSにアクセスを試みる。

 

インスタグラム、フェイスブック、ツイッター…。

 

そこに映し出されたのは、いつも明るく活発だったはずのマーゴットとはまるで別人の、自分の知らない娘の姿があった───。

 

 

(映画『search/サーチ』公式サイトより)

 

──────────────

■全体評

──────────────

全編、PCで何かを操作して映像を観ている形で映画は進みます。

 

視点を固定されるだけで、これだけ没入感やじれったさが増すのかと驚嘆しました。

 

その世界の物語を知るための窓や入り口となる「視線」が固定されてる感覚。

 

エンドロールに入った瞬間、これと似たような体験・物語をなぞる感覚はなんだろうと考えた時に「小説」を読んでいる時と近い感覚なんだと思いました。

 

自分の意思で視線を変えて物語を体感できないからです。

 

 

もちろん言ってしまえば自分で視線を選べないからどの映画もそうなんですが、他は映像として「視点」が動いている分、自分で情報を得ているような錯覚を覚えます。

 

そう錯覚するからこそ、変にじれったい感覚はありません。

 

一方の本作は、提示されたものをひたすら消化していく形です。

 

なので映画を観るではなく、PC画面の内容を「情報として読み進めていく」といっても過言ではありません。

 

だから「映画を観る」ではなくまるで「映画を読む」に近い感覚になりました。

 

その効果を最大限に活かしており、まるで自分がPCを操作して情報を得ているような気持ちになります。

 

また映される映像はSkypeやU-CASTなどライブ感みたいなものが強いので、「間」が生きてる作品だなと感じました。

 

だから新しい情報が出てくるたびに、他にはないスリルと興奮を覚えることができました。

 

 

それにしてもPCの中にもその人の人生が詰まっていますね~。

 

勝手に映画のオープニングは、父娘のskypeなどで始まって少しだけ日常描いて、そのまま事件に入っていくのかなぁと思っていました。

 

実際はキム一家の16年間をPC版の写真やアプリやカレンダー機能を使ってダイジェストで表現しているのですが、アノ始まりは上手いなぁと唸ってしまいました。

 

(そして古いWindowsの画面が懐かしかったw)

 

観客を主人公に感情移入させる効果もあり、物語的にも後半に効いてくるので丁寧に描くのは大正解でしたね。

 

 

前述の『ハード・コア・ヘンリー』はその手法をやりたいがために物語を後からくっつけた感じがあり、中身が伴っていません。

 

それに対して、あくまで手法というのはストーリーを届けるための手法であることを、本作の製作陣は理解しているように感じました。

 

このストーリーを通常の映像表現で映画にしていたら、よくある作品になっていた可能性があります。

 

でもこの視線を固定することでの没入感が高まり、実際にPC画面を観ることでSNS時代の怖さ、ネット上の人々の裏の顔、薄っぺらい繋がりなどがより浮き彫りになります。

 

 

なかなかエッヂの効いた作品ですが、是非劇場の暗い中、大きなスクリーンでこの作品を観ていただきたいです♪

 

──────────────

■キャストについて

──────────────

世界的にも有名なキャストとしては1名ですね。

 

J.J.エイブラムス版『スター・トレック』シリーズのスールー役でお馴染みのジョン・チョー。

 

 

爽やかさも渋さも少年っぽさも大人っぽさもバランスよく合わせ持った顔立ちされてて、結構格好いい人だなぁと思ってます。

 

今回は普通の人感が出てて良かったです。

 

ただ、たまにスピードワゴンの井戸田潤に見えるはワタシだけでしょうか(笑)

 

 

ちなみに16歳の娘さんを演じた女優さんは実年齢30歳の方だそう。

 

アジア人は幼く見える傾向にあるとはいえ、彼女のなりきりはすごいですねぇ。

 

 

──────────────

■あとがき

──────────────

スマホやインターネット上での操作や、日常で人がそこにあてる時間がどれだけ多く、人間の生活の一部になっているのかという事を、まざまざと見せつけられました。

 

というより、こういう映像表現の中で一歩引いて観てみる事で、改めて実感ができたという方が正しいでしょうか。

 

そういう発見もある面白い映画です。

 

 

色々書きましたが、あまり先入観を持たずに観て欲しいです。

 

今は全編スマホ画面で展開するMVなどもあったりしますよね。

 

同じようにスマホ画面を舞台にした映画もそのうち出てきたりして(笑)

 

 

二転三転する物語の三転目の展開は予想できず、驚きました。

 

あなたはこの結末、予想できますか───?

 

 

──────────────

■予告編

──────────────

・予告

 

・本編映像