【1日】

・ベッドの前で 転倒したまま起きれず一夜を明かし ようやくベッドに移ると ホッとしてぐっすり眠てしまった 神か仏でも見るような目で見られること まずは自力での食と排斥方法の確保 今宵より二日間は泊まり /どこに行くでもなく切符だけ買って帰ってくる男 今や機会の失われた かつての日常の行為 仕草が 残っている 意味もなく反復される そこに人の経験の蓄積が透けて見え その反復を認めることが人権でもあるのだろうか

 

 かつて自らのプライベートすらあけすけに開け放ち 可能なかぎり様々な場に出向き 円環を拡張しながら 僅かでも引っ掛かれば なかば強引にでも巻き込み 取り込んもうとする その暴力性と共にしか生きては来れなかった 孤独の哀しさと 優しさへの希求 /彼にとって信頼とは そのまま生存に関わる

 すべてを曝け出し 明け渡せるかどうか 信頼できずとも預けねばならない そこにどのように応えてくれるか 様々なものが見える /とはいえ今や 安定した円環が崩れぬよう なるべく波風立てず外にも出向かない 想像力も閉じ 行動は奪われている 権利を奪われる まさに生かされる暴力

 呼吸場をつくるため 外部に開くためにどうするか どのように関与できるか インタヴュー・シリーズと それに伴う身体と呼吸のレッスン /生存の舞踏へと誘うこと 固有のあなたを匿名のあなたへ(ただ 名もなき いのちの姿へ) 匿名のあなたを固有のあなたへ(いのちの紛れもない唯一性へ) エロス的身体

 

からみあい

 

【2日】

 エレガントに 反時代的に 苛立だんばかりに挑発的かつ退廃的に 溢れんばかりのエロスと共にあれ 下駄が割れたので まずは新調せよ

 

 足から 腰から 呼吸と共にすべて突き抜けてゆく 吹き上がってゆく 流れだしてゆく 飛沫とともに こうでしかありえないという流れを掴むこと /安定と不安定 均衡と不均衡を 自在に操ること 生きていること自体 そもそも不安定かつ不均衡なのだ それを偶然性と有限性と共に逆手に取ること

 

【3日】

・めしを食いすぎると 何もする気が起きなくなる その分 否が応でも激しく動く用でもなければ 一日が台無しになる /ロックンロールの制服は革ジャンかモッズスーツ /恋人はロックンロールの様式美は好きだが 音楽は嫌いと言った

 

【4日】

・なにもしない ということは なんてエレガントなんだろう /冷蔵庫から ロックンロールみたいな音がする かっこいい /ある時期のマイルスはロック ウェインもチックもトニーも攻めまくってて超ロック 楽曲の連なりの中で ある圧倒的な世界像を描き出そうとしている 混沌と統制

 

 昔の人と会う 何時間も過ごすうち 脳の回路がグニャリと変化する ある種のトランス状態に近い 帰りの電車で回路を現在のデフォルトに戻す 夕暮れの海よ 谷里の町よサラバ /山間の集落を幾つも抜ける 変性意識 ゆるゆる というより ざわざわとした 整えるためバッハを注入す のち小林ハルさん /妊婦になって 拡散した意識を凝縮させることとなった話を聞く /それにしても受付してた空色ドレスの女性があまりに美しく失神しそうだった 今でも彼女の顔が目の前をチラついてる 彼女は奇跡だ

 都市の中の野生を探すこと 日常のレイヤーを増やすこと 妊婦の強さは 利他の強さ 母より発されるエネルギーの強さ 閉じた単位でやりくりしようとせず 様々な場に逃げ場をつくること 知る機会に自ら出向き 単位/領土を増やすこと 様々な生き方の選択肢を広げておくこと

 

【6日】

 盆栽は 人の予測による調整と それを逸脱しようとする植物の力との いわばサイボーグのような存在とも言えるかもしれぬ 人が統制しているわけでは決してなく むしろ人は驚異的な自然を呼び込む手伝いをしている 長いスパンで付き合う必要があるのはもちろん 世代を跨ぎ 何百年と成長しつづける

 

 雄の出自はエラーだが エラーを戦略的に取り込むのは面白い 戦略的に性転換すること 処女懐胎システムのポテンシャルを持つこと 社会形態を変容させること いい加減さ 曖昧さこそ光

 

 言葉で関係を結ぶのが困難なところで 歌(メロディー)だとスーッと浸透してゆくのは ほんとすごいと思う 知的障害の人とかと接しててもそう思う 意味の一方通行な交通ではないんだないんだ 場の質を共有するってことなんだ

 

【8日】

 イメージせよ 手繰り寄せよ 偶然と有限性を味方につけて 予期しなかった形へと変容せよ 曖昧なままに転がりつづけよ ヴィジョンは力 欲望の強度こそ力 放蕩の限りを尽くせ (〈生〉へのスタンスについて Nへ)

 

 あの頃は どこまでもつづく大地のど真ん中で 神話を生きようとしていた そのためにも言葉と映像は大きな役割を果たしていた (言うまでもなく身体がゆるい媒介者として間にあって) 見慣れたものを還してゆくこと 見慣れた場所で迷子になる才能 /一日中の雨で倫敦のような空気 ファベーラの丘から左に視線を移してゆくと 那智大瀧の谷間よりとぐろを巻いて白龍が昇ってゆく 濡れた稲掛け群の隣で 集合団地の屋上では殺し屋が見え その脇を長い列車が貫いていった 小蜘蛛が引っ掛かった子虫たちを一匹づつ丁寧に平らげている

 折口の田遊び/田楽の話 移動型でいかがわしく芸能化する後者 個と社会を連続させるメディアとしての演劇と宗教以前のイニシエーション或いはサイコロジー シャマニズム-演劇-ファシズムの近さ ワグネルからヒップホップへ (サイコロジーの脱自己啓発/脱ビジネス戦略化) 毒をもって毒を制すこと

 幻と戯れる ゆるゆるに解体してゆく認知症者やホームレス 社会的身体から解体されてゆく 別の歓待への誘い /散文から韻文 あの世の言語 翻訳において母語の構造を組み変えること 移民の語りでしか浮かび上がらない歴史

 

【9日】

 仏に逢っては仏を殺し 親に逢っては親を殺せ 詩人は言葉を窒息させ ダンサーは存在を窒息させよ これは脱近代とは関係ない

 どのような身体を救わねばならぬのか (この身体は紛れもなく「私たち」の身体だ、という声を聞いたことがあった…) 死者たちの 死人称の言葉で話す 悦びは分子状に解体せよ 幻想も現実も分解し 非情な煌めくモノたちの親密圏へ あらゆるものが変容する身体である とはいえ その手前より始まる

 (幼年期断片) あらゆる感覚器を還元させ 生まれてしまった地平にあって 生まれていない地平 生まれていたかもしれない地平との 三重性を生きること それを身体で問うこと 中間地帯であり「器官なき身体」とも無関係にはなりえない

 故郷を葬り去るために旅をした この眼は私だけの眼ではなくなくなっていた あらゆる場所が故郷であり あらゆるモノたちが祖先だった

 悦びよりも先に まっとうに苛立つこと 哀しむこと

 

【11日】

・沈丁花の花は一斉に落ちて 木の下にオレンジの絨毯 生温い芳香の香る空気 /川は一面白濁して荒れていた 川の向こうの山頂は雲に隠れ 下は山並みがクッキリと見える /日曜は反復音楽の高層マンション

 

 きみを幻へと還してゆくことに決めた (さもないと わたしが砕ける) /エアーバック 救出すること もちろんレディオヘッドだ /いつかあるひとに語った (あなたはいつも目の前の人を幻を見ているように見て かつそこにいない人といつも一緒にいる気がする)

 

 自分は何色か? 太陽みたいに燃えるような赤でありたい と彼女は云った ワケありの林檎でもいい 燃えていたい と 闇の縁に疼く 毒虫の叫びとつながるものがあった と云えば失礼だろうか しかしそれは紛れもない いのちの叫びだった 歓喜も悲痛も引き裂く産声そのものだった バタイユの笑いだった

 

 大群衆の中で声を上げても 大勢に紛れて太鼓を鳴らしても 一目置かれた 歳とともに色濃くなってゆく アマチュアであり 飄々と身軽でありつづけながらも いざ闘うときには一級の 知恵と覚悟とともに /思えば 「職人」の道を選ばなかった そこに居つかない 居つけないのだ それを生業とすることへの違和感 先につながる何かが見えなかった 定住できないこととも繋がる気がする /もうひとつ 芸で身を立てることの現実味のなさ あくまでもそれは並行のものと感じているのかもしれない

 

【12日】

(狂気にしか興味無) (いつも そこに内在する狂気を探してる) と 彼は 語った /低い青空を ふぞろいに鳥の群れが飛んでった /都市の狩猟民としてのホームレス

 時に あくまでも「人間」ということに踏みとどまる人のひたむきさに打たれることもある 

 

 誰に対するレクイエムか 死んでった者たち やがて死んでゆく者たち (自らや まだ生まれてくる以前の者をも含めた) 生まれてくることのできなかった者たちへの /この最後の ありえたかもしれない いのちの 姿の可能性 というものが 今朝唐突に より現実味のある切実なものとして聞こえてきた 水子さん

 (あぁ あの子が生きていたならば) 

 

 目では見れないから 呼吸を聴いていました と云われた (Nさん) Yさんは録音をして 仕事中に聴いていたという ありがたい 狂ってる そしてもう一つ 音楽家から視覚を奪い 舞踊家から脚を奪った時のこと 私たちは呼吸で繋がっていった

 

 植木を大幅にカットした一週間前 久々に見ると これまで以上に無尽蔵に 至るところから芽吹いており驚かされる 法外に 短い距離でどんどんと (狂気と強度の違いが分からない) おそらくシステム(戦略)を微妙に変えている そして成長期にはアブラムシもどんどん増殖する そうやってバランスができている

 

【】

 

【】

 

【】

 

【】

 

【】