口腔内細菌は、好気・中性pH環境でアルコールから発がん性物質を量産。

近年、口腔内細菌がアルコールやグルコースを代謝して産出されたアセトアルデヒドが口腔がん発生のリスク因子となっている可能性が示唆されている。

しかし、それらアセトアルデヒド産出に関わる詳細な代謝構造や、その産出に対する口腔環境因子による影響は明らかになっていなかった。

そんな中、東北大学大学院歯学研究科口腔生化学分野の高橋信博教授らの研究グループが、口腔内細菌によるアセトアルデヒド産出に関連する代謝機構、さらに口腔環境因子がその産出に及ぼす影響を明らかにしたと発表。

研究グループは口腔内環境を想定した各種条件下(酸素濃度、pH、基質)で、アセトアルデヒド産出量がどのように変化するのかを、3種の口腔レンサ球菌と2種の口腔ナイセリアを用いて検討したという。

その結果、エタノールを基質としたアセトアルデヒド産出は、実験に用いた全菌種において確認され、その産出量は一部を除いきpH8.0で多く、pHの低下とともに減少する傾向がみられた。

また、嫌気条件と比べ好気条件でその産出量が大きく増加。

さらに、全菌種においてアルコール脱水素酵素とNADHオキシターゼの活性が確認させた。一方、グルコースを基質としたアセトアルデヒド産出は口腔レンサ球菌属からのみ確認され、その産出量はエタノール基質時の産出量と比べ10分の1ほどと少なかった。

この結果から、研究グループはたとえ健康的な口腔環境であっても、口腔常在菌が飲酒由来アルコールからアセトアルデヒドを産出し、口腔がんのリスクを高める可能性を示唆。さらに、口腔清掃不良とアルコール多飲はこれを増強するとしている。