幼少期の時からシンデレラをはじめとするおとぎ話を聞かされてきた女性たち、もうその時から愛の洗脳ははじまっていました。

 

 

女性はメルヘンの世界が大好きですが、この中で今日の愛の認識に影響を最も与えたのはシンデレラだろうなと私は思います。シンデレラ症候群というものが存在しているからです。

なので、シンデレラのルーツに迫りたいと考えました。

 

 

日本で伝えられているシンデレラのストーリーの元ネタは、フランスのシャルル・ペローの童話サンドリヨン(シンデレラ)だそうです。グリム童話の方にも灰かぶり(シンデレラ)というのはありますが、こちらはドイツ発祥のためプロテスタント的解釈が加えられたストーリーとなっており、残酷な描写が多いようです。

 

 

シャルル・ペローの活躍した時代は17世紀で、ルイ14世が栄華を極めていた時代でもありました。そのルイ14世の治世末期、貴婦人たちが集うサロンでは、空前の妖精物語ブームが巻き起こっていました。

 

 

妖精物語ですがそのルーツは妖精信仰にありました。古くからヨーロッパの地域で見られた民俗的、土着的な信仰の形態の一つですが、近代社会の形成とともに廃れていったとされます。ヨーロッパの農村には、新生児の誕生や大みそかから新年にかけて妖精たちを招いてもてなす風習があったようです。妖精信仰が近代まで根強く残っていた理由は、妖精は架空のものでも、それによってもたらされる幸、不幸は現実のものであったからだそうです。

そして、時代の移り変わりで旧来の身分制度を打ち破ってブルジョワジーが台頭してくると、日々の生活に直結した信仰の対象ではなく、もともとあった詩的想像力の要素が物語の中に取り込まれ楽しまれるようになりました。

 

妖精物語主人公は困難や危機にさらされるものの、必ず最後はハッピーエンドになる。魔法や変身などの超自然的な出来事や波乱の展開が盛り込まれながらも、短く単純明快なストーリーが女性たちの心を捉えていったのです。

 

これらがサロンで大流行したのは、太陽王と呼ばれた絶対君主ルイ14世の内政に陰りが見えはじめ、その厳しい現実から目をそらすための一時の現実逃避のためでした。

そしてこの時代にはプレシューズと呼ばれる言葉遣いや恋愛に過度の洗練を求める貴婦人たちの活躍がめざましく、多くの女性作家による妖精物語が誕生しましたが、彼女たちの物語は、作者たちの不幸な人生の裏返しのように、愛の勝利を歌い上げる夢物語でした。

妖精物語に多く見られる恋愛や結婚のテーマは、一番の関心ごとだったようです。しかし、恋愛の心理描写などが感傷的で冗長であったために後に子どもに受け入れられる物語としてはならなかったようです。

 

その女性作家たちに混じって妖精物語集を出版したペローの作品は、簡潔な構成や文体、機知に富んだ内容において昔話の形式を見事に確立している点で抜きんでていました。1690~1700年にかけて古典として残ったのはペローの物語だけでした。

 

近代派の急先鋒であったペローは、女性観や子ども観も今日的な考え方につながる先見性がありました。女性の知的関心の高まりに好意的であり、民衆の物語の受容者として子どもたちを意識していました。

 

ペローは、宮廷の要職でしたが、ブルジョワジーでもあったため貴族と民衆の橋渡し的な役割を果たしました。その中で、民衆の間に語り継がれていた民話を昔話として、教訓的な装飾を施して文字化したため、まず識字力のあるエリート層に浸透し、改めて民衆の元へと戻ってくる口承と書承の相互通行に大きく貢献したのです。

このようにして民間に広まり、海を渡って明治時代に日本に入って来たというわけですね。

 

まさかペローも、今日の女性たちの愛と幸福の認識を歪める原因になってしまうとは思わなかっただろうなというのがトホホな展開ですね。

当時のフランス貴婦人たちの恋愛観とやらも気になるところです。