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【松田】一方でウイルス学からみれば、ヒトはウイルスとの共進化によってここにいるのであって、わたしたちは生命の面からも、DNAという情報の面からも、ウイルスとの共同構築物である。

 

 先ほど藤原さんと藤井さんがお話しくださったことのちょうど中間になるようなゾーンのことを考えてみたいと思います。いまこの瞬間に、地球じゅうの人々が共有している時空、つまり西暦2019年から2020年にCOVID-19と名付けられた「新型」コロナウイルスが一挙に世界に波及したという、最も直近かつ現在進行形の歴史的時空と、ヒトそのものを形成し、ヒトの生命を駆動しきたともいえるウイルスとヒトとの関係という、超歴史的でディープな時空。わたしたちはその両方を自分ごととして同時に考える、という方途から、何か今後の社会への希望は拓けないのでしょうか。
 戦う「相手」がはたしてウイルスそのものなのかどうかも、そのとき明確になるでしょう。ウイルスの極端な活性化は、現代世界システムとの関係においてこそ、きちんと見通すべきです。こうした思考の拡張も、今後の構築様式を考えていくうえで議論のポイントになるのではないかと思います。

 

【平倉】生環境構築史の構想について私はまだ理解しきれていない部分もありますが、「構築4」とは、ヒトが、新しく出会うウイルスをはじめとして必ずしも共存できないものたちとともに、しばしば異種間で混ざり合いながら、この世界の中に棲む場所をどのように構築するか、という話だと捉えています。しかし量としてのヒトが、非ヒトとの調和的な混交にそのまま移行できるわけではない。個々の人間にとって、異種との混ざり合いはつねに破壊的でありうる。今回の状況を見ていると、私たちはまだ「構築3」的な、美しいとはとうてい言い難い方法を用いながら生き延びていかなければならないのかもしれない、と感じました。