ある男は
毎晩接待で夜遅く帰る生活を送っていた

子供がいない40代の夫婦

「俺は家庭を守るためにしごとしてんだ!文句あるか!」

「私はたまには早く帰ってきて!と言っているだけじゃない」

「寂しいの 死ぬほど寂しいのよ!」

こんないさかいが毎晩

しかし奥さんが突然亡くなった

その後の彼は…
奥さんの存在がいかに大きかったかを知り
仕事でもミスが続いた

その日もミスをして上司から怒られた

帰宅するバスを終点まで寝過ごした

次のバスまで二時間は待たなければならない

ひょいと辺りを見たら
『奥さん屋』
という奇妙な店があり立ち寄った

中には 人間と変わらない機能や感情を持つ色々な女性のロボットが陳列されている

彼が店主に勧められたロボットは 死んだ奥さんにそっくりだった

早速そのロボットを購入し家に連れて帰った

彼とそのロボットくに子はお互いに気が合い新しい生活が始まった

彼とくに子は…
しばらくは仲良く暮らしていた 彼の仕事もいまくいき始めた

彼はなるべく早く帰り
くに子を可愛がっていた

しかし段々と元の接待で遅くなる日々が始まった

くに子は毎晩食事を用意して彼を寂しく待った

夜遅く帰宅した彼に
くに子は「寂しいの…」と伝えた

彼は…
「うるさい!家庭を守るために仕事をしてるんだ!文句言うな!」

怒鳴った途端 くに子が動かなくなった

びっくりした彼は
「奥さん屋」にくに子を連れていく

くに子をみた店主は
「これは電池切れですね」

「じゃぁ 電池を下さい!」

「いえ 旦那さん あなたがずっと見てあげればいいんです ずっとね」

そう言われ 彼はくに子を自宅に連れ帰り ずっと見つめ続けた

くる日もくる日も彼はくに子を見つめ続けた

やがて 会社をクビになり髪や髭が伸び…

それでもくに子を見つめ続けた

半年後…

彼の問いかけにくに子が反応した

そう…彼の思いが通じたのだ

しかしくに子はこう言った
「あなたはずっと私を見つめ続けてくれた」

「この半年間 私は本当に幸せだった」

「あなたはもう大丈夫よ」

そう言い残して
くに子は日だまりの庭からふっと消えた…

そこで彼は目をさます

そう全ては夢だった

あるはずの『奥さん屋』もなかった

彼は…夢に出てきたのは奥さんだと確信した

そして晴々とした気分になり 街へ戻った



「世にも奇妙な物語」
より