『忘れてまいせんか?インプラントのメンテナンス』

インプラント治療を受けたあなた。その後も歯科へ定期受診を続けていらっしゃいますか。

歯科ではインプラント治療を行う際に、治療後もメンテナンス(定期受診)に欠かさず通っていただくようご説明しています。

ですが、何年か経つうちに、「痛みがないから」「違和感がないから」とだんだんと足が向かなくなってしまう方も少なくないのです。

●インプラントも“歯周病”になる!

インプラントは、噛むところから歯の根に当たる部分まで、完全なる人工物。

ですのでインプラント自体は細菌に強いです。

しかし、インプラントが埋まっているまわりの歯ぐきは別で、天然歯と同じように、歯周病になるおそれがあります。

歯周病は、歯の根元まわりに付着した細菌が、まず歯ぐきを炎症させて腫れや出血を起こします。いわゆる「歯肉炎」です。

これが悪化すると、あごの骨が溶けてなくなっていく「歯周炎」=歯周病となります。

インプラントの歯周病も、進行のしかたは似ています。

インプラントに付着したプラークがまわりの歯ぐきを炎症させて、腫れや出血を起こします。(「インプラント周囲粘膜炎」といいます)。

これが悪化すると、あごの骨にも炎症が及ぶインプラントの歯周病=「インプラント周囲炎」となります。周囲炎が進むと骨が失われていき、やがてはインプラントが抜けてしまいます。

●メンテナンスに来ていただきたいわけ。

メンテナンスでは、インプラントと、そのまわりの歯ぐきやあごの骨の状態を複数の検査で調べます。周囲炎や、その前段階の周囲粘膜炎になっていることがわかったら、まずは患者さんにセルフケアを見直していただきます。

ケアのしかたがそのままでは、治療しても細菌は減らず、炎症も引きません。改善されたら、歯ブラシなどでは届かない、歯ぐきの中のプラークや歯石を専門の器具で除去します。

周囲粘膜炎の段階で発見できれば元に戻せますし、周囲炎になっていても、あごの骨のダメージが少ない状態ほどインプラントを失わずにすむ可能性が高まります。

歯周病と同じで、痛みや違和感を覚えてからでは進行していることが多いです。

また、歯ぎしりや食いしばりといった、無症状に生じる継続的な強い力により、あごの骨がダメージを受けていることもあります。

歯科では、噛み合わせや、上下の歯やインプラントの状態を調べることで、絶えずそうした兆候に目を光らせています。

ですから、欠かさずメンテナンスに来院していただきたいんですね。

ホープレスの歯に立ち向かう

日々臨床をおこなっていて、患者さんの主訴として「違和感がある」程度の歯でも、実際に診査をおこなってみると深い歯周ポケットが存在し、レントゲンでは歯根を大きく取り囲む透過像があり、動揺もあり、保存に悩む、こんな経験は無いだろうか。

エンドの問題と、ペリオの問題を持つ、いわゆる混合型の抜歯基準について少し考えます。

これは、抜歯か保存かを考察しているある文献からのチャートである。

病変を有する歯を診断する時に、正確な診査診と患者さん側の問題としても、経済的な理由や患者の意思、コンプライアンスといった様々な複合的な要因が抜歯の基準に影響を及ぼすことがわかる。

その上で治療計画に則って歯内治療、歯周治療を行っていく。

原因は治療の結果よりわかることも少なくなく、時にはブラックボックスに手を入れながらの感覚で治療をおこなう、と感じることもある。

よって、私たち一般歯科医にとってはエンドペリオ病変とは次のように言い換えることができるのではないだろうか。

「エンドやペリオの問題からX線的に大きな透過像を有し、ときには深い歯周ポケットや動揺を認め、治療計画に迷うが、患者さんにはそれほど症状がなく、時には患者さんが保存を希望する病変。」

予後判断において抜歯となってしまう歯でも、実際の臨床においては保存に努めることになることが出てくることもこの病変の治療に取り組む難しさでもあると感じる。

『歯周病が進行したその歯 歯周組織再生療法で救えるかも。』

歯周病が進行すると、あごの骨をはじめ、歯のまわりの組織が失われます。

そうなると歯を支える組織が減ってしまうため、歯の寿命にも影響が及びます。

そんなときに歯を救う助けとなり得るのが「歯周組織再生療法」(以下、再生療法)という治療法です。

●再生させるのは骨だけじゃない。

歯を支えているのはあごの骨だけではありません。

歯の根の表面にある「セメント質」や、セメント質とあごの骨のあいだにある「歯根膜」が、歯と骨を結びつけているのです。

再生療法はこれらの組織を再生させることを目的とします。

再生療法では、歯の根のまわりの組織が失われた部分に特殊な再生材料を入れるなどして再生を促します。

はぐきを切り開いて歯の根を露出させ、プラークや歯石を除去してから、再生材料を充填。

それから歯ぐきを元通りの位置に戻して縫合します。

歯の根のまわりにはほどなく血餅ができますが、この血餅がとても重要で、これが歯を支える組織――歯根膜やセメント質、あごの骨に変化していくのです。

●治療の手法はいろいろあります。

再生療法には、「エムドゲインゲル」や「リグロス」といったジェル状の材料のほか、お口の中のほかの場所から採取した骨、人工の骨補填材(ウシやブタなどに由来)、薄い膜状の材料などが用いられます。

とはいえ、再生療法はどんな状態の欠損でも再生できるわけではなく、欠損の範囲が広いと十分に再生できないこともあります。

そのようなときは、上記の手法を組み合わせるなどして治療を行います。

●治療の後、特にこれには気をつけて!

再生治療を行った後は、約2週間後に縫合したところを抜糸し、経過観察を続けて8~9か月後に組織の再生を確認します。

抜糸までは、治療した歯では噛まないように。

また、歯ブラシを当てるのもNGです。治療した歯とそのまわりは、殺菌作用のある洗口液でケアしましょう。

歯みがきができないぶん歯科でクリーニングをしますので、週2は必ずご来院ください。

抜糸後は、毛先のやわらかい歯ブラシで歯みがきを再開します。

その後は1週間に1回、数週間に1回と来院していただく間隔を伸ばしながら、治療したところのチェックとクリーニングを繰り返します。

8~9か月たって、無事歯を支える組織の再生が確認できたら、治療を行った歯を長くもたせるために、その後も歯科のメンテナンスに通ってくださいね。