ホープレスの歯に立ち向かう

日々臨床をおこなっていて、患者さんの主訴として「違和感がある」程度の歯でも、実際に診査をおこなってみると深い歯周ポケットが存在し、レントゲンでは歯根を大きく取り囲む透過像があり、動揺もあり、保存に悩む、こんな経験は無いだろうか。

エンドの問題と、ペリオの問題を持つ、いわゆる混合型の抜歯基準について少し考えたい。

これは、抜歯か保存かを考察しているある文献からのチャートである。

病変を有する歯を診断する時に、正確な診査診と患者さん側の問題としても、経済的な理由や患者の意思、コンプライアンスといった様々な複合的な要因が抜歯の基準に影響を及ぼすことがわかる。

その上で治療計画に則って歯内治療、歯周治療を行っていく。

原因は治療の結果よりわかることも少なくなく、時にはブラックボックスに手を入れながらの感覚で治療をおこなう、と感じることもある。

よって、私たち一般歯科医にとってはエンドペリオ病変とは次のように言い換えることができるのではないだろうか。

「エンドやペリオの問題からX線的に大きな透過像を有し、ときには深い歯周ポケットや動揺を認め、治療計画に迷うが、患者さんにはそれほど症状がなく、時には患者さんが保存を希望する病変。」予後判断において抜歯となってしまう歯でも、実際の臨床においては保存に努めることになることが出てくることもこの病変の治療に取り組む難しさでもあると感じる。

『歯周病が進行したその歯 歯周組織再生療法で救えるかも。』

歯周病が進行すると、あごの骨をはじめ、歯のまわりの組織が失われます。

そうなると歯を支える組織が減ってしまうため、歯の寿命にも影響が及びます。

そんなときに歯を救う助けとなり得るのが「歯周組織再生療法」(以下、再生療法)という治療法です。

●再生させるのは骨だけじゃない。

歯を支えているのはあごの骨だけではありません。

歯の根の表面にある「セメント質」や、セメント質とあごの骨のあいだにある「歯根膜」が、歯と骨を結びつけているのです。

再生療法はこれらの組織を再生させることを目的とします。

再生療法では、歯の根のまわりの組織が失われた部分に特殊な再生材料を入れるなどして再生を促します。

歯ぐきを切り開いて歯の根を露出させ、プラークや歯石を除去してから、再生材料を充填。それから歯ぐきを元通りの位置に戻して縫合します。

歯の根のまわりにはほどなく血餅ができますが、この血餅がとても重要で、これが歯を支える組織――歯根膜やセメント質、あごの骨に変化していくのです。

●治療の手法はいろいろあります。

再生療法には、「エムドゲインゲル」や「リグロス」といったジェル状の材料のほか、お口の中のほかの場所から採取した骨、人工の骨補填材(ウシやブタなどに由来)、薄い膜状の材料などが用いられます。

とはいえ、再生療法はどんな状態の欠損でも再生できるわけではなく、欠損の範囲が広いと十分に再生できないこともあります。

そのようなときは、上記の手法を組み合わせるなどして治療を行います。

●治療の後、特にこれには気をつけて!

再生治療を行った後は、約2週間後に縫合したところを抜糸し、経過観察を続けて8~9か月後に組織の再生を確認します。

抜糸までは、治療した歯では噛まないように。

また、歯ブラシを当てるのもNGです。

治療した歯とそのまわりは、殺菌作用のある洗口液でケアしましょう。

歯みがきができないぶん歯科でクリーニングをしますので、週2は必ずご来院ください。抜糸後は、毛先のやわらかい歯ブラシで歯みがきを再開します。

その後は1週間に1回、数週間に1回と来院していただく間隔を伸ばしながら、治療したところのチェックとクリーニングを繰り返します。

8~9か月たって、無事歯を支える組織の再生が確認できたら、治療を行った歯を長くもたせるために、その後も歯科のメンテナンスに通ってくださいね。