彼女選び | 未来色スケッチ

彼女選び

僕はずっと探していた。
僕の身の丈に会う、彼女を。

100%納得のいく相手と出会えないことなんてはじめからわかっている。
妥協できるところは妥協するし、無理強いをしようとも思わない。
出会いと別れを繰り返しながら、幾度となく自分に訊ね続けた。

「本当にこれでいいのか?」

本当に心から好きになれる相手だったら、僕はきっと彼女を受け入れられる。
でも、果たして君は僕を受け入れてくれるだろうか?

一方通行な上に思いがすれ違ってばかりでは歯がゆくてたまらない。
そうじゃない、僕は一生添い遂げられる相手を探しているのだ。

彼女は僕の目から見れば、決して目立つ存在ではなかった。
先入観というものが邪魔をしていたのかもしれない。
話をしようともせず、はなから目をそらしてしまっていたのだ。
僕としたことが、なんという無礼か。

紹介されても、彼女は胸を張るどころか、恥ずかしそうに下を向いていた。

「私ではだめでしょうか…」

声は聞こえない。でも、そう言っている気がした。

はじめて触れた彼女は、とてもやわらかな肌触りだった。
触れ合った背中はとても小さいけれど、相性は悪くない。

はっきり言って、見た目はあまり好みではなかったけれど、
見た目で判断してはいけないというのは
ここ数年いろいろなことを経験した上で学習していることだ。

一度別れを告げて、部屋に帰ってから考え直す。

彼女なら、僕の心を満たしてくれるのではないか。
他の子たちと並べてみても、これといって突き抜けた要素は見当たらない。
僕にとっては、どちらかというと地味な存在だったのかもしれない。
けれど、なんとなく、「付き合ってみてもいいかもしれない」と思ったのだ。

僕は贅沢だから、条件が多い。
長く付き合うためには妥協したくない、それは当然のことだと思う。
でも、そのせいで、選択肢はおのずと限られてくることもわかっていた。

翌々日、また彼女に会いに行った。
華やかな世界で、彼女は相変わらず隅っこの方に小さく佇んでいた。
多くの人が目の前を素通りしていくけれど、
僕がはじめて見た時とは違う、輝きのようなものを見た気がした。

もう一度触れてみる。いろんな角度からじっくりと見つめてみて、
これなら付き合っていっても悪くないかな、と思えた。
僕の身の丈にもちょうどいいような気がする。

「一緒に行くか?」

僕がそう訊ねると、彼女が小さく頷いたような気がした。
その小さな手を握って、心を決めた。

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