老舗雑誌の休刊が続いているという日経の記事に「ロードショー」の名前を見つけて驚いたのが昨年の夏。本屋で久し振りに手に取ったら表紙には「最終号まであと4号」とか書かれていました。

もっと驚いたのがその内容で、ブラピとアンジェリーナ・ジョリーの子供の写真が大きく掲載されたその記事はまるでパパラッチ雑誌のよう。いつからこんなゴシップ雑誌に成り下がったんだと、ちょっぴり悲しくなりました。


私がこの雑誌を購入し始めたのが中学1年だった1974年。母親の許可が必要でした。この年は前半がブルース・リーに端を発した「ドラゴン・ブーム」、後半が「エクソシスト」に始まるオカルト・ブーム。でもって「エマニエル夫人」も評判になりました。多分↓の10月号からだったと記憶しています。この後大学4年になるまでの12年にわたり購入し続けました。


当時私の周りの映画好きはスクリーンではなくロードショー派ばかり。この2誌の一番の違いは外国人スターの名前の呼び方で、例えばロードショーがオリビア・ハッセーと書いているのに対しスクリーンはオリビア・ハッシー、イザベル・アジャーニがイザベル・アジャニー。「アジャニーはねぇよな」と友人と笑ったものです。


大学に入ったあたりから惰性で購入しているだけになり、買っても中身を読まなくなりました。実は2度、それまで購入したこの雑誌を処分し、その度にバックナンバーを再度購入し直しています。

一度目が中学3年の時、同じクラスの映画好きだった橋詰君にせがまれ譲ってしまい、その後古本屋で買い直しました。

二度目は大学卒業後に引越しをした時、前のアパートより狭くて入りきれなくなった12年分のロードショーを玄関の前に放置していたら、雨ざらしになってしまい結局全て処分する事に。これをここ数年ヤフオクで少しずつ再購入しています。これが結構大変で、巻頭の目次の付いた折込ポスターとかの切抜きが多かったり、ジャンク物だったり。同じ号を何度も購入し直したりしています。時々馬鹿らしくなりますが、このブログを始めるにあたって昔観た作品の情報を確認する為に読み返したりすると、懐かしさで一杯になります。

やはりこの雑誌の記事で一番思い出深いのは、トレーシー・ハイドの成長した姿が掲載された号でしょうか。あれはなかなか衝撃的でした。あの映画を観た誰もが思い描いたであろう彼女のその後、そしてその夢を見事に壊してくれたそのお姿・・・(^^;)

というとご本人に失礼でしょうが、複雑な心境でした(笑)。

 

こういうブログを書くくらいですから、キネ旬の「読者の映画評」に応募した事もあります。映画雑誌の有り様について、ずっと不満もありました。映画雑誌を作りたい、と本気で思っていました。

先ず第一に、映画というビジュアルなメディアを相手にしながら雑誌がちっともビジュアルじゃない。スターのフォトにしてももっと写真としてのクオリティを高めたかった(当時は洋画版月刊明星みたいでした)。

第二に、監督やスターへのインタビューをもっと充実させたかった。来日した際にコメントをもらうだけでなく、世界中のその手の雑誌と提携して、広く彼等のメッセージを紹介すべきだと。

そして最後に、映画評論誌としての充実。当時その辺に力点を置いていたのがキネ旬と映画芸術でしたが、どちらもその文章自体に魅力を感じませんでした。ちなみに私にとって尊敬する映画評論家は、今も昔も荻昌弘さんです。サンデー毎日に掲載されていた映画評は素晴らしかった・・・そこには自我と普遍性と、読み手に対する配慮が確かに存在しました。

 

今のこの時勢、映画雑誌というメディアがその存在意義や機能性含め存続する事が大変なのは容易に推察できます。もはや上映スケジュールはぴあではなくインターネット、映画評だって口コミの方がよっぽど参考になります。雑誌でしか得られない(単なる)情報などある訳が無く、これまで以上にキラー・コンテンツが求められる今、私が掲げたような映画雑誌の編集方針ごときではあっという間に廃刊でしょうし、既に実現もされている事ばかりです。


昨年暮れに休刊となったこの雑誌、気が付いた時には販売も終了し、集英社に問い合わせて貰うも発行元の在庫もなくなっていました。そしてヤフオクで購入する事に(金さえ積めば手に入る、便利な世の中です)。

最終号を読み返すと、改めてこの雑誌が"生き残り"をかけて模索した様が伺えました。そして昨年の夏に当時の最新号を手にとって感じた変貌振りも、私の誤解であった事が判りました。この雑誌はまぎれもなく映画雑誌として、その有終の美を飾っていました。


体裁上はあくまでも"休刊"。この雑誌と共に映画を楽しんだ世代として、再びこの雑誌が僕ら映画好きの友となる為の条件が何なのか、考えていきたいと思います。今生き残っている巷の映画雑誌にこれまで通り満足できていない以上、「ロードショー」のアイデンティティは必ず存在する・・・そう信じています。


とりあえずは、永い間ご苦労様でした。そしてお世話になりました。

映画の記憶・・・と記録-ROADSHOW