夜が足音を立てて流れてゆく…。
ホテルの部屋の…
ヴェルヴェットの夜氣(やき)に満たされた、
この闇は騒がしすぎる…。
気忙(きぜわ)しくたてる、
自(みずか)らの呼吸音に邪魔をされ…
誘(いざな)いに揺れる薄いヴェールの、
その先にある眠りの楽園へと…
今夜も、束の間の逃避さえも
許してもらえそうにない…。
どうやら…
右肋(あばら)が3ヶ所で骨折していた…。
病院へは行っていない…
行けない…行きたくない…。だって…。
痛みの原因さえ解れば、もう充分だ!
後は、それに耐えれば良いだけだ…。
それで…いつもはストレイトを
ショットグラスにダブルで極(き)める処を、
暫(しばら)くはシングルのロックにした!
杯数を重ね呑めば、
なんら意味無いことに気付いたが…
ま、それでも心持ち
薄める努力をしてみせたなら…
アルコール厳禁なんぞという戯言(たわごと)に、
耳ダコにならんで済むのではないか!
…との深い配慮の為せる術(わざ)である。
私は遠謀深慮(えんぼうしんりょ)の者である。
ヒトはそれを、安直(あんちょく)な
回避行動ともいうかもしれんが…
そこは、しつこいようだが…
同じ臭いがすると言われ、いたく傷付いた、
ベートーヴェン偽装の彼(か)の人を真似(まね)て…
聴こえん振りをする。
名付けて「肋骨ROCK」!!
なんとなく響きが良いとは思わないか!?
イカの燻製(くんせい)の如き男の味の、
良し悪(あ)しも判別出来んような
瑞々(みずみず)しい(!?)
…ある若い女性バァテンダァに
「わぉ、ファンキィ!!」
とタメグチで言われて
「うきゃあ!!」と腰を抜かす程、
照れつつも嬉しがってしまった!
スタッフが居たなら、
きっと拷問(ごうもん)に掛けられていたに
違いない!それも長く激しいやつに…。
なにせ…電話帳の職業欄(らん)にも、
まともに載(の)っていない
怪しい稼業柄(かぎょうがら)故に…
諸事情の詳細は省(はぶ)き…
ひょんな拍子で骨折して、それでね
「肋骨が…でね、ロックね!」
…その反応が…いきなりの
「ファンキィ!」だったのだ。
使う場所が…なんだか違う気がする…。
だけど、痛みを堪(こら)えながらも、
ちょっと自慢気(じまんげ)になってしまった…
そんな自分が少し嫌!!
因(ちな)みに電話帳では
祈祷師(きとうし)に分類されとります…!?
さんざ「やだぁ、詐欺師(さぎし)みたい!」
とは言われて参りましたが…祈祷師とは!?
…まったく、なんとも…ま、頼まれれば、
断われないセコい性格故に…
祈祷しないことも無いわけではありませんが…。
ともかく…それでですね、そこでつい!
忘却(ぼうきゃく)の彼方(かなた)へと
封印しとったアレを…その彼女の前で!
やってしまったんです!!
想わず知らずに、
鼻の穴(す)の周辺の縁(へり)を指先で…
一筆描きの様に、横に8の字に(∞)なぞる癖を
出してしもうとったんです!
彼女に、じぃいっと!見詰められて…
ハタと!己(おの)れの見苦しい
所業(しょぎょう)に気付いた訳なんです。
癖を知っとる者共に、勝手に言わせると…
時には先へ進むと見せかけて、
さはあらずに逆戻りしたり…
同じ鼻の穴の縁の上で、
思わせ振りに焦(じ)らすように!
輪廻(りんね)するが如くに!
何度も丸を繰り返し描いたりもするらしい…。
「ねぇ、もういい加減にそれ止めたら!」
なんて、真っ正面から言われても…
本人の私は、まさに自動書記…
霊が降りて来て勝手に字を書いてしまう
あれね…の様に無自覚な訳でして…
まぁ、それにしても皆つくづく
私をよぉく観察してるよねぇ…と、
ほとほと感心するしかないんすが…。
観察よりも、
もっと他のことをやりはったらどない!?
癖ばっかりの話でなんなんですが、
寝ていて腰を揺(ゆ)する…
腰の貧乏揺すりヴァージョンが、
私にはあるんです。
錐体外路系(すいたいがいろけい)の
無意識運動だの、
自らの裡なるゴーストに身を委(ゆだ)ね、
体の歪(ゆが)みを修整する
自発動[氣]功(じはつどうこう)だのと
云われる類(たぐ)いのものでして…
時にはストレス放出で、
叫(おら)び騒いだりするために…
憑依(ひょうい)現象とも
誤解されたりもするんですが…
はっきり言って、それは間違いです!
私の癖は、腰椎(ようつい)の歪(ゆが)みや
疲労を修復するための動きなんですが…
なんだが情けなくなる!
夜闇の中で、
セッセとそれをしている自分に気付いて…
ワケわからずに
自分が愛(いと)おしくなってもしまう!!
そういえば、肋の骨折の話でした…。
私が…例えば、導管通路のパイプとする。
その中を…
巨きな水の奔流(ほんりゅう)の如きチカラが!
流れ往くとしなさい!!
私というパイプの、フィルタァが…
リキミや緊張や疲労や迷いや執着や、
そして癖やら何やらで
目詰まりを起こしているとする…としたまえ!
そこへ暗黒の意圏のエネルギィの
一部であったにせよ
…巨大な暴龍の如き水圧が
一氣にかかったとするならば…
そりゃあ、あぁた!
そのパイプには過大な負荷が掛かってしまい、
自(おの)ずとして…刻を置かずに!
破壊されて行ってしまうやもしれぬ!
…ということなんです!!
当然の如くにZEROには出来ないが…
フィルタァの目詰まりを極力減らし…
そのパイプ(ヒトとしてのキャパ)の
径(けい)を最大限に拡大させ得たならば…
この卑小(ひしょう)なる我が身のトラブルにも、
なんとかピリオドもしくはチョンを
打てるに違いない!!
…句読点(くとうてん)の事ね…
なのに…なのに、いつまで経(た)っても
モタモタしておって進歩のない…
この私めの事を、心配して下さっている
皆さんには本当に申し訳ない!!
と…え!?
土下座しとる私を置き去って…
皆さんは遥(はる)か先の、
他の関心事へと疾(はし)ってゆかれとるかも…
って、又腰を揺すっとった!
あれ以来、初の…
大阪、広島、長野と続く長距離ランの
巡業(じゅんぎょう)に出てるんですけど…
移動だけでも、
肋にかかる負担で死にかけとります。
頼みの綱はコルセット代わりの、
きつめの腹巻きただひとつ!
その上に、肋骨ロッカーの舞台に
上がらなならんわけですよ…。
私は、今宵(こよい)のホテルでも…又、
腰を揺するのでせうか!?…
「んなこと知らんわい!」
…なんて、そんなツレない冷たい事は…
くれぐれも想わんといて下さいよね!!
最後に…暗黒の意圏を
チカラとして取り込もうとした際に、
異物も混入してやって来た…。
誰の目にも明確に鮮(あざ)やかに!
ある跡(あと)が、徴(しるし)の様に…
私の右肋の処に遺(のこ)されていた!!
意圏に潜(ひそ)む物怪(もののけ)の大男が…
私の右背後から胸部に
右の腕(かいな)を巻き回し、
その巨大な腕(うで)と掌(てのひら)とで
肋を締め上げ骨を押し折ったように…
その有り有りとした聖痕(スティグマ)が、
激しい擦過傷(さっかしょう)の様に
出血も生々しく残されていたのだ!!
意圏の暴圧に紛(まぎ)れ混んだモノノケが…
自らの存在を知らせるかのように!
その鬼紋(きもん)を私の身体に
摩(す)り遺していったのだろうか…!?
私が意圏を透過させ、チカラとして
取り込んで往こうとするように…
意圏に潜み棲(す)むモノノケ(チカラ)も、
私を同類もしくは餌(えさ)と見做(な)し…
取り込もうとして来るのだろうか!?