珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・
野良犬   1949年(昭和24年)



 混みあったバスの中で、若い刑事・村上(三船敏郎)が拳銃を盗まれる。免職をおそれた村上は自力で拳銃の行方を追う。バスの中で寄りかかってきた女を問い詰め、闇市をさぐってみるようにという情報を聞き出した。復員兵に変装し、上野や浅草を歩き回る村上。根気よくたずねまわるうちに、拳銃の闇ブローカーがあたりをつけてきた。取引場所にきた女を逮捕した村上は、老練な刑事・佐藤(志村喬)とコンビを組み、拳銃の行方に捜査が前進した頃、ほかの場所で強盗殺人事件が発生してしまう。自分の盗まれた拳銃が犯行に使用されたと知り、苦悩する村上に刑事の”いろは”を教えながら熟練の捜査を続ける佐藤。しかし、犯人を追いつめた佐藤もまた拳銃の被害者となってしまう・・・。


 『酔いどれ天使』 、『静かなる決闘』、に続く黒澤明監督・三船敏郎コンビ三作目にあたる本作は、初期の黒澤作品(1940年代)では最高傑作ではないでしょうか。

 全編にわたって描かれるうだるような暑さ、常に汗を拭きながら捜査をする志村喬。観ていてこちらも暑くなりますが、みんな暑さで無気力状態の中、苦悩しながらも一人走り回っている三船敏郎はやっぱり凄い。三船の演技はどの作品も同じだとよく言われますが、本作では抑えた演技で素晴らしいと思いました。

 しかし、今回は『酔いどれ天使』 で主役の座を奪われた志村喬が、お返しとばかりに主役・三船を喰ったかなと思いました。黒澤映画になくてはならい存在、志村喬のあの一度見たら忘れられない顔と説得力ある口調。黒澤映画以外に出演しても見事な存在感で本当の名優だと思います。


 また本作は、犯人役を演じた木村功と、劇場の演出家のチョイ役で出演している千秋実の二人が、共に黒澤映画初出演となった貴重な作品であります。


 あと、ファーストシーンとラストで、三船が走りまくって追いかけるシーンを観ていて思い出したのが、刑事映画の傑作でアカデミー賞作品、『フレンチ・コネクション』 (1971年)。ニューヨーク市内を走りまくったジーン・ハックマンの名演技と三船敏郎が重なって見え、『フレンチ・コネクション』 の元ネタが実は『野良犬』じゃないのかな、と勝手に思ってしまいました。



珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・

珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・
 三船敏郎


珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・
 三船敏郎            志村 喬


珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・

珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・

珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・
        淡路恵子
珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・

珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・
 千秋 実


珈琲の香りと紫烟の中で・・・・・
 木村 功