脳内麻薬の続きを書きます。
前回の記事はこちらです。
ハンガリーの件について書きましたが、ハンガリーは世界史の授業においても全く取り上げられることもなく1行2行で片づけられてしまうので本当にマイナー扱いです。
日本の視点当事国の視点でやはり重大さが異なってしまうんですね。
フランスで歴史上の有名な人物としてはルイ14世とナポレオンです。
この2人についてはフランス本国では50種類もの伝記が出版されているらしいですがそれに該当する人物がもう一人いましてそれが、アンヌ・ド・ブルターニュだそうです。日本では前者2人は中学の歴史の教科書にも出てきますが後者は知らない人も多いはず。ポンパドゥール夫人なら知っているけどアンヌ・ド・ブルターニュは知らないという人が大半でしょう。私も脳内麻薬の記事を書くまで知りませんでしたし。
こんなにも温度差があります。歴史の教科書の節穴さがよくわかる。
常に勝者(白人中心)の歴史なので大事なことが埋もれてしまいます。また、男尊女卑の歴史が長かったこともあり、女性の歴史上の人物が注目されず男性ばかりです。女性に関しては皮肉が込められている記述も多いです。歴史の先生とか本の著者が男尊女卑だったりするとまたおかしくなってしまうし。
歴史というのは本当に多角的に見ないとダメだなと痛感しておりますし、つくづく歴史の流れはジェンガのようなものだと思っています。一見大したことなさそうな出来事、人物が実は重要でそれが連動して一気に流れが変わるというか。
ハンガリーのマティアス1世(マーチャーシュ1世)もその一人として私は認識しています。しかし、この人について語る人が日本では少ない…ハンガリーでは超有名人です。出口さんや百瀬さんに取り扱ってほしいくらいで…。
資料が少ないから難しいのでしょう…。
大西巷一さんの漫画『乙女戦争外伝II 火を継ぐ者たち』では脇役ですがちょっとだけ出ます。この方も資料は海外のものを参照しているようです。
フニャディ・ヤーノシュの子で、ハンガリー王になったマーチャーシュ1世。
— 大西巷一:『星天のオルド タルク帝国後宮秘史』②巻9/12発売! (@kouichi_ohnishi) June 10, 2021
なんか中華料理っぽい名前だけど、聖書のマタイのハンガリー版でドイツ語のマティアス、英語のマシューに相当。 pic.twitter.com/FLufISHf4D
マティアス1世が再び重要な人物として浮上したのは、マキャベリの『君主論』を読んだからでした。
『君主論』は優れたリーダー論として古代ローマやギリシャ、ヨーロッパの君主を挙げております。これは必読書としておススメではなく単に歴史を掘り下げていくためのツールとして私が利用しただけです。書かれた時代が15世紀のヨーロッパなのでもちろん不完全ですが、不完全でもこれを読まなかったら大事なことを見逃すところでした。
マキャベリは、理想的な君主の例としてアレクサンドロス大王に着目しました。
古代ローマ帝国の五賢帝たちはペルシアをロールモデルとしていますが、そのペルシアを滅ぼし大帝国を築いたのがアレクサンドロス大王です。
アレクサンドロス大王レベルの統治はかなり抽象度が高く、現状から遥か彼方の生涯到底実現できないようなゴールとなります。
キリスト教が国教になる前のローマ帝国特に五賢帝は、キリスト教を弾圧しストア派哲学を取り入れました。
ストア派哲学とは、シンプルに言えば「思い通りにならないことを受け入れる在り方」「承認欲求を手放すことの重要性」を説いています。
※ストア派哲学が難しそうと思えるのは「ストア派哲学」というワードがさも難しいように見えているだけにすぎません。
アレクサンドロス大王をゴールにして途中の段階でストア派哲学を見出すことが可能です。アレクサンドロス大王と五賢帝の共通点は多神教国家であることです。キリスト教国ではキリスト教を手放さない限り実現できません。
中世の時代になってアレクサンドロス大王をロールモデルとした人物が実は2人いるのですが、何故かマキャベリはどちらも取り上げませんでした。しかも、同時代の人物なのに。
その人物の一人がオスマン帝国のメフメト2世。
もう一人がマティアス1世でした。
マティアス1世はマキャベリが好みそうな人物です。マティアス1世とメフメト2世は同時代の人物で、ゴールも一緒で異文化の研究も熱心な上にマルチリンガルのため、共通点も多く、宗教の相対化さえできれば仲良くなれそうな気はしますが、他国との兼ね合いやワラキアのウラド3世がメフメト2世に反旗を翻したこともあってフリードリヒ2世の十字軍の時のようにはいきませんでしたね…。
マティアス1世はウラド3世の攻撃性をオスマン帝国に向けています。
ウラド3世をコマとして利用しオスマン帝国の注意をワラキアに向けさせ、ハンガリーの防波堤にするとともに、ウラド3世の凶暴な性格ではワラキア統治は短命になる(恐怖政治を敷いたため、人心を得ることはできなかった)だろうということも読んでいました。
この時代、ヨーロッパはどこも戦争で国が疲弊していて自国のことで頭がいっぱい。十字軍に積極的になれなかったというのが本音のようです。十字軍にもお金がかかります。
十字軍に熱心だったのはローマ教皇とウラド3世くらいだったようです。
ウラド3世を利用することで、自身もオスマン帝国に対する十字軍に積極的ですよアピールがローマ教皇に対してできます。
その一方で十字軍を放棄する理由を探していたようです。
この辺は、フリードリヒ2世の十字軍遠征を延期させるための作戦と似ているところはあります。
ちなみに、マキャベリの本にフリードリヒ2世も出てきません。このことから、キリスト教国の視点つまり、ローマ教皇の目を気にして書かれたものだからそうなったのだと思っています。ローマ教皇目線ではフリードリヒ2世はトラウマになりますので。マキャベリと同時代の教皇たちは腐敗しており、褒められるところは一つもないのですが、かなり気を遣って書いているように見受けられました。また、マキャベリの住むフィレンツェ共和国の統治者がメディチ家だったので、メディチ家にも気を遣っているのかなと思われるような書き方でした。
こういう著者の意図や抽象度がダイレクトに反映されるのがやはり文章なのかなと思います。ぼかして書いているのにそれでもルネサンス期には「悪魔の書」として禁書目録に数えられ焚書されてしまいました。1559年頃のことです。
ローマ教会、かなり目を光らせています。
マキャベリの『君主論』は完璧ではないですが、それでも、初めて国を征服し統治するには何が必要かが明確に書かれており、現代に置き換えれば政権交代や新しく会社を立ち上げる際の参考にはなるかなとは思います。もちろん正しいゴール設定が前提となりますが。
メフメト2世についてはイスラム教徒だからと言及できなかったのだと思います。ただしオスマン帝国の大まかな統治の仕組みは少しだけ書かれています。
アラビア数字ですら「悪魔の数字」として忌避してきたローマカトリック教会です。そのせいでアラビア数字がヨーロッパに普及するのは17世紀となります。
当時15世紀ではちょっとでも教皇の逆鱗に触れるようなことを書けば即拷問、処刑は免れないことは想像に難くないです。
しかしながら、マティアス1世が一切触れられていないのはどうも違和感があります。
マキャベリの説く、理想的な統治の政策にいくつも該当しています。
ローマ教皇から良い印象を持たれていなかったのかもしれません。
出典:最後の騎士マクシミリアン 権力と愛の物語
マティアス1世は、敬虔なカトリック教徒であるはずなのに、戦争で民が下敷きになる危険がない場合はカトリックの教会を破壊しても良いと指令を出していました。これをどう思うかなんですね。教会が壊されて困るのはローマ教会の手の者つまり聖職者ですから、司教が教皇に密告したり告解の制度も機能しているので、内部から情報が漏れてしまったりもあり得ます。
教皇によっては破門を下すかもしれません。
この人の本音はどうだったのだろうか…。
さらに不可解な点を見つけました。
長くなるので次回になります。
続きます。
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