文部科学省はこのほど「平成30年度学校保健統計調査」の結果速報を発表した。

このうち健康状態調査では、中学校および高等学校のう歯の罹患率は過去最低となった。

幼稚園、小学校についても戦後の混乱期の1949年、1951年を除けば、やはり過去最低を更新した。

 この調査は、児童、生徒の発育および健康状態を明らかにする目的で1948年から毎年行われている。

幼稚園から高等学校までの児童、生徒を対象にした抽出調査で、学校保健安全法によって実施される健康診断の結果を集計している。

発育状態調査では、身長の平均値は1994年頃まで毎年伸びた後、2001年頃からは男女ともに横ばいとなっている。

重も1998~2006年頃をピークに男女ともに微減ないし横ばいとなっている。

 健康状態調査では、裸眼視力や眼疾患、皮膚疾患、四肢の疾患、心臓疾患、喘息などとともに、歯・口腔についての状態を調査している。

 裸眼視力が1.0未満の者は、小学校(34.10%)と高等学校(67.09%)で過去最高となり、中学校(56.04%)も過去最高となった2017年とほぼ同じ高い割合だった。

 一方、う歯を有する者の割合は中学校35.41%、高等学校45.36%と、調査を始めて以来の最低を更新した。

う歯の罹患率は、昭和40~50(1965~1975)年頃がピークで、90%代で推移していたものの、以後減少に転じて減少を続けてきた。また昭和40年代後半(1970年頃)のピーク時には70~90%あった未処置歯のある者の割合は、2018年の調査では、幼稚園21.50%、小学校22.23%、中学校15.01%、高等学校18.25%となり、いずれも過去最低となった。

「12歳未満の永久歯の一人当たり平均むし歯(う歯)等数」は0.74本となり、これも過去最低を更新した。

 う歯の罹患率がピークだった頃は、まだ少子化が問題になる以前で、昭和50(1975)年の年少人口(0~14歳)は2.722万人だった。それに対して2018年8月時点での年少人口は1,559万人で、半数近くに減少している。人口が半減し、かつ罹患率が半減以下になったということは、15歳未満のう歯患者はピーク時に比べて4分の1以下に減少している計算になる。未処置歯を持つ者はそれ以上に激減していつということだ。

 先に発表された2018年人口動態統計の年間推計によると、出生数は約92万1,000人で、これまでの最低だった2017年確定出生数から2万5,000人ほど減って過去最低を更新した。

自然増減数も同5万4,000人増の44万8,000人で過去最大の減少となった。日本の若年人口の減少、そして総人口の減少は止まらない。

 病院団体などの推計では、高度急性期医療を担う中核基幹病院は30~40万人の診療圏をカバーし、中小の地域密着型病院は3~4万人程度の日常生活圏に1施設が必要だとして、2035年頃の人口を勘案すると、高度急性期病院は全国で300~400施設、地域密着型病院は約4,000施設ほどが必要となってくるという。

これに対して、現在、日本の病院総数は約8,400施設ある。人口減社会における医療提供のあり方についての議論は進み始めたものの、人口減がさらに加速する2035年以降、日本の医療をどう確保し、提供していくのか、まだ明確な道筋は見えていない。

 学校保健統計調査の結果にみるう歯の罹患率のさらなる減少は、口腔衛生、予防歯科の長年の努力の成果として高く評価されるべきだが、同時に、患者減、人口減に対する歯科医療のあり方に課題を提起するものであり、その対策は急を要していることを警告している。

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