…斑(はん)ちゃんが逝ってしまいました…。
…少し前に逝ったのですが…
なかなか打つ気にならなくて、
ご報告が遅くなりました。
幻獣ツチノコ・小雪には遭遇しにくく、
その幻の白い姿を目撃なさった方は稀でしたが…
斑ちゃんは、来宅なさる方々の
お迎えとお見送りがお仕事でしたので、
皆様には本当に可愛がって頂きました。
あの娘(こ)の訃報に接して
何人もの方が涙して下さいました。
本当にありがとね!
不思議なことに、
人をみて(選んで)接客していました。
だから?
斑ちゃんにもてなしてもらって当たり前なんぞとは
ゆめゆめ想わないことですぞ!
とにかく、穏やかな娘でした。
オッサンと間違われても、
赤い彗星の如くにシャァァッ!!と
火を吹くこともありませんでした。
17年間玄関先にいて、
こちらの家の中で暮らしたのは、
19歳になる直前までのほんの少しの間でした。
賢い娘で、お家(うち)の中で暮らす様になっても、
一度も粗相(そそう)をすることもなく…
「らしく」穏やかに逝きました。
こゆちゃんと同じく、
無事に死の境界線の扉を越えて逝きました。
やり遂げました。
とにかく、姫・小雪に憧れていて…
鏡に映ったおのが姿が真っ白ではないことに
いたく衝撃を受けていました。
朧の伝達には、
既に下地が出来ていたため意思の疎通には、
それほど時を必要とはしませんでした。
小雪ちゃんが17歳で逝った時には、
相当にショックを受けていました。
この家に猫型生物は、自分ただ独り。
折角皆と家族に成りかけたのに…と、
孤独感を深めたようでした。
その内に、朧語(おぼろご)で
通じ合えるようになって来ました。
でも、もうひとつ越えられない
バリアみたいなものを、私は感じていました。
その頑(かたく)なな心に
苛立(いらだ)ちさえ感じていました。
そして…小雪の時と同じように、
その刻(とき)が訪れて来つつありました。
定命(じょうみょう)期限という
引き潮の予兆です。
ある夜中、大好きな居場所の椅子の下から起きてきて…
トイレ帰りの私の足元に座り、私を見上げ
「こゆちゃんと同じ!家族!!」と
朧語ではっきりと伝えて来たのです。
意訳すれば…猫型か人型かなど、
ものともしていなかったこゆちゃんと同じように、
私も家族の一員!
…という当たり前のことを、今更に確信したのでしょう。
それからは、本当に深く心が通じ合えるようになりました。
それでも、奥深くに凝(しこ)りがあるような気がしていました。
そしていよいよその刻が迫って来ていました。
時折、意識が朦朧(もうろう)とすると…
何処かへと逃げ込みかけては、
ハタと踏みとどまる様な行動を…
…そして、いっ氣に何もかもがほどけたのでした!
17年間もの間外にいて…
敵から逃げ、人の足音に怯え、
雷や台風の中で孤独に呑み込まれて生きて来た。
人に心を委ねようとしても、又いつか独りになるかもしれない、
今を失う不安と恐怖…
それが、あの娘が後半歩踏み込んでこられなかった理由だったと…
天啓にうたれたように理解出来たのでした。
そして、いよいよその刻でした。
目も見えず、それでも私達の声を必死で聞き分けようと耳を立て…
「みんなみんな、いっしょいっしょ!家族家族!!」と言って
尻尾を振って逝ってしまいました。
最後にトラウマを解いて逝った姿は、
見事としか言えませんでした。
後日、仕事へ向かうあずさのシートで聴いていたイヤフォーンから
中島美嘉さんの「雪の華」が流れて来て…
斑ちゃんの曲みたいだなと涙しました。
遠くに見える八ヶ岳の上の哀しいまでの蒼空(そうくう)!
あずさは時間流のチュウブの中をただひた疾り…
やがて気付けば、蒼いひろがりの中を飛行機が
音もなく緩やかに大きくバンク(旋回)して、
遠くに離れて行きました。
あんな風に斑も自由になれたのかなぁ!?なんて…
肉に閉じ込められて、
何処へにも行けない不自由な俺は
「自分なんて、なんてちっぽけなんだ!」と
思わず吐き出すように独白していました。
小雪は桜、斑は紅葉だったなぁ!
あの娘達に負けないように
本氣を入魂(い)れて活(い)きなきゃな!
私は、この一年で死にかけていました。
死神の吐息をうなじに感じつつ、
死を生きていっているようでした。
息をしているだけでも、疲労していくような状態でした…。
それをアルコールで誤魔化し、そのアルコールも弱くなり、
しかし杯数は増え、ウェイトも20kg近く落ちてしまい…。
それが、大切な最後の宝・斑を失ったことで…
「あぁ、そうか!」と膝を叩き、
この長きに渡る死神のキッスの原因が…
パトスを見失っていたせいだと、
漸(ようや)く気付くに至りました。
ギリギリ感、満帆(まんぱん)です。
力を遣えば、当然消耗します。
虚空より力を紡ぎ出す故に、その疲労は半端ではありません。
失われたエナジィ分を、
大自然から捻(ひね)り出し補給するという者もいるでしょう。
私の場合は、その補給源(充氣源)はパトスだったのでした。
やる氣・氣迫だったのです!
この数年失念していた事を、思い出しました!!
極端な淋しがり屋の斑だったから…
できるだけ独りにさせない!台風などの夜には…
傍らに居て、撫でながらお話をしてあげる。
サバとちゅ〜るが大好きなので、
私のお酒は欠かすことはあっても、
それらの在庫だけは欠かすわけにはいかない!
…等々と手間はかかりましたが、
居なくなるとそれらも宝物だったのがわかります…。
今回は、斑に救われたのだと想っています!!
斑が命の肩代わりをしてくれたとするならば…
それをパトスに変えて、斑の分まで活きねばなりません。
そして今日!肉という物質界の臭いや重さや苦しみや
執着等から自由になるという斑ちゃんの四十九日に、
今冬初の雪が深深(しんしん)と降り積もっています。
時折、その森森(しんしん)とした静寂の中を…
たわんだ枝から自らの重みで落ちる雪の音が、
ドサッと鈍く響くだけ…。
落ちたのは、愚かしくも駄目な私なのかもしれません。
真っ直ぐにグリーンの目線を据(す)えてくる小雪。
微妙に目線を外して、自分を押し付けてこなかった斑。
こゆにコヒガンザクラを見せたかったように、
此処に斑ちゃんがいたなら、この雪を見せたかったなぁ…
もう一度、はんにあいたいなぁ…
ねぇ、はぁん。



