末広栄二・著「ツイッター部長のおそれいりこだし―お客様と築く140文字のコミュニティ 」 | 未来色スケッチ

末広栄二・著「ツイッター部長のおそれいりこだし―お客様と築く140文字のコミュニティ 」

AMN 経由で「ツイッター部長のおそれいりこだし
―お客様と築く140文字のコミュニティ」をいただきました。

未来色スケッチ-2010110614480000.jpg

すでに読まれている方も多いというので、
いまさら?という感じがしなくもないですが、
個人的にはとても良いタイミングで手にすることができたので、
ありがたーく読ませていただきました。

テーブルマーク(旧カトキチ)のアカウント は話題になり始めて
すぐフォローさせていただいたので、フォロワーとの関わり方や
対応の絶妙さはよく知っているつもりでした。
ただ、話題に火がついた頃からその後の動向を追わなくなり、
(行く末がどうでもよくなったのではなく、単なる天邪鬼です!)
この本を読んで改めて知ったこともありました。

個人的にポイントかな、と思ったところをまとめておきます。

*しばらくは試行錯誤という名の自主トレが必要
企業アカウントの成功例として必ずといっていいほど取り上げられる
テーブルマークですが、アカウント運営担当の末広部長も、
最初は新しいサービスへの参入ということで
しばらくは自主トレを積んだとのこと。
今は企業アカウントを始めるにあたって、すでに話題になっている
企業アカウントを参考にするというのも可能な状態ですが。
末広部長が始めた頃は国内での成功例もわずかだったでしょうし、
今こうして(成功しているかスベっているかは別として)
企業アカウントを運営する会社が増えたのも、
末広部長の自主トレあってのことかもしれません。(言いすぎ?)

*コミュニケーションを築くヒントは経歴にあり
私が驚いたのは、末広部長の経歴。
牛角で接客業のマネジメントをしていたという話は知っていましたが、
映像会社にいたり、果てはシャトレーゼにもいたり…
いろんな業界で仕事をしたからこそ、現場で何をしなければいけないか
というのを的確にとらえることができていたのでは、と思います。
大企業だと特にそうかもしれませんが、トップは現場の状況をわかっていなくて
どこぞの湾岸署状態?なんてことも多いと思います。
現場の状況を理解しているからこそ、実際に現場に出向いたり
直接お客さんと会話をしたり、Twitterを広告宣伝ではなく
「お客様とのコミュニケーションツール」であることに重点を置いて
活用できたのかなぁと思いました。

*できるだけ「同じ目線」にして、顧客との垣根を低くする
企業から顧客に対しての上から目線は企業イメージを損ねるため、
絶対に避けたいものですよね。
テーブルマークのアカウントでつぶやかれる内容は
だじゃれがふんだんに使われていて、
それに反応するフォロワーの発言にもだじゃれが多くみられます。
こういうやり取りをながめている他のフォロワーは
きっと「親しみ」を感じるでしょうし、自分も中の人(担当者)と話がしてみたい、
と思ってリプライを飛ばすかもしれません。

そういえば、昔は企業の人にお客の声を届けるといえば、
ホームページのメールフォームから連絡するか、お客様相談室に電話するか、
くらいしかなかったような気がします。それってけっこう面倒くさいし…
と思って企業に連絡するのやめちゃう、なんてこともあったかも。
企業アカウントがあればすぐに声を届けることができますし、
メールや電話よりも気軽に連絡できますよね。
そういう意味では、Twitterでのコミュニケーションは
顧客と企業との垣根を低くしてくれるツールともいえるんじゃないかと思います。

*いかに短い言葉の中に思いを込めて伝えるか
テーブルマークのアカウントを見ていると次々に飛び出すだじゃれ挨拶。
タイトルにもなっている「おそれいりこだし」のほかに
、お礼には「ありがとうございますうどん」や「ありカトキチ」、
謝罪には「ご麺なさい」、他社製品には「麺類皆兄弟」。
Twitterでは140文字までしか入力できない上、リツイートするとなると
いかに短い言葉で返信するかというのが重要になってきます。
短い返信の中で真摯な対応と親しみを持たせる、という末広部長のセンスは
本当にすごい。だじゃれというのは社風的にちょっと…というところも
多いと思いますが、この独特のやりとりこそが
テーブルマークに対する親しみにつながっているのはお見事です。
フォロワーとゆるいやり取りをする「軟式アカウント」の中でも、
テーブルマークの顧客対応が一味違う気がするのは、
末広部長のカラーがうまく出ているからかなぁという気がします。

*突飛な行動力と権限
末広部長には「部長」という権限があります。
会社の承認作業もすっ飛ばして独断で始めた、というのも、
その権限があってこそできることであって、
社員なら誰でも始められる、というものではありません。
どこの会社でも、Twitter担当には発言権限というものがついてまわります。
担当者が元々それなりの権限があるならともかく、
そうではない一般社員が担当するのであれば、どうしても
会社の承認なしで進めることは難しいと思います。
アルバイト発信で企業アカウントを持ったすき屋みたいな例はごく稀です。
常に斜め上だったりフライングぎみだったり、という人は
(特に)古い会社ではあまり歓迎されないことが多いのですが、
自ら出る杭になるっていうのも悪くないかもしれません。

*Twitterで大量のフォロワーを獲得しても満足しない
フォロワーを獲得するのが重要ではなく、その後どういうアクションを起こすか、
というところが重要なようです。まあ当然といえば当然ですが、
商品を話題にして売上を伸ばすことに固執しないようにする。
古い会社だと、会社の上層部は効果測定の時にどうしても
「数字」を見る傾向が強いと思います。うちの会社もそうです。
もちろん目に見える数値での結果も必要だとは思いますが、
それ以上に「顧客とのコミュニケーション度」をいかに会社に評価してもらうか、
そのためにどんなアクションを起こすべきか、という点では参考になると思います。
Twitter上でのプレゼントキャンペーン、Ustream中継、ラジオ等メディアへの出演、
アプリ「ふるカトキチ」のリリースなど、今もなお積極的に新しいアプローチに挑戦中。
次は何を仕掛けてくるんだろう?と今後がとっても楽しみです。

という感じでしょうか。
この本を読んで「うちの会社もやろう」と言い出す社長がいたりするのかも
しれませんが、テーブルマークの成功例はあくまでも一例にすぎず、
他企業で使い回せるようなテクニックが載っているわけではありません。
真似事のつもりで企業アカウントを運営すれば痛い目にあうのは明白だし、
いろんな事例を見ながら、自社にあったルールを作らなければいけないわけです。
そのルールを作るのは担当者を中心に、上層部、関連部署、システム担当、と
横の連携も必要になります。
きちっとしたガイドラインを作って企業アカウントを運営している会社は少ない、
という調査結果がどこかに出ていましたが、怖くないんですかね…。
ガイドラインも作らずに始めるほうがよっぽどリスク高いと思うんだけど。

私もいろいろあって会社のWEB周りをほんのり担当(なんだそれ…)し、
ソーシャルメディアのことも勉強しておかないといけない状況になってしまいました。
広報でもシス担でもマーケ担当でもない私に何ができるのか、
どこまで会社の了承を得てアクションを起こせるのか…。
何よりも、末広部長のように楽しみながらファンを得ることができるように、
地道にがんばりたいなーと思います。

私は一般社員ではありますが、問題を起こしてしまった時は
辞表を出す!くらいの覚悟は決めていますよ。
担当者にはそのくらいの覚悟と責任を持つ必要があるはずですから。

個人的には、過去に別の会社で学んだ経験が
今の仕事に生かされるまでの経緯に非常に興味を持ちました。
もっと掘り下げた話がほしかったなー。
転職ばかり続ける人はあまり歓迎されないし、
今でも一つの職場で長く働くことが良しとされるのかもしれないけど、
個人的な意見を言わせてもらえば、
いろんな会社でいろんな業務を経験したほうがいい気がする。
あらゆる視点からものを見られる目を養うことって、すごく大切ですよね…。

ペタしてね