装着したワイヤーが目立ってしまうブラケット矯正に比べ、目立ちにくい透明な樹脂製のマウスピースを使用するマウスピース矯正が人気を集めている。

そんな中、日本矯正歯科学会がホームページ上で、「歯科医師が介在しない形でマウスピース型商品が販売され、歯列の改善への有効性を謳うケースが出てきている。

矯正歯科治療は、正確な診断や精密な治療計画に立脚して行われるべき医療行為であり、誤ったマウスピース型製品の使用は予期せぬ大きな問題を引き起こす可能性がある」との見解を発表。

患者自身の独自の判断でこれらの製品を使用し歯の移動を行うことは、歯科医学的にも非常に危険と警鐘を鳴らしている。

マウスピース型矯正装置による治療にはメリットもあるがデメリットもあり、その欠点を踏まえた適応症の判断や専門知識が必要とされる。

大学病院等や学会が認める基本研修機関において、矯正歯科領域全般にわたる基本的な教育と臨床的なトレーニングを受けた歯科医師による診察、検査、診断を基に治療を行うことを推奨している。

歯科矯正治療は本来、歯科医師が使用の適否の判断や不測の事態への対処、治療結果についての責任を負うもの。

その重要性と自己判断に伴うリスクを国民に知ってもらうことが大切だろう。

利点

・他人から見えにくい装置である

・装置の着脱が簡単で食事や歯磨きがしやすい

・金属アレルギーを有する人も使用できる

・治療室での治療時間が比較的短い

欠点

・歯の移動量の少ない症例に限られる。(軽度の乱杭歯、軽度の歯の隙間、矯正治療後の後戻り等)

・毎日長時間の装着を必要とし、使用状況によって効果が大きく異なる

・小児や骨格性要因を含む症例には適さない

・現在の医療水準で考えれば精密な歯の移動は原則として困難で、満足のいく治療結果が得られない可能性がある