№24

日付:2013/8/3

タイトル:風立ちぬ

原作・監督・脚本:宮崎駿

劇場名:109シネマズ湘南 シアター6

パンフレット:あり(\600)

評価:★★★★★


2度目の鑑賞は作品により接近することが可能に。一つ一つのシーンに理解が深まり、腑に落ちた。


戦車や飛行機は好きだけれど戦争は大嫌いな監督さんが、その自己矛盾をそのままスクリーンに持ち込んだ本作品。男のロマンと現実が軋むさまを描き切りながら、彼が信条とする子供のための作品作りまで犠牲にするという矛盾までも容認した結果、アニメ史に残る傑作が残った。


飛行機造りという二郎の夢と交錯するもう一つの柱が妻・菜穂子との愛情物語。

この巨匠をもってして苦手とする分野が"大人の恋"。彼が長年描いてきたのは子供向けアニメに必要な子供同士の淡い恋心であって、プラトニックを超えた時点で急速に躍動感が失墜してしまう。「ハウルの動く城」で露呈したその弱点を、今回は古典的作品の名シーンの数々を拝借することで乗り切っている。


矛盾は矛盾のまま。映画評論家の中条省平氏は「宮崎駿の目には、やさしさと厳しさ、そして希望でも諦念でもない<あわれ>が宿っている」と評していましたが、むしろここには<潔さ>という言葉の方が相応しい気がする。

自身の夢も愛する人も失った二郎に最後に届く、生きたくても生きられなかった菜穂子からのメッセージ。慟哭と共に前に進まざるを得ない彼の見えない明日に、観客は自身の明日を重ねるしかない。

 

映画の記憶・・・と記録-風立ちぬ

映画の記憶・・・と記録-風立ちぬ

映画の記憶・・・と記録-風立ちぬ

映画の記憶・・・と記録-風立ちぬ

  
映画の記憶・・・と記録-風立ちぬ CARD COLLECTION PREMIUM
劇場で売っていたポストカード集(\900)

切り取りタイプなのがとても残念(切り取ると切り口がとてもきたない)