メキシコの麻薬捜査官(チャールトン・ヘストン)が、若い結婚したての妻(ジャネット・リー)と、米側の国境近くの町に行き、乗用車の爆破に遭遇する。その犯人を捜すため警部(オーソン・ウェルズ)に協力を求めるが、彼はどこか異常で、犯人でっち上げが常套手段。その手口を知られた警部は捜査官の妻を誘拐し、妻と捜査官を麻薬常習者と殺人者にでっち上げようとするが・・・。
鬼才オーソン・ウェルズが監督・脚色・出演した異色サスペンス映画。しかも主演がスペクタクル映画の帝王チャールトン・ヘストン。
ヘストンが、セシル・B・デミル監督の2作、『地上最大のショウ』(1952年)、『十戒』(1956年)の次に主演した作品で、この後にウィリアム・ワイラー監督の2作、『大いなる西部』(1958年)、『ベン・ハー』(1959年)に出演。
デミル、ワイラー、両巨匠の大作映画の狭間の作品だけに、あまり有名でない作品だと思いますが、ヘストンの絶頂期に撮られた1本なので見逃せません。
ヘストンといえば、史劇・西部劇・パニック映画のイメージしかなかったのですが、口髭を生やしスーツ姿のヘストンも意外に似合っており、また超大作ではみせない繊細な演技も披露しています。
しかし、さすがのヘストンも怪優オーソン・ウェルズの特異な風貌と怪演には歯が立たなかったようです。異常で異様な悪徳警部が出るたびに場面をさらってしまう圧倒的な存在感。
オーソン・ウェルズ出演映画は、今まで、『カジノロワイヤル』 (1967年)しか観ていなかったのですが、本作を観て「ハリウッドの鬼才」と言われていた理由がよくわかりました。モノクロの風変わりなサスペンス映画ですが、鬼才とスペクタクルの帝王が作り上げた異色作、見応えのある作品です。
ジャネット・リーは本作の後、ヒッチコック作品、『サイコ』 (1960年)に出演。