近年、歯科受診によって咀嚼能力をはじめとした口腔機能の低下に早期に気づくことが重要だと考えられている。

加齢に伴い歯数が減少し、咀嚼能力が低下することで、栄養摂取に悪影響を及ぼし、最終的にメタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患の発症へと繋がることがこれまでの研究で示唆されている一方、歯科定期受診と咀嚼能力との関係についてはほとんど報告がなく、そのエビデンスが求められていた。

国立循環器病研究センター予防検診部の宮本恵宏部長、新潟大学大学院歯学総合研究科の小野高裕教授、大阪大学大学院歯学研究科の池邊一典教授らの共同研究チームは、無作為抽出した都市部一般住民である吹田研究の参加者を対象に解析。

その結果、持続的な歯科定期受診のある対象者は咀嚼能力が低下しにくいことが明らかとなった。

これまで多く報告されてきた、歯の数や噛み合わせの状態などの形態的な因子だけではなく、歯科定期受診という行動科学的因子が咀嚼機能に影響を及ぼしているということだ。

研究グループによると、歯科治療による対応だけでなく、口腔健康への関心を向上させるポピュレーションアプローチが口腔機能低下を予防し、ひいては、動脈硬化性疾患やフレイル予防の新たな戦略になるとのこと。

そのためには、医科歯科連携のもと、さらなるエビデンスを構築していくことが今後の課題となるだろう。